“山の神”も唸った四国屈指の山岳コース さなごうち大川原高原ヒルクライム第1回大会
福光俊介
- 2024年10月09日
自転車熱の高い四国にあって、新興イベントとして注目を集める徳島県佐那河内村のヒルクライムイベント「さなごうち大川原高原ヒルクライム」。昨年11月にプレ大会が行われ、その成功を受けて10月6日に晴れて第1回大会を実施。豪華ゲストライダーも招待し、選手たちは一番時計を目指し力走。徳島県のヒルクライムのメッカとして親しまれる大川原高原の山岳コースで行われた熱き1日をレポートする。
徳島県のヒルクライムのメッカ・大川原高原
開催地の徳島県名東郡佐那河内村(みょうどうぐん・さなごうちそん)は、県庁所在地・徳島市に隣接し、車で30分ほどの位置にある、同県唯一の村。大きく希少性のある高級イチゴ「ももいちご」やみかん、ゆずといった特産品に恵まれていることから、足を運ばずとも「村の名前は知っている」という方も多いのではないだろうか。
そんな佐那河内村には、徳島のサイクリストにとって聖地ともいえるヒルクライムコースが存在する。大川原高原に向かう登山道は全長約11kmで、頂上は標高約1000m。休日ともなると、レジャー客と混じってサイクリストの姿も多く見かけるスポットだ。その山岳コースで行われるヒルクライムレースが「さなごうち大川原高原ヒルクライム」である。
2023年の年明けからプロジェクトが本格化し、同年11月にプレ大会を実施。レースに限らず、あらゆるプログラムの試験的な取り組みを経て、このほどの第1回大会につなげている。
最大勾配19%の山岳コースに160人がアタック
十分な準備時間を設けたうえで迎えた第1回大会。競技に先立ち行われた開会式では、岩城福治・佐那河内村長の開会宣言にはじまり、ゲストライダーの森本誠選手(GOKISO所属)、白川幸希選手(KINAN Racing Team)もステージに登壇。中西裕幸審判長による競技説明と注意事項の喚起もなされ、参加者を含んだ関係者すべてが事故なくイベントを運営できるよう努めることで一致団結した。
レースは山岳個人タイムトライアル形式で行われ、10秒間隔でひとりずつコースへ。正午に第1走者がスタートし、160選手が大川原高原の頂を目指した。周辺の交通事情を考慮し、コースは登山道の一部をカット。全長9.77km・標高差746m・平均勾配7.8%・最大勾配19%を数える四国屈指の本格山岳コースが採用された。
競技は年代別に加えて、体重85kg以上の“ヘビー級ライダー”向けカテゴリーも設定。ゲストライダーは一般参加ライダーの間にスタート順を配し、選手たちの走りを“あおる”セッティングも。競技性向上には効果てきめんで、ゲストの2人に追い抜かれまいと、スタートからハイペースで飛ばしに飛ばす参加者の姿も見られた。
全部で6つのカテゴリーから優勝者が生まれ、さらには全体の一番時計だった選手をグランドチャンピオンとして表彰。第1回大会の王者には、33分21秒573で走破したカテゴリーE(男子50~59歳)の若松祐介選手(徳島県)が輝いている。
第1回大会の成功を受けて次回への機運が高まる
登頂を果たした選手たちは、一望できる徳島平野や紀伊水道、淡路島といったパノラマに驚きと感嘆の声を上げ、ゲストライダーとの交流する様子も。
プレ大会に続いてゲスト参加した森本選手は山岳個人タイムトライアル形式を絶賛し、「これぞ真実のレース」と表現。白川選手も「佐那河内の人たちの温かさや徳島の自転車熱に心から感動している」と述べ、両選手ともに「第2回大会でまた会いましょう!」と再来村を約束した。
レースにとどまらず、主会場の佐那河内村中央運動公園でのステージイベントも盛り上がりを見せ、人気ミュージシャンのライブや阿波おどり、ビンゴ大会、キックバイク体験会に多くの人たちが集まった。
村の良さを日本各地に発信した1日。すでに第2回大会への機運も高まっていて、さらなるビッグイベントとするべく、村を挙げて次のステップへ向かおうとしている。
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。