エポンゴルフの旗艦モデル AFツアーMBが受け継ぐもの
EVEN 編集部
- 2024年09月30日
継承と創造
一度はマイバッグに入れたいと思わせる存在、マッスルバックアイアン。それが軟鉄鍛造の雄「エポン」の旗艦モデルとなればなおさらだ。伝統を継承しながらも、新世代へ引き継がれた〝旧くて新しい〞を紐解く。
NEW AF-TOUR MB
同社のツアー仕様モデルである「AF-TOUR」のマッスルバックモデル。軟鉄鍛造ならではのシェイプやぶ厚い打感、仕上げの美しさに加え、重心位置をフローさせた偏肉厚設計などの先進性を備える。シャフト/重量(g)はN.S.PRO MODUS³ TOUR 120(S)で、重量は413g(#5)。参考価格は6本セットで204,600円。9月20日発売予定。
意匠
初代および先代モデルでは重心位置調整に寄与していた「溝」を廃止し、工芸的な鏡面仕上げをバックフェースの偏肉部に残しつつ、よりシンプルで光の反射を抑えるサテン仕上げをメインに採用。これにより、打感や視覚面での重厚さを高めたいというクラフトマンの意見が反映された。
打感
軟鉄鍛造の柔らかな打感と操作性をより感じられるよう、インパクトエリア周辺のフェース板厚を前作と比較して拡大。炭素の含有量が少なく、ソフトなS20C軟鉄鍛造素材を採用し、製品公差が極めて少ない精緻な鍛造技術を活かして打感を徹底的に追求している。
アイアンの旗艦モデルにマッスルバックを据えるゴルフクラブメーカーは少なくない。想定ユーザーがアスリート中心で、変え過ぎても変わらな過ぎても支持されず、量販モデルに比べ採算性にも劣る。それでもマッスルバックがゴルファーの憧れの対象であり続けるのは、ツアープロが手にする本物感や、ゴルフクラブとしての完成された美しさなど、制約の中にも自社の技術や感性のレベルが如実に現れるフィールドだからなのだろう。
世界のゴルフクラブメーカーの軟鉄鍛造アイアンをOEMで数多く手掛けてきた「遠藤製作所」。そのプライベートブランドであるヘッドパーツブランド「エポンゴルフ」の競技向けモデル「AF-Tour MB」も、そんな現代のマッスルバックアイアンを象徴する一本だ。手掛けていたのはツアープロや業界関係者には広く知られた〝神の手〞を持つマスタークラフトマン山宮秀一氏。エポンはもちろん、OEMで国内外の名器と呼ばれるアイアンのマスターヘッドを削ってきた名匠だ。実はそんな彼も昨年、惜しまれつつ現役を引退した。だが、エポンゴルフは数年前からこの事態を想定し、技術の継承を行ってきたという。この秋リリースされる最新のAF-Tour MBは、遠藤製作所のゴルフ事業部で腕を磨き、世界中のゴルファーを納得させる技と感性を習得して、後継者となった新任マスタークラフトマンの、エポンゴルフでのデビュー作であるという。プロフィールなどは非公開という新任クラフトマンが、ブランドの旗艦モデルをいかに手掛けたのか本人に聞いてみた。
「師匠が作ったものを真似て作り、確認し、修正する、といったことを何度も、何年も繰り返して技術の習得に励み、感性を磨いてきました。本作は2022年初めに開発がスタートし、マッスルバックアイアンの肝である打球感を前作以上に向上させることを命題としながらも、仕様やデザインはすべてクラフトマンである自分に委ねられました。歴代モデルはエポンの旗艦モデルに相応しいアイアンではありましたが、個人的には、打球感とデザインの重厚さに少し物足りなさを感じていました。また前作以上に振り感に統一感を持たせることを改善点とし、ブランドを象徴するモデルとして、バックフェースの見た目の良さと、構えた時の違和感のなさも意識したい点でした。以上を見直すことで、より良いものになる確信があり、企画側に提案し承認してもらいました」
偉大な前任者からバトンを受け取った初仕事が、アイアンの旗艦モデル。通常なら尻込みしそうだが、彼のクラフトマンとしての自信と確信は、AF-Tour MBを見事に新世代へと格上げしてみせた。まず目につくのは、よりシンプルな造形となったバックフェースだ。これは課題だったぶ厚い打感を狙ったものであると同時に、初代から続く番手別フロー設計の伝統を継承するという命題を実現したものであるという。
「自分が作成した造形マスターヘッドを元にCADによる重心設計を行った後、最終的に0.1ミリ単位の重心の微調整は研磨による手作業で整えています」
当代きっての名匠と呼ばれたマスタークラフトマンが心血を注いだ旗艦モデルに、大規模な改修を行いながら、軟鉄鍛造アイアンの最高峰とも呼ばれるエポンのマッスルバックアイアンに相応しい性能と見た目を刷新して見せた新任クラフトマンによる意欲作。伝承された感性をぜひ感じてみてほしい。
2008 初代
鍛造技術の粋を集めたエポンゴルフの軟鉄鍛造アイアン旗艦モデル。一見、単一素材の軟鉄(S20C)によるコンベンショナルなフラットバックアイアンだが、バックフェースの溝形状と上部と下部の肉厚を変化させることで、重心位置を長い番手では短く低く、短い番手では長く高くフローさせる構造を他社に先駆けて採用した。
2018 第2世代
初代で評判だった切れ味鋭い日本刀のようなミラー仕上げの外観や、番手別の重心フロー設計といったテクノロジーを踏襲したブラッシュアップモデル。想定ユーザーのニーズを考慮し、ヒール側にやや厚みを持たせることで、打感の向上と短い重心距離設計を実現し、操作性の向上が図られた。
2024 第3世代
遠藤製作所ゴルフ事業部で技術を磨いた新任担当者が、エポンの軟鉄鍛造アイアンに求められる性能を再定義したツアーモデル。インパクトゾーンのフェースの厚み増、シャープなブレード、番手別の重心フロー設計、スピン量を安定させるレーザーミーリングなど、伝統とモダンが共存する新世代モデルだ。
重心
短い番手ほどフェース長を長く設計することで安心感を担保。フェース長が異なっていても番手ごとの振り心地を均一化するため、各番手のバックデザインを細かく調整。写真上は#5、下はPWの形状。見た目と振り心地を統一。
形状
AF-TOURシリーズならではのシャープな顔はそのままに、前作比較でより洗練された切れ味鋭い形状に。ブレードの角を面取りし、視覚的な薄さを演出。さらに、トゥからヒールにかけてやや丸みを帯びたブレードラインをストレート化している。
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PROFILE
EVEN 編集部
スタイリッシュでアスリートなゴルファーのためにつくられたマガジン。最旬のゴルフファッション、ギア、レッスン、海外ゴルフトリップまで、独自目線でゴルフの魅力をお届け。
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