ゴルフ場運コンサルタント新井博のREFINE the Golfclub
水上貴夫
- 2024年11月28日
ゴルフ場運営コースコンサルタント新井博氏が改修を手がけたコースを紹介する連載。
合理的で先進的かつダイナミックなその手法を微に入り細に穿ってお伝えする。
コースクオリティ改善
稀代のゴルフ場運営コンサルタント新井博氏が再生を手がけたコースを紹介するこの連載。先月から続いて紹介するのは兵庫県宝塚市の「HIBARI GOLF」。このゴルフ場の代表を務めるのは新井氏その人である。
長年に亘るコースメンテナンス業務の経験を生かし、ゴルフ場運営コンサルティング会社「PFJ」設立。アメリカで学んだ理論や技術と日本人の持つきめ細かさを融合した独自のコース管理哲学で国内30コース以上を手掛け高い評価を受ける。
さて、今月のテーマはコースの〝クオリティ〞だ。芝のメンテナンスを本業とする氏が最も注力するのがコンディション。常日頃、「芝のコンディションが悪いコースへは二度と行きたくないと思うもの」と話す。しかしこのゴルフ場は少し事情が違った。状況はもっと悪かったのだ。
「ここを引き受けた時、芝のコンディションだけでなくアチコチがボロボロだったんです」。コース内のトイレや茶屋、ティグランドの人工芝に至るまで、酷い有様だったという。「どこもかしこもボロボロなコースは気分が萎えますよね。まずはそこから手を付けました」。
コース内のトイレを建て替え、茶屋を修繕してペンキを塗り、人工芝も上質なものに張り替えた。流石なのはそれらをほぼDIYで行ったところだ。余計なコストは極力かけない。一方、芝の状態の改善にも着手。土壌のpH値を測り、最適なコンディショニングを行う。加えて最新型のメンテナンスマシンも導入した。「最新の機械を一気に入れました。そうすることで効率が上がりより手入れが行き届きます。こういうところはコストをかけるべき」とは、やはりゴルフ場運営のキモを知り尽くす新井氏ならではの言葉だ。
効果は当然、てき面。芝の状態が一気に改善しただけでなく作業効率も劇的に向上した。何しろ、約2800ヤードのミドルコースとはいえ、異様にアップダウンの激しい18ホールズを、1日当たり3〜4人のスタッフだけで管理しているのだ。
加えてコースの改良にも着手した。ブッシュ化していた法面をラフへと変え、各ホールの花道も整えた。そうすることで難易度だけでなく景色も一気に改善。広々とした景観が随所に現れたのである。良い景観を大切にする新井氏の哲学はここでも発揮されるのだ。
さらに手を加えたのがナイターの照明である。LED化を行ったのだ。これも抜群の効果を発揮する。明るさは驚くほど増して電気料金は劇的に下がったのである。お陰でナイターの利用者も大幅に増えたという。
新井氏が同コースの代表に就任したのが2020年。前年までの年間利用者数は約2万8000人だったという。それが昨年には4万1000人まで増加したことを考えると、やはりこの人はゴルフ場運営の申し子なのだろう。
SHARE