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香港で浸透する日本の燗付け文化 香港『GODENYA』

「日本から世界へ」ある燗付物語


香港の今と昔が交錯する上環エリア。香港一の高級住宅街に伸びるアバディーンストリートから細い脇道を入った所に、その店はある。清々しい白い暖簾をくぐると、着物姿の店主、五嶋慎也氏が迎えてくれた。燗付け師・五嶋氏は、全国の日本酒ファンが通う、東京・曳舟にあった伝説の店『ごでんや』を経て、2015年6月、香港で唯一の日本酒スタイルを掲げる店をオープン。8皿のコース料理で構成され、そのひと皿ごとに1種類の日本酒を温度、温め方、器を変えてペアリングしていくというものだ。

店内奥には、4名から最大8名まで利用できる個室を用意。和紙と竹を組み合わせた天井は、和風モダンな雰囲気。

「酒と料理の旨味の極地を探し当てる、そんな面白さを知ってほしいんです」と五嶋氏。元々燗酒になじみのない香港人だからこそ、固定観念や先入観なく、楽しめるのかもしれない。一方で、「冷たい飲み物は身体を冷やす」という東洋医学の教えも、燗酒が受け入れられやすい理由とも言える。Time Out Hong Kongが発表した「The top 50 restaurant dishes in Hong Kong 2015」において開店わずか3ヵ月で見事14位を獲得する快挙を成し遂げた。

「東京の店の時と、コンセプトや考え方はいまも変わっていません。ただ、『日本酒を世界に伝える』という責任は、日を追うごとに強く感じています」

日本から持参した銅鍋と錫製のチロリ。「鍋は実はおでん用。自分の燗付けスタイルや酒の完成度を考え、これに行き着きました」。

相乗効果をもたらす燗酒と料理の合わせ方

「燗酒は最高の食中酒」と五嶋氏。「一皿の料理にひとつの日本酒を合わせる」という “GODENYAスタイル” を披露してもらった。

「他の酒と比べて、日本酒は旨味成分が多い。旨味は温めることで一層豊かになります。燗酒には自身の旨味を開花させ、さらに料理の旨味を増幅する力があるんです」

GODENYA直伝 燗酒の流儀

GODENYA直伝 燗酒の流儀

2021年01月08日

料理を担当するのは、弟の千裕氏。東京時代から兄の右腕として支える。酒と料理を出す数秒のタイミングも、兄弟の呼吸でピッタリ。

東京・築地から毎日空輸される新鮮な魚介や、香港に集まる旬の食材をもとに、日本料理、フランス料理、広東料理などの要素を取り入れた皿のコース料理を構成。伝統的な手法をベースに、モダンだが奇をてらわない料理は、食への感度の高い香港人の舌を悦ばせている。料理と燗酒のベストポジションは、まさにミリ単位。そこを探し当てる日本酒の粋な楽しみ方は、香港でも徐々に、しかし確実に浸透しつつある。

宗玄 純米無濾過生 26BY(宗玄酒造)と合わせるのは……

蝦夷鮑の肝をソースにしたリゾット。「宗玄」は常温熟成させた状態から44°Cまでゆっくり温度を上げ、鮑の旨味をさらに広げる。

奥播磨 純米無濾過生 26BY(下村酒造店)と合わせるのは……

さつまいもチップスの中には、無花果と生落花生を混ぜた牛肉のタルタルが。「奥播磨」は55°Cに一気に上げた後、48°Cに下げる。

生酛のどぶ 純米にごり 26BY(久保本家酒造)と合わせるのは……

栗とピータン、2層のポタージュ。アルコール度数18度の「どぶ」は加水し15度に落とし、50°Cで提供。栗の味がにごり酒に移る。

小笹屋竹鶴 純米 26BY(竹鶴酒造)と合わせるのは……

太刀魚のソテーと赤座海老、ポルチーニ茸のスープ仕立て。スープに合うのは丸みのある旨味の火入れ酒。「竹鶴」は49°Cに燗付け。

 

【DATA】
GODENYA (ごでんや)

住所/Wellington Street 182, (upper G/F), Central, Hong Kong
営業/19:00~23:00(最終入店 21:00)
休み/日・月曜
※ 完全予約制(予約PIN:1123)
https://godenya.com/

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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