かつてドカは超スパルタンだった! ネモケンの750SSインプレッション!

750SS 日本車とはまったく違う!かつてのドゥカティは信じられないほど難しかった!

ビッグバイクは4気筒で育った感性に、単気筒並みにスリムな構成がライダーに優位な要素を追求した結果だと知るまでは怖さが先に立つ違和感だった。

今回は久々にネモケンによるスペシャルインプレをお届けしよう。これまでドゥカティのラインナップの中で、とりわけ思い出深い一台と語るのが750SSだ。同モデルは、現ラインナップでは考えられないほど、乗り味が個性的であったという。約40年以上前の当時のドゥカティを振り返っていこう。

1974-1977 750SS  大きな前側気筒が水平近くまで傾斜するため、重心位置に影響を及ぼすクランク位置は4気筒と比較するとかなり後ろ。これがスリムな車体のリーンを鋭くしているのと、旋回状態へ繋がる際に足元をすくわれそうに感じる要因でもある

コーナリングの追求がスパルタンな車体を生んだ

1975年のベルギーGPが開催されたフランコルシャンで、ボクは初のドゥカティを経験した。

初の世界GP、初の一般公道閉鎖レースに、知り合いが発売されて間もない話題のドゥカティ・スーパースポーツに乗ってパドックまで遊びに来てくれて、その公道コースを走って下見をして来いと申し出てくれたのだ。

そんなまたとないチャンスに小躍りしながら走り出したボクは、いきなりどう乗って良いか分からない不安にかられ、何とか1周して戻るとドゥカティ750SSを返してしまった。先ず750のツインでも1万回転も回せると雑誌に書いてあったのに、高回転まで引っ張ってもピークパワーが盛り上がるでもなく、何とも肩透かしな非力さ……それより衝撃だったのは、コーナーでリーンすると車体が倒れそうになる不安感。前輪がいつ切れ込んで滑っても不思議ではない感覚に、こんなバイクへ乗り続けたら自信喪失してしまうと、速度を落とし徐行運転でパドックまで帰ってきたのだ。

「ヨーロッパのバイク雑誌は、日本車の台頭が面白くなくて、こんな性能もハンドリングも到底及ばないドゥカティを高く評価してたんだ、許せない!」日本で雑誌の試乗でホンダCB750フォアやカワサキZ2の、コーナーでも車体が安定して乗りやすいハンドリングを知っている身からすれば、比較すらできないレベルの低さと断じる他なかった。

 

しかしその3年後、フォーミュラカー・レースでバイクから遠ざかっていた60年代の絶対的王者だったマイク・ヘイルウッドがマン島TTを、ドゥカティに乗ってホンダRCBなどワークスマシンを寄せ付けずに優勝、その凱旋レースだったマロリーパークで、マイクがホンダRCBをコーナー入り口の突っ込みでブチ抜くシーンをこの目で見てしまったのだ。

Lツインがひとつのクランクピンを、2気筒分のコンロッドが共有して、単気筒と変わらないスリムさで、ナナハンなのに400クラスの鋭いリーンが可能だとか、車体構成の優位さなど知る由もなく、このマイク・ヘイルウッドの優勝で日本車とは異次元のハンドリングを乗りこなす感性を自分でも身につけようと、その後にライダースクラブで何度も取り上げ、たまに前輪のセルフステアがバランスして鋭くリーンしながら安定して曲がっていくのを実感できるようになった。

マン島TTでベベルを乗りこなしたマイク・ヘイルウッド

’60 年代の絶対王者だったマイク・ヘイルウッドが復帰で自らドゥカティを選んだのは、ワイドなタイヤを履かず昔のリーンウイズで乗ってもポテンシャルが高かったから。しかし日本メーカーのワークスマシンを凌ぐとは誰も想像できなかった

ただ当時は日本車の高速化でタイヤがガチガチな構造となり、軽量なドゥカティを乗りにくくしていたのだが、それが851世代から空冷900も含めタイヤがラジアル化され、しなやかなトレッドと抜群の安定性でドカの乗りにくさを払拭しはじめ、世代での進化を繰り返すうちに旧くから言われていたスパルタンさはすっかり影を潜めてしまった。

とはいえ、スリムなエンジンと究極まで合理化したコンパクトな車体は、相変わらず日本車にはない感性で思わずニヤリとさせる。

エンジンレイアウトで鋭く前輪がステア・レスポンスするハンドリングに慣れてくると、シャープな向き変えポイントを旋回の初期に介在させる乗り方が身につき醍醐味も味わえる。反面、ドカの乗り方で日本車を乗ると重く鈍いハンドリングに感じてしまう

 

 

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PROFILE

ネモケン

ネモケン

根本健。75 ~78年まで世界GPに参戦。帰国後はライダースクラブ編集長として、ワークスマシンから市販車まで幅広く試乗。70歳を超えた今も最新マシンに乗り、読者にライテクを指南している

ネモケンの記事一覧

根本健。75 ~78年まで世界GPに参戦。帰国後はライダースクラブ編集長として、ワークスマシンから市販車まで幅広く試乗。70歳を超えた今も最新マシンに乗り、読者にライテクを指南している

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