フランス・ニースの底知れぬ魅力 ツール・ド・フランス2024閉幕地として世界からの注目を集める
福光俊介
- 2024年06月13日
6月29日に開幕するツール・ド・フランス2024は、レースへの期待値もさることながら、初もの尽くしの大会としても注目される。そのひとつが、史上初めてフランスの首都・パリを離れ、同地以外で閉幕する点。2024年大会の閉幕地は南仏・ニース。世界有数の観光地としても知られ、日本からの観光客の多いこの街が7月後半にはツール一色となる。ツール以外にも今後数年はビッグイベントが続き、ワールドワイドな関心を集めることとなる。
ニースの名所・マセナ広場でツール2024が閉幕
ツール2024ではイタリア・フィレンツェでの開幕後、第4ステージでフランスに入国し、同国南部から中央部にかけて反時計回りにめぐっていくルートがとられる。とりわけ中央山塊を抜ける第12ステージ以降は南部を進行し、ピレネーとアルプス両山脈での激戦が見込まれる。
なかでもニースは2024年大会のハイライトの地となることは必至。最終日前日の第20ステージではスタート地となり、この大会4度目にして最後となる山頂フィニッシュへ向かう選手たちを送り出す。
いつもであれば第20ステージが終わった段階で、最後の1ステージを待たずにマイヨ・ジョーヌ争いが決するが、今年ばかりは事情が異なる。前述の通りパリを離れ、ニース閉幕となることで、イレギュラーなツール・ド・フランスを見られるのだ。
最終・第21ステージでは35年ぶりに個人タイムトライアルが採用される。ツールにおける個人タイムトライアル導入90周年を記念する催しを兼ねるとともに、1989年大会でグレッグ・レモンが8秒差で個人総合争いを逆転したようなサスペンスを、主催者は求めている。そのドラマの舞台がニースとなる。
この日は隣国モナコをスタートし、まずは2級山岳に指定されるラ・テュルビ(登坂距離8.1km、平均勾配5.6%)へ。直後には、3月開催のステージレース「パリ~ニース」でおなじみのエズ峠の急勾配にトライ。頂上到達からは約10kmに及ぶダウンヒルをこなし、最終盤には地中海岸道路プロムナード・デ・ザングレ(通称:イギリス人の散歩道)の平坦区間とヘアピンコーナーも。
フィニッシュラインはマセナ広場に敷かれる。第111代ツール・ド・フランス王者にマイヨ・ジョーヌが正式に戴冠され、今大会からとなるマイヨ・ジョーヌをモチーフにした新たな優勝トロフィーも授与される。ちなみに、マセナ広場は世界的な新型コロナ蔓延下で秋開催となった2020年大会の開幕地でもある。このときは広場の四方を鉄製の壁で囲い、一般客の入場・観覧を制限したが、今年はそんなことは一切ないはずだ。
2025年にはUCIグラベル世界選手権も開催
5月29日に行われたニース・コート・ダジュール観光局による記者発表会では、51の市町村からなる「メトロポール・ニース・コートダジュール」の魅力を紹介。1年を通して温暖で、フランス第2の国際空港「コート・ダジュール空港」を基点に観光を楽しめる点などがポイントとして挙げられた。
スポーツではツール閉幕だけでなく、直後に開幕するパリ五輪ではサッカーの一部試合の会場となるほか、招致計画中の2030年冬季五輪ではフィギュアスケートやカーリング、アイスホッケーなどが実施され、選手村も設けられる方針だという。
そして何より、年々認知度が増すグラベル種目の最高峰、UCIグラベル世界選手権では2025年大会の開催地としても決定済み。この数年は「自転車の街」としてもニースは全世界からの目が注がれている。
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- Bicycle Club
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- TEXT:福光俊介 PHOTO:A.S.O./Alex Broadway Atout France A.S.O./Pauline Ballet
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。