ベベルからMotoGPマシンまで「受け継がれる最速のDNA」【デスモ編(2)】

デスモ、トレリス、L型エンジンなど、その時代ごとにドゥカティの最速エンジンは最新技術と独創性を積み重ね「最速のDNA」を今日まで築きあげてきた歴史をここでは特別にお届けしている。前回は、主にクルマで開発され、プジョーやメルセデス・ベンツなどで実績を上げてきた。そんなデスモエンジンがよりコンパクト化され、ついにドゥカティに搭載されたのだ。

125ccデスモ機構のレーサーが登場 そして初の市販車に挑戦していく

メルセデス・ベンツがデスモ機構のF1カーW196を走らせた1954年、ドゥカティのエンジニア、そう前回紹介したファビオ・タリオーニ技師がその2年後、ついに1956年の世界GPに、デスモドローミック機構を持つ125ccレーサーをまずは開発したのだ。メルセデス・ベンツのF1カー以降、その構造が複雑で、部品点数も多く、実用化が難しかったデスモ機構の市販車化だったが、それを量産市販車として投入したのがドゥカティだった。

マシンはタリオーニ技師が開発した3本カムのデスモ機構を持つ125GP。そしてジャンニ・デリ・アントーニのライディングでデビューウィンを飾った。58年からは多数のライダーを擁し、デスモの開発ライダーでもあるブルーノ・スパッジアーリもドゥカティのエースライダーとして活躍した。

じつはドゥカティ、デスモ誕生以前からイタリア国内レースは好調だった。そしてデスモ登場以降は世界GPで実力を発揮するが、惜しくも年間チャンピオンは獲得できず(当時はMVアグスタの独壇場)、59年シーズンでワークス活動を休止してしまう。しかし多くのプライベーターが、250デスモでレース参戦したといわれている。

スパッジアーリと共に有名なポール・スマートも、250デスモのレーサーで活躍したのが伝説の始まり。数々のメーカーで戦績を上げ、72年のイモラ200でLツイン750レーサーを駆って優勝した。

デスモでローミック採用の市販車が、そしてL型2気筒も登場

そして1968年、ついに市販車にデスモドローミックを採用。68年のマーク3D(Dはデスモの意)。他にも250、450の排気量を揃え、オフロードに対応するワイドフレームを採用。69年には450スクランブラー(現行スクランブラーの祖)が登場してアメリカで人気を博した。しかし日本車(ホンダCB750Four)が席巻する大排気量化に対抗するため、タリオーニ技師はL型2気筒を開発(レーサーの500をベースに市販車用に750化)。1974年に登場した超有名な750SS以降は、すべてデスモ機構が採用されたのだ(極短期間生産された並列2気筒モデルを除く)。

市販車で味わえるMotoGP機構、受け継がれる60年の歴史とDNA

というワケでドゥカティのデスモ機構は登場から60年余り(市販車でも50年越え)の歴史を持つが、他メーカーには存在しない。コレを「当時よりバルブスプリングの材質や製造技術も進んでいるから、もはやデスモ機構は時代遅れ」という口さがない人もいる。が、本当にそうだろうか? たとえばバイクレースの頂点MotoGPでも、ドゥカティだけがデスモ機構を使うが、最近のレースではライバル車より最高速や立ち上がり加速で明らかに優勢なのは周知のとおり。そして市販車においても、パニガーレV4Rが圧倒的な高回転と最高出力を誇っている。

ロードレースの最高峰MotoGPに2003年から参戦を続けるドゥカティ。そのワークスマシン「デスモセディチD16」は、最初期のGP3からデスモ機構を採用。ニューマチックバルブ(空気バネ)を採用するライバルを凌ぐ最高速度からも、デスモ機構の優秀さを伺える。

とはいえMotoGPやスーパーバイクレース以外では、デスモドローミックは“オーバースペック”なメカニズムかもしれない。でも、そんな高い技術を、普通のライダーが味わえるのは、本当に凄いコトだと思う(ちなみにドゥカティを除くMotoGPマシンはバルブ駆動に空気バネを用いる“ニューマチックバルブ”を使うが、現時点では市販車にフィードバックされていない。コストの問題だけでなく、停車中や保管中も空気の加圧管理が必要になるため、現実的に採用が不可能)。 というワケで、デスモの凄さをご理解いただけたでしょうか?

※この記事はDUCATI Magazine 5月号82号の記事をWEB用のまとめた内容となります。
(出典:『DUCATI Magazine 2019年5月号』

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