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政府も推進!「ワーケーション」にゴルファーが注目すべき理由

最近、話題の言葉「ワーケーション」。ワーケーションとはワーク(work)とバケーション(vacation)という言葉から生まれたアメリカ発祥の概念だ。本来はいわゆる“リトリート”のような職場から、離れたリゾートでチームがプロジェクトに集中し成果を挙げる手法。それがITの進化で、PC一台で仕事ができるプログラマーなどのギグワーカーを中心に、Wifi環境の整ったところでデジタルツールを駆使し、場所を選ばず心地良い場所で仕事をするスタイルとして知られるようになった。そんな中、世界的パンデミックによる外出自粛の号令は、ここ日本でも、企業のリモートワークを急速に普及させた。これによりホワイトカラーを中心とする会社員が通勤ラッシュからの解放と、働く場所を選択できる自由を手に入れた。つまりワーケーションは、憧れの働き方から今現実的なライフスタイルとなりつつあるのだ。

本誌では「EVEN 2020年9月号(8月5日発売)」において、今話題のワーケーションを採り挙げ取材した。その理由はこの働き方がゴルファーにとってすこぶる魅力的であると考えたからだ。当該企画ではゴルフコーチであり、自身も国内外でワーケーションを実践してきた大矢隆司氏に、ゴルフとワーケーションについて解説いただいている。だが、限られた誌面の都合上、掲載できたのはほんの一部。ここでは、氏のワーケーションに関するインタビューのほぼ完全版を紹介したい。これを読めば、ワーケーションがリゾートで休暇をとりながら仕事をする、ということが魅力のほんの一端であることがお分かりいただけると思う。

大矢隆司さん

ゴルフ活動家。15歳で単身豪州にゴルフ留学。25歳でコースレッスンのマッチングサービスを創業、その後、MBAを取得。温暖なアジアのリゾートを中心にデジタルデバイスを駆使したリモートワークを実践中。大矢隆司公式ブログ https://takashioya.com/

Q.大矢さんの経歴を教えてください

「ジュニア時代にゴルフを始めて、15~18歳までオーストラリアにゴルフ留学をしていました。その頃から日本とのやり取りはEメールなどですることが多く、インターネットに馴染みがありました。帰国後、25歳の時にコースレッスンの会社を起業しました。東京、名古屋、大阪のゴルフコースと契約を結び、そこにコーチを派遣、インターネットで集客したゴルファーをマッチングするというビジネスモデルです。コーチは基本的にゴルフ場の近くに住んでいるので、当然、オフィスに集まってミーティングや研修をするといったことができなかったので、創業した2005年からインターネットを使ったリモートワークをしていました。当時まだ少なったバーチャルオフィスでの働き方を早くから続けてきたこともあり、現在でも国内外でデジタルワークによる働き方をしています」

コロナの時代以前には東南アジア・タイでのワーケーション生活をつづけいた大矢さん。写真はタイ王室御用達のリゾート、ホアヒンでの仕事風景

Q.そもそもワーケーションってなんですか?

「ワーケーションはワーク&バケーションという言葉がその発祥と言われます。元々はアメリカの企業が始めた、役員合宿やリトリートと呼ばれるものがその原型で、プロジェクトチームやマネージメントチームなどが2泊3日程度の行程でリゾートに出かけ、外部の情報や普段の職場から離れて、ディスカッションに集中したり、あるいは、特定のサービスをローンチするために1週間程度、リゾートに缶詰めになってやるといったことが、アメリカ発祥のワーク&バケーションでした。

その流れを受け、日本の一部大手企業でも導入がされ始めるのですが、日本において当初のワーケーションは有給休暇の消化の一環としての意味合いの強いものでした。日本政府が進めるワークライフバランス、働き方改革の中、2019年4月から有給消化に対して罰則(※年に10日以上有給休暇を付与される従業員に対して、企業側は最低でも5日は取得させなくてはいけない)が科せられることになることを踏まえ、長期休暇を延長し、有給を消化しながら、休暇先からも仕事ができるような仕組みを採り入れる企業が出てきた。仕事に支障を来さずに有給消化を促す、当初はそんな仕組みだったのです。これを初期の日本型ワーケーションとするなら、現在はいわゆるギグワーカーと呼ばれる人(プログラマーやエンジニア、デザイナーといったクリエイター職)たち、どこに行ってもパソコン一台があれば、仕事ができる人たちが気候が良く、物価が安い快適な場所で仕事をする、現在ワーケーションとして知られるスタイルとなりました。ワーケーションとは、場所を選ばずに働ける人達が、心地良い場所ややりたいことがある場所で仕事をする、というスタイルへと変容したのです」

若くしてラウンドレッスンのマッチングサービスを起業。自身もティーチング資格をもつ。

Q.これまでワーケーションして印象に残ったエリアを教えてください。

「そうした人達に人気のエリアが東南アジアではタイのチェンマイで、自分も約1ヵ月ほど滞在したことがありましたが、コワーキングスペースに行くと9割近くは外国人。タイといえば首都バンコクを思い浮かべますがチェンマイはバンコクに比べて物価が安くて治安も良く、気候も涼しく過ごしやすい。欧米のギグワーカー達が、母国に冬を迎えると、生活費が安く、気候の良いこうしたリゾートへ長期滞在するのです。自分も今はコロナ禍もあり、国内の中部地方で暮らしているのですが、夏は暑いので北海道など涼しい場所で暮らし、冬は東南アジアという暮らしを最近まで続けていました」

右)ワーケーションで大矢氏も滞在したタイ・サメット島。左)タイのビーチリゾート・パタヤのホテル

Q.ゴルフとワーケーションをするメリットを教えてください

「好きな場所で働きながら、好きなことをできるのが、ワーケーションの最大のメリットです。夏の暑い時期は涼しい避暑地で過ごし、反対に冬は暖かい南国で過ごす。ゴルファーなら、ゴルフ場が近くにあるリゾートで働けば仕事終わりや仕事前にちょっとゴルフ、といったことが無理なくできるのです。

今回のコロナ禍を経たことで、日本企業に在宅勤務が急速に広がりました。でも、実は家だと仕事に集中できる書斎のような環境がある人は決して多くはないはずです。これまで通勤時間でロスしていた時間がなくなったのに宅急便との応対やついTVなどを見てしまったり。家族が一緒であれば、掃除や洗濯、食事の用意など家事分担などもあると思います。在宅勤務で大変なのはこのオンオフの切り替えをどうするかにありますが、ワーケーションで仕事に集中できる環境に身を置けば、そうした問題も解決できる。自分がタイでワーケーションをしていた時は、家事をヘルパーさんに託し、その分の時間を仕事に振り分け、有効に活用していました。自宅や宿泊先でなくても、Wifi など環境の整ったコワキングスペースを使って仕事をすれば、生産性は上がります。

スポーツに限らず、楽器や英会話でもそうですが、重要なのはやってきた年月よりも頻度や回数です。ワーケーションでゴルフが身近にある環境で暮らしながら、仕事終わりに毎日練習、ラウンドの頻度が上がれば、ゴルフは確実に上達します。仕事のある平日にプレーができるので、当然1ラウンド当たりのコストも下げられます。

時間が限られた休暇では予定を詰め込んで行動しがちです。ワーケーションであれば、普段ならできないような予定外の行動をする余裕も生まれる。例えば、普段では行かないコースを訪れるなど、一見無駄とも思える行動から、新たな発見があるかもしれません。同様に、出会うはずのなかった人との出会いもあるでしょう。

ワーケーションをリゾートで休暇をとりながら仕事をする、と単純に捉えてしまうのはもったいないことです。自分はワーケーションを「ワーク」と分けた「エーション」と捉えています。この“エーション”はバケーション以外にも、「エデュケーション」や「リラクゼーション」と捉えてみても良いです。ゴルフリゾートで仕事をしがなら短期的に腕を磨いてもよいし、今後、パンデミックが収束したら、海外で語学を学んでも良い。今は、人生100年時代ともいわれます。定年した後も豊かに暮らしていくためには、動ける意欲も体力もある30~40代の内から、自分の生産性を高める努力が必要です。ワーケーションを生涯学習の一環と考えると、単に働く、休暇をとる以上の価値を見出すことができるのです」

”特別な夏”が叫ばれる2020年夏。本誌ではスペースの都合上お伝えしきれなかった、ゴルフとワーケーションに関わる記事を毎週アップしていくので、引き続きご注目いただきたい。

右)タイ北部の街、チェンマイのコワーキングスペース、左)タイの首都バンコクにあるコワーキングスペース

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EVEN 編集部

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スタイリッシュでアスリートなゴルファーのためにつくられたマガジン。最旬のゴルフファッション、ギア、レッスン、海外ゴルフトリップまで、独自目線でゴルフの魅力をお届け。

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