「世の中になかったから 作ることにしました」「MOE86」に込められた想い
フクダトモオ
- 2024年06月19日
TREND_04クラブが劇的に振りやすくなる!「MOE86」に込められた想い
ブランド名の「MOE86」は、“もう、ええやろ”と読む。一人の悩めるゴルファーが自分だけのために作ったクラブが、多くのゴルファーの救世主になった。冗談のような開発秘話を取材した。
※EVEN7月号「パーツブランドのシン・流行」からの抜粋
世の中になかったから作ることにしました
43インチのシャフトに230㏄の軽量ヘッド
「16〜17年前に48インチの長尺ドライバーを使っていたんです。たしかに飛びましたが、その代わりにアイアンショットやアプローチ、パッティングがボロボロに(笑)。長いクラブで飛ばそうとすると、どうしても右手を使うようになる。その動きが短いクラブでは良くないほうに働くんですね。長尺が流行り始めたころに、右手を使わないクロスハンドグリップや太めのグリップが流行ったのは、そのあたりが影響していると個人的には思っています」
そう話すのは「MOE86」の開発者である浮世憲治氏。悩んだ末に彼は、ドライバーの長さを44インチにカットした。軽いヘッドに硬いシャフトの、いわゆる短尺ドライバーにしたわけだ。それを使い始めたところ、アイアンもショートゲームも劇的に改善したという。「やっぱり短いドライバーのほうが振りやすいですし、セッティング全体の流れも良くなりますね。ただ、460㏄のヘッドは44インチだとデカすぎる(笑)。そもそもヘッドが大きくなったのはクラブが長くなったから。短いシャフトなら小さいヘッドでええやろと」(浮世)
飛距離に固執しなければゴルフはもっと楽しくなる
昔のモデルを探せば小さいヘッドはある。しかし、どれもヘッド重量が重かった。加えてロフトが立っているため、今のボールだとスピンが入らないのだという。浮世氏は試行錯誤の末に、43インチのシャフトに230㏄の軽量ヘッドが最良との結論に至る。しかし、そんなドライバーは市場には存在しない。それなら自分で作ってしまおうと考えた。こうして「MOE86」のドライバーが誕生した。そのヘッド重量は185g前後という軽さ。現在主流のドライバーのヘッド重量がスリーブ込みで200gを超えることを考えると相当軽い。これについても浮世氏は、「体力や技術があるプロや欧米人は重いヘッドを扱えますが、我々はそうはいかない。でも、ヘッドが軽ければプロのようにクラブを扱えるんです」と話してくれた。
ドライバーに続き、アイアン、フェアウェイウッド、ウェッジを開発し、ラインナップは一応の完成を見た。「MOE86」のクラブは現在、松本抵三氏が代表を務めるセレクトショップ「CLUBHAUS」の工房でのみ取り扱っている。「私も使っていますが、たしかに一般的なクラブに比べると一発の飛距離では劣ると思います。でも、その違いはせいぜい45インチと43インチという長さの違いによるものでしかなくて、それ以上に『MOE86』はミート率が上がって方向性が安定するので、結果的に平均飛距離は延びますね。ドライバー以外のクラブも同じコンセプトで作られているので、クラブによってスイングを変えなくて良いのもポイントです。とにかく振りやすいので、一度使ったら手放せなくなります」(松本)
飛距離に固執せず、“これぐらいでええやろ”と考えることができれば、コースの攻め方を考えたり、仲間との会話やコースの景観を楽しんだり、ゴルフの楽しみが広がることは間違いない。MOE86は、ゴルフの魅力を再発見させてくれるクラブなのかもしれない。
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PROFILE
EVEN / EVEN副編集長
フクダトモオ
1973年生まれ。業界紙記者、フリーライター、ゴルフ週刊誌編集を経て枻出版社へ。187センチの長身で、自称“用賀のビッグイージー”。スイング理論からPGAツアー、ギア、コース、さらにはゴルフ女子に至るまで守備範囲は広い。ベストスコア78、平均スコア90。
1973年生まれ。業界紙記者、フリーライター、ゴルフ週刊誌編集を経て枻出版社へ。187センチの長身で、自称“用賀のビッグイージー”。スイング理論からPGAツアー、ギア、コース、さらにはゴルフ女子に至るまで守備範囲は広い。ベストスコア78、平均スコア90。