イタリア・ベネト州で開催のグラベル世界選手権、編集長がウィリエールで走ってみた
山口
- 2024年04月25日
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自転車トラック競技やロード競技と同じように、砂利道を走るグラベルにも世界選手権がある。アメリカ発のグラベルレースだが、現在ではヨーロッパでも人気を博し、シクロクロスが盛んなベルギーやオランダ、そしてイタリアでもベネト地方で盛んになっている。ここではグラベル文化の根付いたベネト州でおこなわれたグラベル世界選手権に出場したバイシクルクラブ編集長山口が現地の模様をお届けする。
グラベル世界選手権ってなんだ? 日本代表として派遣
グラベル世界選手権は、UCI(国際自転車連合)が主催する世界チャンピオンを決めるレースで、UCIグラベルワールドシリーズに出場し、各カテゴリーの上位25% が出場できる。いわば、グランフォンドの世界選手権のグラベル版といえる。
さらにこれとは別に各国ではグラベルのナショナル選手権も開催され、ナショナルチャンピオンを決めるようになってきている。残念ながら日本ではまだ開催されていないが、世界的にUCIが主導するグラベルレー スが主流になってきている。アメリカで開催されるアンバウンドグラベルなどはこのUCIレースとは違う。
2023年、日本ではナショナル選手権がないので、今回日本代表としてエリート選手の派遣はなかった。ただ、(JCF)日本自転車競技連盟が年代別カテゴリーへワイルドカードを使い選手を派遣することになり、そのワイルドカード枠を使い編集長山口が年代別カテゴリー(45‐49歳)に参戦することになった。
今回JCFがワイルドカード枠を使って年代別、要はアマチュアを派遣した意味は大きく、今後はエリート、年代別を問わず国内でのグラベルレースに取り組む一歩といえる。
年代別カテゴリーではナショナルジャージ、それに準ずるウェア着用が求められる。アマチュアとはいえ、日本代表として走れることは光栄なことだ。
急きょ決まった世界選手権、ウィリエール・レイブSLRに乗るチャンス
ツール・ド・おきなわをはじめ、グランフォンド世界選手権では銀メダルを獲得している高岡亮寛さんから「世界選手権に出ませんか?」 と連絡があったのは9月中旬。急きょJCFに自己推薦状を提出し、日本代表チームとして走らせていただくことになった。そこから10月7-8日に開催される大会へ向けて急ピッチに準備ははじまった。
アンバウンドグラベル100の体験こそしている山口だが、今回は世界選手権だ。「163kmとはいえ5時間かかるので、ツール・ド・おきなわの 210kmと同じです」と高岡さんに言われ、その厳しさを知る。
さてここで問題が……バイクがないのだ。通常国内のグラベルであれば、33mm幅タイヤのシクロクロスでも楽しめるが、高速化するレースでは38mm幅以上がスタンダードになっている。そこで、ベネト地方を代表するウィリエール・トリエスティーナのレイブSLRを服部産業からお借りすることにした。
レイブSLRといえば2022年のアンバウンドグラベルではイヴァル・スリックが勝利しているほか、ベネト州で開催されるグラベルレース、セレニッシマ・グラベルで2021年にアレクセイ・ルツェンコが優勝するなど、ゆかりのあるブランド。
あとで現地に行って改めてわかることだが、ベネト州にはグラベルで遊ぶ環境が整っており、ウィリエール・トリエスティーナのほかにもカンパニョーロをはじめピナレロ、バッソといったブランドの拠点もあることから自転車の盛んなエリアでもある。こうしたグラベル文化が広まるのは当然ともいえるのかもしれない。
163kmとはいえ、ツール・ド・おきなわと同じくトップ選手でも5時間
レイブ SLR
フレームセット:781,000円(税込) SHIMANO DURA-ACE DISC Di2 仕様完成車:1,276,000円(税込)/ SHIMANO ULTEGRA DISC Di2 仕様完成車:1,094,500円(税込)/ SHIMANO 105 DISC Di2 仕様完成車:990,000円(税込) 問:服部産業
ジロ・デ・イタリアにも登場する、ムロ・ディ・カ・デル・ポッジョなども走る丘陵地帯を走るだけに軽さは命。フレーム950g、フォーク400gとグラベルバイクのなかでも軽いレイブSLRだが、さらに軽さを求めてホイールにはシマノ・GRXを採用、タイヤはグラベルキングSK(700×38C)にマクハル処理をした。
兄弟モデルレイブSLの試乗レビュー
ウィリエール地元ブランドならではの強み
イタリアへは飛行機でベネチアマルコポーロ空港へ旅立ったが、その際バイクを運ぶにあたり、フォークからハンドルを抜いて輪行袋(オーストリッチ・OS500)に収納した。ところが、作業をしている最中にヘッドパーツのスペーサーを紛失するというミスを犯してしまった。
今回のフィニッシュ地点、大会受付本部があるピエーヴェ・ディ・ソリーゴにはウィリエール専門店PUNTO ROSSOのチクロメカニコがあり、ここで事情を説明するとスペーサーを譲ってもらうことができた。こうしたケアを受けられるのは地元にゆかりのあるブランドの強みと言える。
今回、山口は金曜日、レースの2日前に現地入りしたが、少なくとも3日前がよさそうだ。プロ選手もアマチュア選手も、土・日にレースとなるが、早い選手だと1週間ほど前から現地入りしてコースを試走している。このため、トレーニング中の有名選手と遭遇することもある。特に今回は2022年に比べマウンテンバイク用のコースを取り入れるなど、変化に富んだコースとなっていたため、試走でタイヤのチョイスを変えている選手も多かった。ちなみに今回のトレンドは43Cだった。
- BRAND :
- Bicycle Club
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PROFILE
バイシクルクラブ編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。47歳を迎えた現在ではレースだけではなく、サイクリングを楽しむためために必要な走行環境やサイクルツーリズムなどの環境整備などにも取り組んでいる。