ベベルからMotoGPマシンまで「受け継がれる最速のDNA」【デスモ編(3)】

デスモ、トレリス、L型エンジンなど、その時代ごとにドゥカティの最速エンジンは最新技術と独創性を積み重ね「最速のDNA」を今日まで築きあげてきた歴史をここでは特別にお届けしている。今回は3回目は、これまでのデスモエンジンとドゥカティの歩みをお伝えしてきたが、ここでは、もっと詳しく、その独特な機構を紹介してみたい。かなり細かい内容にもあるが、「最速のDNA」の最深部でもあるのだ。

ドカが極めたデスモとスプリングの違いを検証

動力性能を上げるには、まずはエンジンの高回転化がセオリー。とはいえ吸排気バルブを正確に開け閉めできなければエンジンが壊れる危険が大きいし、そもそも高回転まで回らない。そんなリスクを避けて正確にバルブ駆動できるのがデスモドローミックの特徴だが、現代のレースや市販車で実用化しているのはドゥカティだけだ!

上の写真は4バルブ・デスモのバルブひとつ分。手前のカムがオープン側で、ロッカーアーム(フィンガーフォロア)を介してバルブを押して開き、奥のクローズ側のカムがL字型のロッカーアームでバルブを引っ張り上げて閉じる。エンジンの種類で形状は異なるが、仕組みは同一だ。

こちらは一般的なスプリング式の動弁機構。上はロッカーアームを介しているが、ロッカーアームを持たずにカム山で直接バルブを押し下げる“直押し式”もあるが、いずれにしてもバルブスプリングの反発力でバルブを閉じている。このスプリングを押し下げる力が無視できない。

高回転でも正確にバルブを簡単にできる

スプリングは伸び縮みする際に、特定の周期で“共振”を起こす(振動で勝手に伸縮する)。また反発力が足りない場合も、高回転時にカムの動きに追従できなくなる。これが“バルブサージング”という症状で、バルブジャンプとも呼ばれる。コレを防ぐためにスプリングを硬くしたり、レートの異なる二つのスプリングを重ねたりするが、いずれもパワーロスの元になるし、回転の限度もある。しかしデスモドローミックはスプリングが存在しないので、その心配は無用、というより“高回転まで安全に回すために”デスモが生まれたワケだ。カムの動きにバルブが追従できずにバルブジャンプを起こすと、上昇したピストンの頭とバルブが衝突する危険があり、最悪エンジンがブローすることも。

動作が軽いからパワーロスが少ない

エンジンを高回転まで回そうとすると、一般的にはバルブの追従性を高めるために反力の強いスプリング(硬いスプリング)にするしかない。するとバルブを開ける際に強い力が必要になり、コレが結構な“パワーロス”を生んでしまう。ところがデスモの場合は、基本的にパーツが接触する摩擦ロスしか生じないので、パワーロスはスプリング式とは比較にならないほど極小。当然ながら最高速や加速、レスポンスに影響するのは言うまでもない。ちなみにデスモは、組み立てたシリンダーヘッドのカムシャフトを、手でクルクルと簡単に回せるほど軽い。

目的に合わせて大胆なカムプロフィールにできる

スプリングだと高回転時にカムに追従できなくなるのは“カム山の形(カムプロフィール)”も影響している。端的に言うと、カム山のバルブを開くときと閉じる時の傾斜の形が“おおむね対称”でないと、やはりスプリングが共振してバルブサージングを起こしやすい。例えば「パカっと一気に開いて、徐々に閉じる」ようなプロフィール(吸排気のオーバーラップが大きい高回転型エンジンに多い)だと、そもそもサージングが起きやすいワケだ。しかしデスモドはスプリングを使わず追従性に長けているので、カムのプロフィールの自由度も高い。コレが最大のメリットかも!

部品点数が多くなって複雑なのがデスモのデメリット

シンプルなバルブスプリングに対し、デスモはクローズ側のロッカーアームや複雑なカムシャフトなど部品点数が多い上に、クリアランス調整なども高い技術が必用。端的に見たらデメリットだが、コレを手が届くプライスで生産し、ディーラーで整備できるコトが、ドゥカティの技術力の高さを証明している。

圧倒的に高回転まで回り、ピストンスピードも速いが!?

国産スーパースポーツと比較すると、いかにパニガーレV4Rが高回転まで回るのか良くわかる。そして回すほどにピストンスピード(エンジン内でピストンが上下する平均速度)は高くなるため、レースキット装着時はダントツだが、じつはSTDならZX-10Rよりも低い。これはV4Rが超ビッグボア×超ショートストロークのためだ。ちなみにφ81mmのボアは、レギュレーションで定められたMotoGPマシンの最大ボア径と同一だ。

※この記事はDUCATI Magazine 5月号82号の記事をWEB用のまとめた内容となります。
(出典:『DUCATI Magazine 2019年5月号』

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