全国山小屋泊おすすめプラン|1泊2日で雲上に広がる大自然を楽しもう
フィールドライフ 編集部
- 2022年07月11日
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この夏は、より深く自然に触れられる山小屋泊で山登りをしてみよう! 山ですごす基本設備を整えた山小屋は、滞在すると静かな夜や朝夕の山の姿など、日帰り登山とは違った体験ができる。
文◎栗山ちほ Text by Chiho Kuriyama
写真◎矢島慎一、後藤武久、松井 進、高橋郁子、宮上晃一 Photo by Shinichi Yajima, Takehisa Goto, Susumu Matsui, Ikuko Takahashi, Koichi Miyagami
出典◎フィールドライフ 2019年夏号 No.64
小屋泊まりで山に登ってみよう!
山のなかで雨風をしのいで就眠でき、食事も用意してくれる山小屋は、登山者にとってありがたい存在。ホテルや旅館とは違って設備はシンプルだが、不思議と山では小さなことなど気にならなくなり、ほかの登山者とちょうどいい距離感が生まれる。泊まりの旅なら山肌を赤く染める夕日や満天の星空、澄んだ空気のなかで見るご来光など、さまざま絶景にも出合える。まずは1泊2日の山小屋泊デビューにぴったりな山からトライして夏の登山を楽しもう。
小屋泊登山の注意点
就寝スペース
山小屋は相部屋に男女混合で就眠するというのが基本。混雑時期は1枚の布団を2名で使うなんてことも。なかには別料金で利用できる個室があるところも存在する。寝具は用意されているが、着替えなども各自で持参する。
山小屋への到着時間
山では早朝から動く登山者が多く、夕食の時間も17時~18時くらいからと早い。できる限り15時には山小屋にチェックインしておこう。それを考慮したコースタイムと行動時間を考え、ゆとりある山行プランを組みたい。
夏でも山は寒い
山は標高が高いほど気温が低くなり、日が落ちると一気に冷え込む。山小屋泊するときは、必ずフリースやダウンなどの保温着を用意しよう。雨などで濡れた場合の着替えもあると安心だ。衣類は小さく収納できるものが理想。
予約について
予約なしでも泊まれる山小屋もあるが、繁忙期や特定山域などは完全予約制のところもあり、とくに夕食に関しては事前に伝えておかないと双方困ることになる。事前に予約しておくのがおすすめ。支払いは現金が基本だ。
登山届を忘れずに
山行メンバーやルート、装備などを記入する登山届は、遭難時などの捜索救助に役立つ大切なもの。提出の義務化も進んでおり、オンラインで申請できる「コンパス」といったサービスも普及している。
【中部・北アルプス】燕岳と燕山荘
北アルプス入門におすすめの山。
中房温泉から燕岳に登るコースは、北アルプス入門向けとして登山者に人気。途中に水場や富士山が見えるベンチ、食事ができる合戦小屋など、休憩スポットが多いことも魅力だ。北アルプス三大急登のひとつ合戦尾根を体験でき、山頂付近の稜線にはイルカ岩やめがね岩など、自然が作り出した奇岩も目にすることができる。
日帰りも可能だが、山頂まで往復1時間でピストンできる燕山荘に泊まって山の魅力を満喫していくのがおすすめだ。
ルート
- 【1日目】中房温泉→合戦小屋→燕山荘
- 【2日目】燕山荘→燕岳→燕山荘→合戦小屋→中房温泉
【中部・北アルプス】唐松岳と唐松岳頂上山荘
ゴンドラとリフトを使って楽々アプローチ!
ゴンドラとリフトを乗り継ぐ八方アルペンラインを利用して登れる唐松岳は、初めての北アルプスデビューにも最適。色とりどりの花が鑑賞できる高山植物の宝庫として知られ、湖面に山が写り込む八方池などのビューポイントもある。
また、開けた山頂は剱岳などの名だたる山々をパノラマで見渡せる。山麓から日帰りでピストンできるが、山頂直下に建つ唐松岳頂上山荘に泊まれば、夕日や星空、日の出などの絶景を眺めて登山が楽しめる。
ルート
- 【1日目】八方アルペンライン山頂駅→第3ケルン→唐松岳頂上山荘
- 【2日目】唐松岳頂上山荘→唐松岳→唐松岳頂上山荘→第3ケルン→八方アルペンライン山頂駅
【中部・北アルプス】仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳とこもれび山荘
ふたつの山を日替わりで登る贅沢な旅。
緩やかな山容から “南アルプスの女王” とも呼ばれる仙丈ヶ岳は、高山植物が豊富で、山頂から小仙丈ヶ岳を経由する稜線をのんびり歩きながら、可憐な花々を楽しめる。
一方、白い花崗岩に覆われた甲斐駒ヶ岳はピラミッド型の存在感ある山。起点となる北沢峠に建つ、こもれび山荘などの山小屋を利用すれば、個性的なふたつの山を日替わりで登ることができる。ただしバスの最終を逃すと下山できなくなるので、ゆとりをもった計画を。
ルート
- 【1日目】北沢峠→馬の背ヒュッテ→仙丈ケ岳→小仙丈ケ岳→こもれび山荘
- 【2日目】北沢峠→仙水峠→駒津峰→甲斐駒ヶ岳→駒津峰(不動岩経由)→北沢峠
【東北】安達太良山とくろがね小屋
たおやかな山並みが広がる東北の名峰。
安達太良山はロープウェイを使えば1時間半ほどの少ない登りで登頂できるが、山麓から歩いてピークを目指すのもおすすめ。山頂の最高地は乳首山との愛称もある、こんもりとしたところ。ハシゴを登ってピークに立つとすばらしい大展望が待っている。
安達太良山は爆裂火山も有名で、山頂から峰の辻に向かうと、荒涼とした噴火口も見られる。さらに下った先に建つくろがね小屋は、源泉の温泉を完備。日帰り入浴も受け付けている。
ルート
- 【1日目】あだたら山ロープウェイ頂駅→安達太良山→くろがね小屋
- 【2日目】くろがね小屋→あだたら山ロープウェイ山麓駅
【北関東】至仏山と竜宮小屋
尾瀬ヶ原の湿地をめぐる木道歩きが爽快。
尾瀬ヶ原は湿原の木道を散策しながらミズバショウやニッコウキスゲ、ワタスゲなど、季節ごとの花々が楽しめる尾瀬の人気エリア。玄関口の鳩待峠から2時間半で着ける竜宮小屋など、いくつもの小屋が点在していて宿泊も便利だ。
尾瀬らしさを満喫するなら、初日は湿原の木道をめぐって花々を愛で、翌日は至仏山を経由して鳩待峠に戻るプランがおすすめ。至仏山頂の眺めは、眼下に尾瀬ヶ原が広がり、その先の燧ケ岳まで見渡せる絶景だ。
ルート
- 【1日目】鳩待峠→山ノ鼻→竜宮小屋
- 【2日目】竜宮小屋→山の鼻→至仏山→小至仏山→原見岩→鳩待峠
【関東・甲信越】甲武信ヶ岳と甲武信小屋
3県にまたがる山を制覇しよう!
山梨県、埼玉県、長野県の3県にまたがる甲武信ヶ岳。山梨県の西沢渓谷から登るルートもあるが、長野県側の毛木平のほうが登山口の標高が高く、千曲川の源流に沿ってゆっくり高度を上げられて登りやすいルートだ。途中にナメ滝や千曲川源流の水源地などの見どころもある。
山頂は富士山ほかパノラマの展望が有名で、百名山のうち43座を目にすることができる。山頂直下には甲武信小屋が建ち、風情ある小屋としてファンも多い。
ルート
- 【1日目】毛木平→ナメ滝→水源地標→甲武信ヶ岳→甲武信小屋
- 【2日目】甲武信小屋→甲武信ヶ岳→水源地標→毛木平
【甲信越】赤岳と行者小屋
山小屋が充実する八ヶ岳の主峰。
アクセスの良さや山小屋の設備が充実していることで人気の八ヶ岳。原生林の多い北八ヶ岳に対し、南八ヶ岳は急峻な岩峰が並んでいることが特徴だ。その主峰となる赤岳は、赤茶色の山肌が特徴で、八ヶ岳の峰々や南アルプス、北アルプスまで一望できる大展望がすばらしい。
赤岳をピストンするだけでも十分満足できるが、余裕があれば阿弥陀岳を経由するのもおすすめ。山中には行者小屋など、拠点にぴったりな山小屋がいくつもある。
ルート
- 【1日目】美濃戸口→美濃戸山荘→行者小屋
- 【2日目】行者小屋(文三郎尾根)→赤岳→行者小屋→美濃戸山荘→美濃戸口
【北陸】白山と南竜山荘
山頂付近で池めぐりも楽しめる。
御前峰、大汝峰、剣ヶ峰の3つの峰からなる白山は、古くから信仰の山として親しまれ、富士山や立山に並ぶ日本三霊山のひとつにも数えられている。各所から登山道が伸びるが、別当出合から入山するのが人気のルート。山頂部には紺屋ヶ池や翠ヶ池など大小7つの火口湖が点在し、お池めぐりコースとして周遊することができる。
山麓から一気に山頂を目指してもいいが、中腹の南竜山荘などに泊まってゆっくり山を満喫していくのもおすすめ。
ルート
- 【1日目】別当出合→中飯場→甚之助避難小屋→南竜山荘
- 【2日目】南竜山荘→白山室堂ビジターセンター→白山(御前峰)→白山室堂ビジターセンター→黒ボコ岩→南竜分岐→別当出合
【九州】久住山と法華院温泉山荘
九重連山でもっともポピュラーな山をめぐる。
いくつもの峰々がひしめく九重連山のなかで、もっとも人気なのが久住山。春はミヤマキリシマがピンクの絨毯のように山を覆い、季節ごとにさまざまな高山植物が楽しめる。せっかく登頂したなら、九州本土最高峰の中岳や火口湖の御池などもめぐっておきたい。
宿泊は法華院温泉まで足を延ばし、温泉で体を癒していこう。下山ルートは、草原のような湿地が広がる坊ガツルを経由し、長者原に抜ければ山麓に向かうバスに乗車できる。
ルート
- 【1日目】牧の戸峠→扇ヶ鼻分岐→久住分かれ→久住山→久住分かれ→法華院温泉山荘
- 【2日目】法華院温泉山荘→雨ヶ池越→長者原ビジターセンター
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文◎栗山ちほ Text by Chiho Kuriyama
写真◎矢島慎一、後藤武久、松井 進、高橋郁子、宮上晃一 Photo by Shinichi Yajima, Takehisa Goto, Susumu Matsui, Ikuko Takahashi, Koichi Miyagami
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PROFILE
フィールドライフ 編集部
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。