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ログリッチが、史上最多タイ4度目の個人総合優勝|ブエルタ・ア・エスパーニャ

ロードレース2024年シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャが現地9月8日に閉幕。8月17日にポルトガル・リスボンをスタートし、3週間をかけてイベリア半島をめぐった戦いは、プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)が4度目の個人総合優勝。ロベルト・エラスに並ぶ、史上最多タイの大会制覇数となった。

第19ステージで逆転マイヨ・ロホ 最終日は食中毒の影響も乗り切ったログリッチ

全21ステージのうち、13ステージが山岳ステージ(中級山岳含む)にカテゴライズされるほど、上りの比重が高かった今大会。序盤戦から総合系ライダーたちが積極的な走りを見せ、結果としてマイヨ・ロホ争いが激化した。

そんな熱戦を制したのが、“ブエルタ・マエストロ”のログリッチ。2019年から大会3連覇を経験し、開幕前段階でステージ通算12勝。ブエルタの戦い方を知り尽くす男は、一度袖を通したリーダージャージの「マイヨ・ロホ」を奪われてからも冷静に走り続け、大会終盤で満を持してジャージ奪還に動いた。

© Unipublic/Cxcling/Naike Ereñozaga

第4ステージで今大会最初の勝利を挙げてマイヨ・ロホに袖を通したが、その2日後にベン・オコーナー(デカトロン・アージェードゥーゼールラモンディアル)の大逃げで首位陥落。この時点で、両者の総合タイム差は4分51秒だった。

ただ、残るステージで多分にチャンスが残されていたこともあり、ログリッチ、さらにはレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのアシスト陣はその後も落ち着いてレースを進める。

レース展開もレッドブル勢に味方した。今大会、平坦にカテゴライズされたステージは1つだけだったが、丘陵ステージなどでもスプリンターが対処可能なコースがいくつかあり、それらではステージ狙いのチームがレースをコントロール。また、山岳ステージでも上位を走る総合エースを擁したチームが積極的に統率を図るなど、常にレッドブル勢が集団の先頭に立たされるような状況にはならなかった。もっとも、リーダーチームのデカトロン・アージェードゥーゼールラモンディアルも責任を果たしていて、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエは、要所で前線へと上がってくるような流れを構築していった。

© Unipublic/Cxcling/Toni Baixauli

ライバルチームの動きをうまく利用したログリッチとレッドブル勢は、オコーナーとの総合タイム差をじわりじわりと縮めていき、14日間かけてマイヨ・ロホを取り戻してみせた。

“Xデー”となったのが、第19ステージ。アルト・デ・モンカルビリョ頂上のフィニッシュラインを目指し、10%前後の急勾配が続くコースでログリッチは勝負に出た。チームメートの高速牽引でライバルの消耗を誘うと、残り5kmでログリッチみずから独走態勢をつくりだす。後続との差をしっかり広げると、第4・第8ステージに続く今大会ステージ3勝目、そしてマイヨ・ロホの奪還に成功した。

© Unipublic/Sprint Cycling Agency

この時点でオコーナーとの総合タイム差を1分54秒としたログリッチは、続く第20ステージも3位でまとめて、さらにギャップを拡大。2分以上のリードを持って最終・第21ステージの個人タイムトライアル(24.6km)に臨むと、ここでもステージ2位として文句なしの個人総合優勝となった。

© Unipublic/Sprint Cycling Agency

4度目の大会制覇は、ツール・ド・フランスで負傷した背中の痛みが癒えていない中での偉業で、さらには第20ステージでチームを襲った食中毒の影響を受けながらのものでもあった。同ステージでは3選手がリタイアまたはタイムアウトとなり、ログリッチをアシストできたのは4選手だけ。当初は「食中毒の影響なし」と報じられたログリッチ自身も、実のところ第21ステージ前には20回以上トイレに駆け込んでいたなど、体調を崩していた。

それでも、「何としてもやり遂げるという使命だけだった」と強い意志でマイヨ・ロホを堅守。エラスに並ぶ史上最多タイ記録と同時に、キャリア通算5度目のグランツール制覇は歴代8位タイの快記録でもある。

© Unipublic/Sprint Cycling Agency

走り終えるや「大会5勝目の新記録を目指すか」と問われ、まだ先の話とかわした王者ログリッチ。今季からレッドブル・ボーラ・ハンスグローエに加わり、新たな環境でチャレンジを続けてきたが、移籍初年度は大成功だと言えるだろう。

オコーナーも粘って個人総合2位

今大会の殊勲者は、オコーナーで間違いないだろう。第6ステージでの大逃げから、マイヨ・ロホを14日間キープ。トップに立っている間も「ログリッチの追い上げをかわすのは難しい」と予想されていた中で、大会終盤までジャージを守る粘りを見せた。

また、結果的に個人総合3位で終えるエンリク・マス(モビスター チーム)も追ってきていたが、大会最終日の個人タイムトライアルでの好走で2位の座は譲らず。「総合表彰台を現実的な目標とする」と公言して上位戦線を走り続けたが、その通りの結果に。そして、個人総合2位フィニッシュはキャリアハイでもある。

© Unipublic/Cxcling/Toni Baixauli

オコーナーは来季、チーム ジェイコ・アルウラーへ移ることが決まっている。自国のトップチームに加わっても、当然総合エースの役割を担うだろう。3週間の戦いを終えて、「ログリッチに勝つのはこの先も難しい」と口にしているが、大きな自信も得て今後もトップ争いに加わることが期待される。

© Unipublic/Sprint Cycling Agency

オーストラリア勢は、総合争いを盛り上げたオコーナーに加え、カーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)がポイント賞、ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)が山岳賞をそれぞれ獲得。これら2つの賞を同国ライダーが同時に獲るのは史上初めてでもあった。

完走は135選手

最終的に、王者ログリッチとオコーナーとの総合タイム差は2分36秒。3位マストは3分13秒差。

© Unipublic/Sprint Cycling Agency

各賞は前述の通り、ポイント賞グローブス、山岳賞ヴァイン、ヤングライダー賞は個人総合でも5位に食い込んだマティアス・スケルモース(リドル・トレック、デンマーク)が獲得。チーム総合はUAEチームエミレーツがトップとなり、同チームのマルク・ソレル(スペイン)はスーパーコムバティヴ(敢闘賞)を受賞している。

© Unipublic/Sprint Cycling Agency

総距離3265kmを走り、最終目的地マドリードに達したのは135選手だった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 最終成績

個人総合時間賞

1 プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア) 81:49’18”
2 ベン・オコーナー(デカトロン・アージェードゥーゼールラモンディアル、オーストラリア)+2’36”
3 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+3’13”
4 リチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)+4’02”
5 マティアス・スケルモース(リドル・トレック、デンマーク)+5’49”
6 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+6’32”
7 フロリアン・リポヴィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)+7’05”
8 ミケル・ランダ(ティーレックス・クイックステップ、スペイン)+8’48”
9 パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ、フランス)+10’04”
10 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)+11’19”

ポイント賞

カーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク、オーストラリア)

山岳賞

ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ、オーストラリア)

ヤングライダー賞

マティアス・スケルモース(リドル・トレック、デンマーク)

チーム総合時間賞

UAEチームエミレーツ 245:12’58

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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