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「ゴルファーが通う懐石店」地域活性の先駆者・新井博の戦略

ゴルフ場運営コースコンサルタント新井博氏が改修を手がけたコースを紹介する連載。
合理的で先進的かつダイナミックなその手法を微に入り細に穿ってお伝えする。

異業種再生

ゴルフ場運営コンサルタント新井博氏が再生を手がけたコースを紹介するこの連載。今月も新井氏自らが代表を務める「HIBARI GOLF」をご紹介。最終章となる今回は、クラブハウス建屋内に同居する「明月記」という名の懐石料理店の再生にまつわるエピソードだ。

新井博氏

長年に亘るコースメンテナンス業務の経験を生かし、ゴルフ場運営コンサルティング会社「PFJ」設立。アメリカで学んだ理論や技術と日本人の持つきめ細かさを融合した独自のコース管理哲学で国内30コース以上を手掛け高い評価を受ける。

地域の絆を守る!新井氏が語る明月記再生プロジェクトの全貌

「実は最初の相談は、この明月記を買い取ってリニューアルする話だったんです」と話す新井氏は近隣出身の地元人で、勿論この店の存在も知っていた。その日本料理店を購入して焼肉店に改装するという相談で声がかかったそう。HIBARI GOLFについては「そういえば、裏側にけったいなゴルフ場がくっついていたな」という程度の認識だったと笑う。「元々、明月記は地域の方達にとって七五三や結納といった記念日に利用するお店でした。そういう場所がなくなるのって寂しいじゃないですか。だからここをなくしてはいけない、と思って自分で買い取ることにしたんです」。そこからは資金調達等に奔走し、一気に話をまとめ上げた。

同店だけでしか味わえない最大のハイライトである景観。昼景、夜景それぞれの魅力をなるべく生かすべく、二人席や四人席のボックスシートを配置するなど大胆にレイアウトを変更。家族連れやカップルでの利用客が大幅に増えたという。

景観を活かしたレイアウトと高品質メニューで復活!明月記の新たな挑戦

晴れて地元の名店のオーナーとなった新井氏。まず手をつけたのは店内のレイアウトだ。最大の魅力である景観を生かすべく、カウンターだけだった窓向きの座席にボックスシートを加え、殆ど景色が見えなかった個室の床の高さを上げて仕切りをガラスに変え、常に景色が見えるようにした。メニューのリニューアルも図った。「料理単価を1.5〜2倍にしました。この雰囲気で食べる料理としては、少し物足りなかった。良いものを相応の価格で提供しようと考えました」。懐石の定番である刺身には特に力を入れたのだが、たまたま新井氏の同級生が鮮魚店を運営していたこともあり、旬の上等な魚が手に入るようになった。「持つべきものは友です(笑)」。矢継ぎ早に講じた施策は見事に功を奏し、客単価も利益率も格段に上がったのだ。こうなると〝地元の名店〞としてのブランド力も上がり、ランチや弁当の利用客も大幅に増えることとなる。スタッフ達のモチベーションも俄然高くなった。「テーマとする笑顔が自然と大きくなりました」と、新井氏の再生施策はあらゆる面で効果を生んだのだ。地域住民に長く親しまれてきた名店は見事に再生を果たした。個室でも床を上げて半磨りガラスを仕切りに採用することで、プライバシーを保ちつつ景色を楽しめるようになった。

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PROFILE

水上貴夫

EVEN / 編集長

水上貴夫

モノ誌、ファッション誌を渡り歩き2008年に『Real Design』を作りたいと、枻出版社に入社。わずか1年半で編集長となるもその数か月後、朝4時に担当役員から「来週から『EVEN』の編集長やって」といわれて早10年を数える。もうすっかりゴルキチ。

水上貴夫の記事一覧

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