第150回全英オープン開催地、セント・アンドリュース オールドコースのキーパーソンに聞いたスペシャルインタビュー
EVEN 編集部
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“ゴルフの聖地”での全英オープン開催を目前に控えより一層盛り上がりを見せるゴルフアパレルブランド「St ANDREWS」を通じて現地で手腕を振るうキーパーソンにインタビューを実施した。
「セント・アンドリュース」スペシャルインタビュー
世界で唯一“ゴルフの聖地”の名を正式に冠することを許されたゴルフアパレルブランド「セント・アンドリュース」。コース同様、格式を感じるデザインをベースに、現代的な要素をミックスしたアイテムは、上質を知る大人ゴルファーを中心に支持を集めている。今後のアイテム展開に目が離せないのは勿論のこと、大会開催を目前に控えたこの時期に、「セント・アンドリュース」のブランディングにも携わり、セント・アンドリュース・リンクスにある7つのコース全てのコマーシャルディレクターを務めるダニー・キャンベル氏に、特別に話を伺った。
Commercial Director/Danny Campbell(ダニー・キャンベル)
ハロッズのマーケティングから転身し、20年以上セント・アンドリュースに在籍。現在はコマーシャルディレクターとして、渉外担当を務める。
記念すべき第150回全英オープンを開催するにあたり、率直な気持ちは如何でしょうか?
「今回開催する全英オープンの準備については、本来であれば2021年に開催する予定だったこともあり、2018年にスタートしています。私が大会運営に参加するのは今回が5回目で、ミレニアムに沸いた2000年が最初となります。今回は7年ぶりとなりますが、通常であれば5年置きにオールドコースで全英オープンが開催されるので、準備という点では充分に慣れています。そういった意味でいうと、何か特別なことを行うわけではなく、これまでの同大会開催と変わらず、開幕に向けて最善の準備を行っています。個人的には、長い歴史を誇る全英オープンでは、常にその時代を代表する世界中のトップ選手が、オールドコースでプレーすることに特別な想いを抱いて集まって来てくれるので、非常に楽しみな気持ちもあります。それと同時に、私だけでなく、一緒に働く同僚や家族、セント・アンドリュースをホームタウンとして暮らす住人を含めた多くの人々が、全英オープンが開催されることを名誉に感じています」。
開幕が近づくに連れ、徐々に街全体のムードの高まりを感じますか?
「そうですね。セント・アンドリュースとして、このような素晴らしい大会を開催できることは勿論ですが、今回の第150回全英オープンは、スコットランドという国として、歴史上1番大きなスポーツ系のスペクタクルなイベントになると思います。そんな大きなイベントを少しでもサポートできることは、非常に名誉なことだと思っています。あともう一つ、遠くから街を訪れてくれる観客の皆さんや選手達が、この地で過ごす一週間をエンジョイしてもらって、出来れば、一生忘れられない思い出も持って帰ってくれることを私達は目標にしています」。
世界が注目する一大イベントになりますよね。
「まだ大会が始まっていないので、どれほどの盛り上がりになるかは分かりませんが、観戦需要が非常に強いという予想から、今大会では初めての試みとして当日券の販売を無くし、全ての入場券を事前販売にしました。一週間に訪れる観客数を29万人と予想をしていましたが、オンライン抽選の申込数は130万人。これまでの最多観客数は、タイガー・ウッズが優勝した2000年大会の約24万人だったので、予想を大きく上回る需要となりました」。
コース自体の準備という点では如何でしょうか?
「現実的な話をすると、2020年からコースの準備を行っているのですが、距離を長くしたり、バンカーを新設したり、グリーンを改造したりといったコース改修は行っていません。2015年の開催時と比較して、少なくとも観客の目から見るとあまり変化は無いです。大きな作業というと、プレーをする回数の少ない冬の間に、バンカーに手を入れることです。バンカー自体の形状を変えたりすることは一切ないのですが、フェイス面を整備します。ご存じのように独特な形状のポットバンカーの砂を取り、何層にも積み重なって垂直な壁状になったアゴの砂や芝を入れ替える作業を行います。80個ある全てのバンカーを綺麗に整え直すのは、非常に大きな作業となります。普段のプレー時との違いというと、フェアウェイを少し狭くします。ラフ自体を長くするわけではないのですが、根本の部分をより厚く密集した状態にする作業を行っています。通常のプレーでは、短く刈り込まれたフェアウェイからのショットよりもラフの方が楽にショットできることも多々ありますが、トーナメントセッティングのラフは、そこが大きく異なります」。
大会開催期間前後での一般プレーは、どのようになりますか?
「大会開催の3週間前までは一般プレーが可能ですが、芝生を保護するために、去年の冬から、ショットしたボールが集まるポイントなどにロープを張って、そのエリアには入らないようにして、小さなマットを置いた上にボールを置いてショットしてもらうようにしています。とはいえ、そういうエリアはコース内に8ヶ所しかありません。その他は普通にプレーが可能です。遠くから訪れるゴルファーのプレーとは別に、いわゆるクラブ競技がありますが、全英オープン開催の年は、オールドコースではクラブ競技を行わず、ニューコースやジュビリーコースなど、セント・アンドリュース・リンクスの他のコースで行うようになります。例年、クラブ競技の日程となっていた日は、開催年に限りコースをクローズして細かなコース整備を行う作業日に充てて、一生懸命作業を行います。大会開催後の一般プレーは、最終日の2日後、火曜日から基本的にプレーを再開します。今年については、2020年にプレーが出来なかったゴルファーの大半がキャンセルすることなく、今年の大会開催後のプレーを熱望されたこともあり、プレー枠がほぼ埋まっているため、新規の一般プレーは難しいというのが現状です。
コース管理の他に運営面でケアするところはどうでしょうか?
「全般的なインフラの整備が大切なポイントとしてあります。観客が観戦するグランドスタンドやテント、非常に大きなホスピタリティパビリオンの設置など。場合によっては隣接する他のコースの一部をテントヴィレッジに使用したりするので、そのあたりの調整も行います」。
少し運営から離れた質問となりますが、
ご自身がこれまでの全英オープンを振り返って印象深いシーンというと?
「一番に思い浮かぶのは、まだ私が10才だった1984年の全英オープン。最終ホールでセベ・バレステロスがパットを沈めてガッツポーズをしたシーンが目に焼き付いています。その後、力強いガッツポーズが彼のトレードマークになりましたよね(笑)。あのポーズが忘れられません。
次に挙げるとすれば、仕事を初めた2000年大会です。タイガー・ウッズが勝利した同大会は、ミレニアムとタイガー効果が重なったことで人が大挙して、今振り返ると少しクレイジーでもあり、素晴らしさもあった大会でした。一度もバンカーに入れることなく、余裕を持って勝利したプレーを目の前で見れたのは印象に残っています。また、違う意味で非常に思い出深いのが、ゴルフ界のレジェンドが最後のメジャー出場、卒業の場としてコースに立つ姿ですね。アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラスがスウィルカンブリッジに立った時、ちょうど17番グリーンに居たので、皆に“さよなら”と手を振ったシーンを見つめて感慨深い思いを抱いたのを覚えています。今大会では、そういう最後の選手の出場はありませんが、また印象深いシーンが生まれるかも知れませんね」。
世界の名立たるトップ選手達が特別な想いを胸に抱いてコースに立つ、セント・アンドリュース オールドコース開催の全英オープン。第150回の記念大会となる今年の“ゴルフの聖地”では、どんな名シーンが生まれるのだろうか。現地での観戦は叶わずとも、目を離さずにはいられない。
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写真○AP,PA Images,Mary Evans Picture Library/アフロ、Matthew Harris,青木紘二/アフロスポーツ
文○清水隆幸(EVEN編集部)
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スタイリッシュでアスリートなゴルファーのためにつくられたマガジン。最旬のゴルフファッション、ギア、レッスン、海外ゴルフトリップまで、独自目線でゴルフの魅力をお届け。
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