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初のジロを戦うポガチャル、ダブルツールへ視界は良好か|ジロ・デ・イタリア

5月4日に開幕した2024年シーズン最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアは本記執筆段階で第1週の後半に入っている。初日から激しいアタックの応酬となるなど、マリア・ローザ争いの緊張感は日々高まっている。そんななか、プロトン最高ライダーのひとり、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)の好調さが光っている。山頂フィニッシュの第2ステージで勝利を収めると、以降はマリア・ローザをしっかりキープ。ジロ初出場ながら、その走りは群を抜いている。今年の目標であるダブルツールに向け、幸先の良い出だしとなっている。

第1ステージから全開

昨年のオフにダブルツール挑戦を明言し、チャレンジングなシーズンを送るポガチャル。例年2月頃に迎えていたシーズンインを今年は遅らせ、3月2日のストラーデ・ビアンケから2024年の戦いをスタートさせた。

以来、ジロまでのレースプログラムを順調すぎるくらいにこなしてきた。ストラーデ・ビアンケでは驚異の82km独走劇を演じ、同16日のミラノ~サンレモでは3位にまとめた。直後に臨んだボルタ・ア・カタルーニャでも圧勝。ジロ前最終レースにして、春のクラシック総決算となったリエージュ~バストーニュ~リエージュでは、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)らをまったくもって寄せ付けなかった。

© LaPresse

そしてジロへ。ここまでの好調そのままに、第1ステージから全開だ。

このステージは丘陵コースにカテゴライズされながらも、オープニングウィンを目指したスプリンター勢やパンチャー系のライダーたちがターゲットに据えていた。しかしふたを開けてみれば、予想以上にタフなアップダウンにスプリンターの多くが終盤までに脱落。登坂力のある選手までも遅れるほど、レースはサバイバル化した。

そうしたなかで、ポガチャルはやはり違いを見せた。フィニッシュ前約3kmに控えた登坂区間サン・ヴィートでアタック。集団を振り切り、ついていけたのはジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)と逃げから残ったマキシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)だけだった。

そのまま3人でステージを争うことになり、スプリントではナルバエスが先着。ポガチャルは3位で終えたが強さを示し、この先の戦いに大きな期待を抱かせた。

© LaPresse

第2ステージでマリア・ローザに、ライバルのアタックに反応する場面も

圧巻は第2ステージだった、レース後半に前輪をパンクさせ落車に見舞われるが、すぐにバイクを交換し集団復帰。アシスト陣が徹底してレースをコントロールし、ライバルチームに流れを渡さない。

山頂にフィニッシュラインが敷かれた1級山岳。残り4.5kmで満を持してアタック。ベン・オコーナー(デカトロンAG2Rラモンディアル、オーストラリア)が食らいついたが、それもすぐに引き離す。最大のライバルと目されるゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)は無理に続かず、テンポで前へと進んでいく。

© LaPresse

こうなると、完全にポガチャルのモノである。他の追随を許さず、フィニッシュラインを通過する瞬間までペダリングは緩めない。結果的に後続に27秒差をつける独走勝利。これですべてのグランツールでステージ優勝を果たし、同時にマリア・ローザにも袖を通した。

© LaPresse

続く第3ステージでも魅せた。今大会最初の平坦ステージで、スプリンターチームがコントロールする中でも攻撃的な姿勢は崩さなかった。フィニッシュ前3kmでミッケルフレーリク・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト、デンマーク)のアタックに反応。トーマスが追いついてきたが、構わず突き進む。スプリンターチームのお株を奪う強力なアタックで、フィニッシュ前500mまで逃げ続けた。

© LaPresse

結果的に集団に飲み込まれステージ2連勝とはならなかったものの、チャンスあらば仕掛ける“ポガチャルらしさ”は全開。この日は中間スプリントを2位通過し2秒のボーナスを獲得。個人総合トップはもちろん、同2位につけるトーマスに対して46秒差をつけている。

大会前半のヤマ場は第7・第8ステージ

スプリンターチームが徹底してコントロールした第4ステージ、4人の逃げ切りとなった第5ステージ、ポガチャルはこの2日間セーフティに徹した。UAEチームエミレーツとしても前線を占めることはなく、アシスト陣の負担を軽減することにも成功している。

続く第6ステージも落ち着いて立ち回った。ストラーデ・ビアンケでも採用されるトスカーナの未舗装区間を進んだが、前日同様に逃げ切りとなったが集団からみずからが仕掛けることはなく、マリア・ローザのキープに集中。トーマスとの総合タイム差は46秒差のまま。

© LaPresse

再び腰を上げていくのは、第7ステージからとなるか。40.6kmの個人タイムトライアルは、リードを広げる絶好のチャンス。終盤には最大勾配16%の上りも控えるなど、ポガチャルにとってはおあつらえ向きのレイアウト。

第8ステージは実質今大会1つ目の本格山岳。頂上フィニッシュとなる1級山岳のプラティ・ディ・ティヴォはポガチャルにとって、2021年のティレーノ~アドリアティコで勝っている相性の良い場所でもある。この2ステージでトーマスら総合のライバルに対してどの程度の差とするかで、その先の戦い方が見えてくるかもしれない。

© LaPresse

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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