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「がんばろう北陸!つながる富山と石川 復興応援ライド」 自転車が深める北陸の絆

4月21日「富山湾岸サイクリング2024」の関連イベントとして「がんばろう北陸!つながる富山と石川 復興応援ライド」が企画された。これは2024年元日に能登半島地震の影響で多大な被害を受けた北陸地方の復興を支援し、地域コミュニティの絆を深めることを目的としてサイクルツーリズム研究会(野嶋剛代表)が主催したもの。参加者が富山と石川の両県、そして一青妙団長(女優・作家、中能登町親善大使、同研究会メンバー)ほか日本各地からから有志が集まり、被災地を巡りながら互いの励ましと、中能登町へ義援金の贈呈をおこなった。

富山から石川へ県境を越えて被災地を走る意味

富山県高岡市の「高岡ジャージ」や、「富山湾岸ジャージ」など地域色あるジャージを着てそれぞれの思いを胸に参加した

富山湾岸サイクリングと併催という形でおこなわれた「がんばろう北陸!つながる富山と石川 復興応援ライド」。富山県とかかわりの深い一青妙さんの声掛けによって、富山県とかかわりの深い野嶋剛代表が(大東文化大学教授、富山県サイクルツーリズムアドバイザー)が企画し、石川県の成田加津利さんなどツール・ド・のとの中心メンバーによってライドが実現した。

ライド中に配るために作られた「がんばろう北陸!つながる富山と石川 復興応援ライド」ステッカーを持つ一青 妙さん

イベントには、両県そして全国から有志のサイクリスト達が集結した。約40人ほどの参加者は3つのグループに分かれ、約77kmのルートを走破した。コースは、氷見市(ひみし)を出発し、七尾市、中能登町、羽咋市(はくいし)を経由して再び氷見市へと戻るルートで、豊かな自然と美しい海岸線、そして田園風景のなかを走る。

スタート前、野嶋代表と今回のツアー団長を務める一青妙さんから力強い応援メッセージが送られた。「がんばろう北陸!つながる富山と石川」というスローガンのもと、参加者全員が安全第一で楽しく走ることを誓い合った。

スタートは富山湾岸サイクリングと同じ比美乃江公園から、東へ向かう湾岸サイクリングに対して、復興サイクリングは北の能登半島、石川県との県境を目指した。

富山県氷見市から県境を越えて、石川県七尾市へ

コース設定にはツール・ド・のとの実行委員会メンバーでもある石川県内灘町のカツリーズ成田さんが関わり、安全面に細心の注意が払われた。このため被災のなかでも比較的被害の少ない地域を走ることになったが、それでも沿道には崩れた建物や道路、さらにブルーシートで覆われた建物がみかけられた。

沿道で見かけた被害家屋
36年前からツール・ド・能登の発足時からかかわっている自転車ショップカツリーズの成田加津利さん。震災後はツール・ド・能登で得た地の利を活かし、被災地のサポートに奔走した。自身も被災し、塗装工場の再建を目指している

「安全に走ってもらえるようにコース設定をしました。いまの被災地の状況をもっと知ってもらいたいと思っています。日本人はどうしても遠慮しがちになりますが、復興している地域には足を運んで知ってもらい、観光していただきたいです。ただし、今回走った七尾は日常が戻ってきているが、輪島へサイクリング行けるようになるにはもう少し時間がかかります。ただ観光や遊びだけでは、地元の人間からの理解とかが得られないかもしれないけれど、そこにチャリティとか、積極的に買い物をしようというツアーであれば、能登の人たちに受け入れてくれると思います」と成田さん。

被害のあった道路には安全管理のためにスタッフを配置
ブルーシートのかかった家屋が多く存在する
「七尾ジャージ」で参加した七尾から参加したメンバー。「七尾市内は復興も進み日常がもってきています。ぜひサイクリングに来ててほしい」とコメント

中能登町ではあたたかい出迎え、地域との交流の場となった

ライド中には、地元の子どもたちが手作りの横断幕で参加者を迎え、感動を呼んだ

45km地点にある道の駅 織姫の里なかのとにたどり着くと、地元産のお弁当をいただいた。この道の駅はツール・ド・のとでもエイドとして使われ、サイクリストにとっても思い出の地だという。道の駅では休日のため復興市が開催されて、金沢はじめ各地からの観光客を集めにぎわっていたが、ここで買い物をすることが地域復興の力にもなる。

道の駅 織姫の里なかのとでは復興市が開催、地元のお米をつかったお酒や和菓子や糀ドリングなどのグルメブースが並ぶ。参加者はお弁当のほか、ブースでお買い物を楽しんだ
道の駅で食事を楽しむ地元メンバー。以前石川県志賀町の能登ゴルフ倶楽部で開催されたシクロクロスレース「弱虫ペダルカップ」のスタッフジャージで走った

一青妙さんが第二の故郷、中能登町で想いを語る

中能登町の観光大使を務める一青妙さん。中能登町は自身が原作を書いたエッセイを元に作られた映画「ママ、ごはんまだ?」のロケ地という縁もある

ライドの目的の一つに中能登町での義援金贈呈式が行われ。食事を済ませると一青妙団長から中能登町長へ、参加者から集められた義援金が手渡された。

「富山県、石川県の能登の方たちにお声掛けした時に、本当にどれぐらいの人が来てくれるんだろうと思ったんですが、蓋を開けてみたら、石川県の人たちの数が一番多く、みなさんの勇気に私は本当に励まされました。今日この場で自転車を通じて知り合った仲間たちとの再会、そして皆さんも今回のこのイベントを通して、かつての仲間と一緒に走った。そういう日常を取り戻そうという勇気をもらえた時間だったんじゃないかなと思います。いろんな形で私の方に寄せられたその気持ちを今日は自転車に乗って背負いながらここまで運んできましたので、お渡ししたいと思います。」とあいさつをした一青さんの目には涙が浮かんでいた。

一青妙さんから義援金を受け取る中能登町の宮下為幸町長。義援金は映画関係者や群馬県東吾妻町のみなさん、サイクルツーリズム同好会から募った

この温かい贈呈式は、復興への思いを共有する象徴的な場面となった。

いっぽう義援金を受取った中能登町の宮下為幸町長によると約6,600世帯のうち半数が被災したという。「ぜひ中能登町まで来ていただきたいと思います。どうもありがとうございました」と参加者にお礼を述べた。

中能登町長との記念撮影の様子

羽咋から峠を越え氷見へ、思い思いのフィニッシュ

ライドのクライマックスは石川県羽咋市から国道415号での熊無峠を超え、再び富山県氷見市へ戻る。当日は雨予報だったが、時折小雨の降るだけと奇跡的な天候に恵まれた。

思い思いに走った参加者は氷見市内を通り抜け、フィニッシュ地点の氷見魚市場へ向かった。

ライドをアシストするカツリーズのサポートカー。ロードレースに欠かせない回収車のトレードマーク、ほうきが掲げられている
まだまだ路面の悪い箇所も多く残っている

自転車を通して地域とつながることができた

NHKBS「チャリダー☆快汗!サイクルクリニック」のロケがあり、参加したうじつよしさん(左から2人目)とモデルの青島 心さん(左から3人目)。

氷見魚市場ではNHK取材のために参加していたうじきつよしさんがコメント。「起きていることはとんでもなく悲しいことだけど、みんなの気持ちを知ることができ、それも自転車乗りながらっていうのは素晴らしいことでした。ぜひまた一緒に走ってください」と締めくくった。

地元・氷見の野菜を使った氷見ベジメンバーによる炊き出し、温かいスープが参加者を出迎え、走破後の疲れた体を癒した

参加者からは、震災の苦難を乗り越えようとする地域の姿に感銘を受けたという声が多く聞かれた。自転車に乗ることで、復興への願いを実感したという参加者もいた。そして一青妙団長は「大好きな能登を、大好きな自転車で、大好きな仲間たちと走って元気を届けたい」と語り、参加者全員の笑顔と勇気に感謝の意を表した。

「がんばろう北陸!つながる富山と石川 復興応援ライド」は、単なるサイクリングイベントではない。震災の記憶を風化させることなく、地域の絆を深め、ともに前を向いて進んでいく決意の表れなのだ。参加者一人一人が、このライドで得た経験と思いを胸に、これからも復興への支援を続けていくことだろう。

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PROFILE

山口

Bicycle Club / 編集長

山口

バイシクルクラブ編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。47歳を迎えた現在ではレースだけではなく、サイクリングを楽しむためために必要な走行環境やサイクルツーリズムなどの環境整備などにも取り組んでいる。

山口の記事一覧

バイシクルクラブ編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。47歳を迎えた現在ではレースだけではなく、サイクリングを楽しむためために必要な走行環境やサイクルツーリズムなどの環境整備などにも取り組んでいる。

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