ゴルフIQを高めてスコアアップ! 今すぐできるメンタルトレーニング
FUNQ
- 2018年02月28日
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ゴルフは耳と耳の間のスポーツといわれるほど、思考力がスコアメイクに大きく影響する。つまり、スイングが良くなれば、それだけで良いスコアが出るというわけでないのだ。ツアープロコーチの森守洋氏は、『ゴルフIQを高めることが上達のカギ』と話す。ゴルフIQを高める思考とはどういったものなのか? 今回はメンタルコントロールの方法を紹介しよう。
ゴルフが上手い人を自分で演じてみよう
ゴルファーにとって思い通りのショットが打てず、イライラしたり腹を立てたりするのはよくあることだろう。怒りを上手にコントロールする方法を身につけておくと、同伴プレーヤーと最後までゴルフを楽しめ、スコアの大崩れを防ぐことができる。その方法の一つが、ゴルフの上手な人をイメージし、その人になりきったつもりでプレーすることだ。松山英樹プロのような世界の超一流プレーヤーはもちろん、身近に感じられるプロゴルファーや、知り合いのシングルプレーヤーの方でも構わないので、彼らの立ち振る舞いや所作を思い描きながらプレーしてみよう。「あの選手はミスしても笑顔を絶やさないな」とか「一度カーッとなっても、気持ちをすぐに切り替えているな」、「プレーに落ち着きがあって、立ち振る舞いが堂々としているな」など色々な気付きがあるはずだ。
自分を大きく変えるのではなく、そのプレーヤーになりきってみると集中力を維持し、メンタルをコントロールしやすくなるという利点がある。練習場は『稽古場』、コースは『舞台』だと捉え、コースでは自分が役者になった気持ちで、上手なゴルファーを演じよう。
自分の心に『親切なキャディ』を雇う
ゴルフは『心の中に宿る、もう一人の自分と会話する』ゲームともいえる。ミスして腹を立てたあげく、いつまでも怒りをコントロールできないままでいる人をよく見るが、これはもう一人の自分とケンカばかりしているから起こることだ。もう一人の自分をキャディにたとえて考えてみてほしい。あなたが右にスライスを打ってOBに打ち込んだとする。男性のキャディだとすれば、「チェッ、ほんとに下手くそだな!」。女性のキャディなら「あなた何をしているの? ダメね~」。こんな風に言われたら、あなたはどんな心理になるだろうか?「うるさい、だまれ!」、「お前みたいなキャディなんかいらない、帰れ!」などと怒鳴りたくなるでだろう。実際に、こんな具合に自分の心の中にいる二人が互いに怒鳴りあっている状態でプレーしている人はとても多いのだ。
これが親切なキャディだとしたら、どうだろう? 「ドンマイ、まだ先があるよ」、「プロでもミスするのだから全然大丈夫!」とやさしく声をかけてもらえたら、一時的に感情的になったとしても「クヨクヨしても仕方ない!」、「めげずに頑張ろう! 」といった前向きな気持ちになれるはず。ダメなキャディでは、自分をどんどん追い込んでしまうことになる。やさしくて頼もしい優秀なキャディを心の中で雇っておくことが、メンタルを上手にコントロールする上でとても大切なのだ。
コースを俯瞰して見ると心にゆとりが生まれる
最近ではドローンによる画像を多く見かけるが、こうした『俯瞰の目』をラウンドに生かすのも良い方法だ。フェアウェイを歩いている時も、乗用カートでグリーンに近づく時も、自分の目線でコースの情報を得るだけでなく、俯瞰の目でコースを眺める習慣をつけておこう。そうすればコースの状況だけでなく、自分の立場や同伴プレーヤーの立場も見えてくる。相手がどう攻めようとしているかが想像できるし、相手の心理も読めてくるのだ。その結果、自分のプレーを組み立てやすくなり、心理的にも余裕が生まれて、自分を優位に立てることができる。これは上手なコースマネジメントにも直結する。
ゴルフの上手い人や、勝負に強いプレーヤーは、自分の主観だけでコースの状況を判断することはなく、まるでドローンのようにコースの状況を俯瞰的な目線で客観視し、緻密な戦術を立ててスコアメイクを有利に進めているのだ。
「ボギーの尊さ」に気がつけばスコアは必ずアップする
せっかくパーオンしたのに「また3パットだ~」と嘆いてばかりいる人は、自分はパッティングが下手だと思い込んでないだろうか? そうではなくて、問題はボギーで上がることを軽視しているところにある。1メートルのパーパットを惜しくも外してしまうと、9割以上のゴルファーは「ちぇっ、ボギーかよ」という心理になることだろう。ところが、5メートルのボギーパットが入ったら、「ナイスボギー!」となる。同じボギーなのに、この違いは何だろうか?
18ホールのすべてのショットは等価値だが、場面や状況ごとに感情の起伏がどうしても生まれる。でもボギーで上がれることは、本来はとても喜ばしいことであり、スコア的にも立派なのだ。ボギーを軽視する人は、1メートルのパーパットを打つ時に、無理に入れにいこうとしてしまい、結果的にタッチが合わず、大オーバーしてボギーすら取れなくなってしまうケースが多いのだ。『ボギーでも良い』と考えれば、パーパットに対する考え方が変わる。カップの近くに寄れば良いと思考を変えるだけで、結果的にパーの確率も上がるのだ。
場面や状況に応じて、『パーの設定』を変える
スコア100が切れない人は、18ホールの全部を『ボギーで良い』と考えると攻めに無理がなくなり、安全かつ堅実なプレー運びができるようになる。自分のレベルに応じたパーの設定ができる人は、スコアをまとめるコツが早くつかめる。18ホールすべてボギーならちょうど90になり、こうしたプレー運びを実行することが、実は90切りを達成するための基本路線になる。
すべてのショットが自分の思い通りに打てるわけではなく、ティーショットを林の中に打ちこんだり、急斜面に止まったりとピンチを招くことも一度や二度ではないはずだろう。ダブルボギーやトリプルボギーが出るのは仕方のないことで、大事なのは焦ってミスを取り返そうとしたり、「もうダメだ」と諦めたりしないことなのだ。林から脱出させる時は、何とかパーを取ろうとしてグリーンの方向に打とうとするゴルファーが多いが、イチかバチかの作戦は通用しない。ここは『5』のボギーを自分のパーと考えて、いったんフェアウェイに戻して3打目でグリーンを狙おう。そこでダフってしまったら、今度は『6』のダブルボギーを自分のパーに置き換えるのだ。このように状況に応じて、パーの設定をどんどん変えれば、一打を大事にする感覚が芽生えるのだ。
今回紹介したメンタルコントロール術は、どれも簡単に取り入れることができるものばかりだ。ゴルフIQを高めてスコアアップにつなげてほしい。
●森 守洋(解説)
1977年生まれ、静岡県出身。高校時代にゴルフを始め、1995年に渡米。サンディエゴにてミニツアーを転戦しながら腕を磨く。帰国後、陳清波に師事。現在は東京都三鷹市内の「東京ゴルフスタジオ」で多くのアマチュアを指導する傍ら、原江里菜らツアープロのコーチも務めている。
(出典:『EVEN 2018年3月号』、文:三代崇、イラスト:庄司猛)
(ヤマダタケシ)
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