【現地リポート】ニューヨークのゴルフ場は今
田辺安啓(JJ)
- 2020年06月13日
乗用カートが主流のアメリカで歩きのプレーは逆に新鮮
新型コロナウイルス(COVID-19)において、一時は世界のホットスポットになったアメリカ・ニューヨーク州。ゴルフ場も、昨年の全米プロの会場だったベスページやトランプ大統領の会社が所有するフェリーポイントなどほとんどが営業を中止したが、5月上旬から感染者の減少などに合わせて徐々に再開されている。そんな中、ニューヨーク州の西隣にあるニュージャージー州の病院でフィジカルセラピストとして働く遠藤康男氏からゴルフのお誘いを受けた。
ご一緒したのは、マンハッタンから北へ約70キロの位置にあるプライベートクラブの「アングルブルック・ゴルフクラブ」。営業再開直後だったが、平日朝10時のスタート前にもかかわらず駐車場には車がほとんどない。クラブハウスは立ち入り禁止で、トイレだけが開いている。クラブハウス前には水のボトルとスコアカードが用意されていて、各自が自分で持っていく。カートは使用禁止で、練習場も閉鎖されたままだった。クラブハウスの前にいるとマスク姿の従業員がスタートの受付を屋外で行ってくれた。見かけはイカツイが、マスクの下から精一杯の笑顔で接してくれる対応が嬉しかった。
乗用カートによるプレーが一般的なアメリカで歩きのプレーができるのは逆に新鮮。ピンフラッグはさわらずに挿したままで、カップからボールが取り出しやすいように、ピンの根元にスポンジが入れてあった。バンカーレーキはなく、各自が足で砂をならすのがニューノーマル。クラブハウス付近ではマスクの着用が必須だが、コースに出てしまえば特におとがめなし。練習なしで久々のラウンドを始めるのかなり苦しいものがあったが、それでも自然の中でプレーが楽しめるのはこの上ない喜びだった。
「マスクをして2mの距離を保てばゴルフプレーは問題ありません」(遠藤)
遠藤氏はリハビリ治療を行う勤務医だが、コロナ患者の急増に対応するために急きょ増設されたICUで勤務してほしいという打診を病院側から受けた。未知の病に対応しなければならない不安から大勢のスタッフが異動を拒否する中、遠藤氏は打診を受け入れて3月9日からコロナ対応の最前線であるICUに入った。
「2日前まで普通にスマホを見ていた若者が突然症状が悪化して亡くなったり、1日で十数人が亡くなったり、そんな毎日でした。専門医もナースもスタッフも自分ができることをするだけで精一杯。すると、コロナ以外の患者さんの様子も見るのが難しくなる。それこそが医療崩壊の現場でした」(遠藤氏)
今では患者数も減って落ち着きを取り戻し、趣味のゴルフを楽しむ余裕ができたという。そんな遠藤氏にPGAツアーが再開することについても聞いてみた。
「問題ないでしょう。今回のコロナは未知のウイルスなので、専門医といえども明確な知識がありませんでしたが、経験を積んで、ある程度の様子はわかりました。結核のように空気感染はせず、あくまでも接触感染がほとんどなので、その点を注意していれば大丈夫なんです。マスクをして2mの距離さえ保てば感染リスクはほとんどありません。ゴルフは当然大丈夫ですよ。手の洗浄や服の着替えを徹底する医療関係者の死者が割合として少なかったことも、それを証明しています」(遠藤氏)
久々のラウンドで激務の疲れを癒せた様子の遠藤氏。アメリカでは、当たり前にゴルフを楽しめる日常が少しずつ戻り始めている。
遠藤康男
フィジカルセラピスト。米国の大学で運動生理学の修士号を取得。現在はハッケンサック大学メディカルセンターグループの総合リハビリテーション科にてフィジカルセラピストとして勤務している。
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PROFILE
米国ニューヨーク在住のゴルフカメラマン。PGAツアー、LPGAツアーを追いかけ続け、誰よりも近くでアメリカのゴルフを見続けている。