Uberが空への展開uberAIRを発表。渋滞上空を飛んで1時間20分を27分に
FUNQ
- 2017年11月10日
ついにUberが空へ
海外でUberを使ったことはあるだろうか? スマホでアプリを起動して、地図で目的地を入力すると、近くにいるUberアプリを立ち上げて営業している車の運転手がレスポンスして迎えに来て乗せてくれるというサービスだ。
日本では乗客を乗せるためには二種免許が必要なので、事実上普及してないが(Uberで呼ぶとタクシーかハイヤーが来るし、別に安くもない)、そういう規制のない諸外国では一気に普及して、もうなくてはならない存在となっている。
そんなハイスピードなテンポでイノベーションを続けるUberが次なる展開として、ビルの屋上から屋上へ、垂直離陸機を使って移動するサービス、uberAIRの飛行実験を2020年にロサンジェルスで行うと発表した。そして、2028年のロサンジェルス・オリンピックの頃には、uberAIRを一般的に商業化することを目指すという。
UberはSandstone Properties 社と、Skyportインフラについても独占的に使用する契約を結んだという。同社はロサンジェルスの広範囲なエリアに20以上の離着陸拠点を有している。
提示された情報によると、ラッシュアワーにロサンジェルス空港から同市ダウンタウンにある屋内競技場ステイプルズセンターまで、従来のUberXで地上を16.5マイル(26.5km)走ると最大1時間20分かかるが、UberAIRでは距離は10.4マイル(16.7km)に短縮され、飛行時間わずか4分、UberXでのSkyportでの移動時間を合わせても30分もかからないという。
電動垂直離陸機(eVTOL)は現実的か?
このプランには、電動の垂直離陸機が使われるらしい。
現状、ご覧のようにCGの状態だが、この電動垂直離陸機は実現可能なのだろうか?
私の見る限り、この電動機はかなり意欲的な設計で、オスプレイのように水平・垂直方向で使えるメインローター2基に加えて、主翼途中と胴体後部に同軸の二重反転プロペラを設けている。二重反転プロペラは垂直上昇・下降時だけ使って、水平飛行時は進行方向に揃えて空気抵抗を減らす設計だ。
おそらくプロペラにもボディにもカーボンなどを使ったコンポジット材が使われるのだろう。
ピッチ方向を見ればわかるようにメインローターは逆転させて、プロペラの反トルクによる影響を抑えている。他のローターもすべて二重反転プロペラなので、反トルクは発生しないようになっている。よく考えてある。
水平飛行はこれだけの翼面積があれば、難なく飛べると思うが、垂直離着陸は可能なのだろうか? 推測に過ぎないが、これだけの回転面の面積があれば可能なように思う。さまざまな乱流による機体の乱れの制御も、ドローンなどと同様ジャイロで制御することで難なくフライトできるだろう。
垂直離陸するためには大トルクが必要なため、かなりの電流量が必要だ。大電流を得るとバッテリーの持続時間が問題になるが、uberAIRは都市内交通とすることで、この航続距離の短さという欠点を補うことができる。本当によく考えてある。30分飛んで着陸すれば急速充電、もしくはバッテリー交換すればいいのなら、不可能ではないように思える。
また、オスプレイは滑空着陸するとプロペラが当たるため滑空着陸時にはプロペラを爆砕しなければならず、ヘリのようにオートローテーション(落下の風圧でローターを回し、着地直前で逆ピッチとすることで軟着陸する方法)するにはローター面積が足りない。つまり、飛行機とヘリの中間的存在であるがゆえに機関停止時の着陸が極めて難しいという難点を持つが、このuberAIRなら逆に滑空着陸も、オートローテーションも可能そうだ(オートローテーション時の挙動も電子制御できるだろう)。
もちろん、大都市でこんな機体が近接して飛び回れば、それなりの危険や、衝突墜落事故などのリスクもあるだろう。しかし、お互いの位置をネットワークなどで制御するとかいうような、テクノロジーで乗り越えていけそうな気がする。
日本がリスクを負わず、既存のルールから足を踏み出せずいるうちに、世界はどんどんと、イノベーションを受け入れ、未来へと前進していくのかもしれない。2020年東京オリンピックの交通渋滞と、2028年ロサンジェルスオリンピックのuberAIRが鮮やかな対比を描かないことを祈るばかりだ。
(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2017年12月号 Vol.74』)
(村上タクタ)
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