DIYするならキッチンでしょ!
buono 編集部
- 2020年10月12日
INDEX
料理の仕上がりを左右する作業効率の向上は、万人に使い易く設計されたシステムキッチンでは限界がある。ワンステージ上を目指すならば、自分仕様のキッチン、そうDIYが必要なのだ!
不便と感じたことは我慢せず、解決する術をカタチにせよ!
調理中にストレスを感じたなら、それが合図。解決策を思い描けば、作るべきものが見えてくる。
buonoにも度々登場するキュイジーヌジャーナリスト・戸井亀ブライアン氏はキッチンDIYフリークのひとり。彼のDIY論とは如何なるものか。
「オイラにとって料理は趣味。 だから道具にもこだわるよね。そして道具と同じように趣味に欠かせないのがフィールドだよ。ツーリングなら小気味いいワインディングロード、ボルダリングなら人智を超えた岩場とかね。で、料理好きにとってのフィールドはキッチンにほかならない。だから妥協しちゃいけないんだよ。このキッチンも設計した時は、無駄を省いた使い勝手の良いものにしたつもりだけど、実際にここで調理を重ねると気付きは多い。つまりはストレスよ。置き場がない、引っ掛かる、届かない……。こうした小さな障害の積み重ねが作業効率を落とし、延いては料理の楽しさにも影響を及ぼすんだな。だから手を掛ける、キッチンを自分が使いやすいようにブラッシュアップするんだよ。それがキッチンDIYだ。コツは、不便と感じたことを忘れないこと。そして、どうすれば使い勝手が良くなるかを考え抜くことなんだ。例えば中華鍋の置き場がないとする。じゃあ吊り下げるか、でも油を馴染ませた中華鍋は埃が付着しやすい。じゃあどうする? やはり覆われているべきだな。じゃあ、縦に収納できたら? それも稼働式のキッチンワゴンの中に縦に収納できたら? 他の鍋も同じスペースで効率的に収納できるじゃないか! こうやって発想を広げながら具体的な施策に落とし込んでいくといい。どうだい? 分かってきたかな? まぁ、丁度これから実際にウチのキッチンをオレ様仕様にDIYしていくから参考にするといい。そして自分なりに解釈して真似てみるといい。フィールドが良くなれば、料理がもっと好きになるはずだから」
戸井亀氏のキッチンとお悩みはこちら!
- 端々に生活感が滲み出ている
- 包丁のやり場が悩ましい
- ぶら下げ道具が増加の一途
- 作業スペースが狭くて狭くて
- ワークトップに電源がない……
- コンロ近くのスパイス&オイル
- 如何ともし難いデッドスペース
- 増え続ける調理器具と鍋
戸井亀氏キッチンの今回のDIY戦略
上のような戸井亀氏の悩みに対して、今回立てた戦略はこうだ。
- 収納たっぷりなキッチンワゴン
- ワゴントップで作業領域を拡張
- 生活感は色替えで解消
- 吊りパイプ延長で収容面積UP
- 免許なしでもコンセント新設
- スパイスたちは引き出し式収納
- デッドスペースにジャストな棚を
これらの戦略を4つのDIYで遂行していく。軽めの作業もあるので、ぜひ気軽に取り入れてみたい。
1.メガ盛りキッチンワゴン
Before
キッチン下に溢れる鍋と調理道具
料理好きであれば、新たな調理道具や鍋を試してみたくなるもの。その結果がこれだ。食器棚には収まらず、サイズもまばらであるため、キッチン下のスペースは侵食されている。
主要ツール
・金切バサミ
・有孔ボード
・電動ノコギリ
・油性塗料(銀)
・ステンレスシート
・システムスチール棚
作り方
手順1
システム棚は組み立てが容易だが、色味が気になる。ワークトップに合わせ、シルバーに塗装する。
手順2
天板も同様、シルバーに塗装。上段と下段は天面が隠れるため、サイドのみを塗れば良い。
手順3
塗装が乾いたら、ラックを組み上げていく。
手順4
下段スペースの3面に立てる有孔ボ ードを用意し、ビスと干渉する角部分をカットする。
手順5
収納の目隠しと、フックを吊るすことを叶える有孔ボードを下段の3面に立てる。
手順6
最上段の天板にあわせてステンレスシートをカットする。
手順7
最上段の天板に、ステンレスシートを接着するための強力両面シールを縁と中央にバランス良く貼る。
手順8
天板に合わせて、ステンレスシートの端を折り込む。
手順9
最上段の四隅にコーナーパーツを配し、ステンレスシートに穴を開けたうえでナットで固定する。
手順10
最下段に取り付ける鍋を仕切る立て板にL字パーツを取り付ける。
手順11
実際に収納する鍋を置きながら、立て板を置くべき場所を探る。
手順12
手順11で割り出した、適切かつ無駄のない位置に立て板を取り付ける。
After
機能と見た目に妥協しない出来。収納と作業台の融合がコレだ!
既製品のスチール棚だが、シルバー塗装と天板に貼ったステンレスシートが功を奏し、業務用ワゴンのような風情に仕上がった。
2.パネルのステンレス仕様化
Before
便利ではあるが統一したいトーン
壁面に備え付けられた給湯パネルは使い勝手が良い。だが、ステンレス×ホワイトで統一したキッチンでは、樹脂感とやわらかな色味が、どうしたって浮いてしまう。
主要ツール
・ラッカースプレー(銀)
・マスキングテープ
作り方
手順1
塗り漏れが起こらぬよう、取り外しのできるパーツは取り外しておく。
手順2
機能を示すサインや、ボタン、スプレーを塗布したくない場所をマスキングテープで覆う。
手順3
パネルの周囲も含め、マスキングが完了したら、ラッカースプレーで万遍なくカラーリングしていく。
手順4
取り外したパーツもカラーリングする。一度で定着しない場合は、2、3度に分けてカラーリングしていく。
手順5
塗料が乾いたら、マスキングテープを剥がし、取り外したパーツを元に戻して完成。
After
軽DIYで叶えた納得のルックス
機能、利便性を損なうことなく、ステンレスのワークトップや金属系の調理道具とも相性の良い面構えを手に入れた。
3.理に適った収納棚
Before
良いワケないが、ここしかない
スパイスや油の天敵は熱と光だ。分かってはいながらも、収納の少なさと作業効率からコンロ横にスパイスと各種オイルを置かざるを得なかった。
主要ツール
・引き出しレール
・電動ノコギリ
・ノコギリ
・電動ドライバー
・インパクトドライバー
・アクリル受け
・アクリル板
・コンパネ(12mm厚)
・差し金
・取っ手
・金切ばさみ
作り方
手順1
あらかじめデッドスペースを計測しておき、ぴたりとはまるサイズの棚を設計し、組み立てていく。
手順2
棚の外枠が仕上がったら、デッドスペースに仮設置し、干渉する配管がどの程度食い込むかを計測する。
手順3
手順2で計測した配管が食い込む部分を電動ノコギリで取り去る。
手順4
引き出しを組み上げていく。スライドすることを考慮し横幅、奥行きともに外枠よりひと周り小さく作る。
手順5
引き出しにアクリル受けを取り付け、両サイドにアクリル板を備え付ける。
手順6
引き出しを受ける板に、引き出しレールの一方を取り付ける。このレールは引き出し側へも取り付ける。
手順7
引き出しを取り付ける高さを決める。スパイスや油類のなかで背の高いものに合わせるのが良いだろう。
手順8
手順7で割り出した高さで、引き出し受けと外枠をジョイントする。
手順9
引き出しの取り付けが完了したら、 デッドスペースだった場所へ棚を設置する。
手順10
棚のコンロ側は油や調味料がはねることを想定し、ジャストサイズに切り出したステンレスシートを貼る。
手順11
引き出しに取っ手を取り付ける。引き出しの左右幅に対してのセンター、適切な高さを割り出す。
手順12
取っ手はコンロ側から握ることになるため、縦に取り付ける。これにてスパイス&油が収納できる棚の完成。
After
光と熱からすっきり守る
デッドスペースにジャストサイズで収めた棚には引き出しがふたつ。サイドがアクリルの引き出しは何が入っているか一目瞭然!
4.レール延伸とコンセント新設
Before
シンプルの代償は利便性の低さ
ワークトップ前面にはキッチンツールを吊るすレールがあるが、混雑状態。そしてコンセントはワークトップ下のみで、不便を感じること多々。
主要ツール
・電動ドライバー
・電動ノコギリ
・立バンド
・樹脂用ノコギリ刃
・T字型足
・延長コード
・水平器
・塩ビ管
・強力両面テープ
作り方
手順1
既存のレールを取り外す。
手順2
塩ビ管をシルバーのラッカースプレーで塗装し、インダストリアルな鉄パイプのような風情に仕上げる。
手順3
塗装が乾いたら、設置する壁を計測し、大まかな長さを割り出し、少々長めに塩ビ管を切り出す。
手順4
長めに切り出した塩ビ管と固定金具を仮留めする。実際に道具を掛け、高さを調整する。
手順5
設置位置が確認できたら、塩ビ管を外し、電動ノコギリで延長コードが入る程度の幅の溝を切る。
手順6
留め具となるT字型足を設置する場所に目印を付ける。水平器があるとズレが生じない。
手順7
T字型足を設置する。
手順8
既存のコンセントから、今回新設するコンセントとなる延長コードの電源をとる。
手順9
コンセントを設置する(今回採用したものは電源タップとコードが分離する無印良品の延長コード)。
手順10
手順5で開けた溝を利用して、塩ビ管のなかに延長コードを通していく(L字パーツも同様)。
手順11
コードを通し終えたら、設置しておいたT字型足に立バンドを使って、塩ビ管を固定する。
手順12
ワークトップと塩ビ管の間の壁面に、包丁を貼り付けて収納できるよう、マグネットテープを貼って完成。
After
一挙両得以上の武骨な配管 !?
コンセントの新設には電気工事士免許が必要。ならば、と塩ビ管に延長コードを通したことで、道具を吊るす距離も延長できたのだ。
以上、4つのDIYが完了したキッチンをご覧あれ!
【おまけ】DIYには付き物の壁の穴や塗装の削れ。覚えておきたい補修テク
DIYでのキッチンカスタマイズに終わりはない。改善を重ねるからこそ、過去のビス穴や塗装の剥げなどは避けられない。しかし心配ご無用。穴はパテで埋めれば良いし、塗装もペンタイプで手軽にできる。修復しながら使い勝手の良いキッチンを目指そうじゃないか!
キズの補修方法
手順1
ちょっとしたほころびであれば、まずは壁の色と近しいペンタイプの塗料を使ってぼかしてみることをオススメする。
手順2
深い傷や、凹凸がついたほころびは、ペンタイプでは修復が難しい。そん な時はパテを使うのが良い。まずは傷のまわりに大まかにパテを塗る。
手順3
硬さとしなやかさのある平らなもの(たとえばプラスチック片など)でパテを伸ばせば、修復は完了。必要があれば壁と同調する塗装を施そう。
土井亀ブライアン (キュイジーヌジャーナリスト)のプロフィール
調理法、キッチンツール、調味料など料理を構築するエレメントから世界の食文化にアプローチする食のジャーナリスト。その素性は明らかではないが、夜な夜な下町の赤提灯で酩酊しているという目撃談は実に多い。
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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