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荻窪圭のマップアプリ放浪「点在する石垣から江戸城の往時に想いを馳せる」

日比谷にある謎の石垣

東京都千代田区日比谷。最近東京ミッドタウン日比谷がオープンしたり、帝国ホテルがあったり、日生劇場や宝塚劇場があったり、映画館街としても有名だし、明治時代初期には鹿鳴館も建てられていた古くからの超有名な劇場と商業の街だ。

そこに広大な『日比谷公園』がある。ここ、実は明治36(1903)年にオープンした日本最初の洋式公園である。

都心に忽然と現れる四角くて広い公園であるが、日比谷交差点にある入口の脇に『江戸城の石垣』がそのまま残されており、その脇にある池(心字池)は外濠の跡なんだそうな。

日比谷公園から見た江戸城の石垣と濠の跡を利用した心字池。奥に見えるのは東京ミッドタウン日比谷。石垣の上はベンチもあり、公園を見下ろしながらくつろげるのでおすすめ。

へぇー、こんなところに石垣と濠の名残が残ってるのか……と感心したのもつかの間、え、まてよ、これは江戸城のどこのどんな石垣なんだ? と少し不思議になる。

江戸時代の石垣がぽつりぽつりと残っている日比谷公園と虎ノ門。意外に近いので歩いて回れるのだった。

まず明治の地図で検証

江戸城の内堀って皇居一周ランしたことある人ならお馴染みなように、皇居をぐるっと囲ってる。これはもうほぼ全体がまるっと残っているのでイメージが掴みやすい。

日比谷公園の石垣はそこから外れた場所だし『一部だけ』が残ってると全体像が見えなくて「これ、どういうとこのどういう石垣が残ってるんだ?」となっちゃうのだ。困ったものである。

しかも道路に対して斜めになっていて、元はどうだったのかさっぱり想像が付かない。

というわけでまずは地図アプリ。『東京時層地図 for iPad』(日本地図センター)を開いて見る。

明治時代前期の陸軍練兵場が今の日比谷公園。赤丸を描いたところが今残っている石垣のようだ。

左が明治時代初期。まだ日比谷公園ができておらず、お堀も残っている。中央下には『鹿鳴館』が描かれている時代である。鹿鳴館建設が明治16年なのでその頃の地図だ。鹿鳴館が今の日比谷公園の向かいにあったと知ってましたか?

で、右の明治時代終わりの地図は、日比谷公園ができてまもなくのころだ。

これでわかるのはもともとここにあったお堀はカクカクと曲がっていたこと。お堀を埋めたとき少しずれていた道路を斜めにつないだため、日比谷公園の石垣が道路に対して斜めになっていること(斜めなのは石垣ではなくて道路の方だったのだ)。

日比谷公園にかぶっていたのは、内堀と外堀をつなぐ短い『中堀』だそうな。それでなんか中途半端な位置にあったのだな。

さらに江戸時代の地図

なぜ日比谷公園のところのお堀がカクカクと曲がっていたか。

ちょいと江戸時代の様子と比べてみたい。とりだしたるは『大江戸今昔めぐり』という地図アプリ。

これ『江戸時代末期』の江戸を、当時の絵図や資料をベースに現代の縮尺に合わせて『新たに書き起こした』江戸の地図なのだ。

江戸時代から明治初期の地図ってGPSの座標が正確な現代の地図と比べると、位置的な正確さに欠けるのだけど、このアプリはきちんと重ね合わせられるように作られている(ただし、江戸中心部から外れるにしたがってちょっとずつズレていくので信用しすぎないこと)。

『大江戸今昔めぐり』アプリで現代の地図と江戸時代の地図を重ねて見た。内堀の端と日比谷公園の石垣がぴったり重なっている。

このアプリ、江戸時代と現代を重ねる機能がある。ただ半透明にして重ねるだけなので、全体に薄くなって見づらいのだけど日比谷のあたりは上のような感じだ。中堀の様子がよくわかる。

なぜ日比谷のあたりの堀がカクカクしてたのかというと、たぶん『日比谷御門』の関係かなと思う。今の日比谷公園入口からちょっとずれたところ(ちょうど道路の上あたり)に門があったのだ。

ついでにいえば、今の日生劇場や東京宝塚劇場の下はかつてお堀だった、と思うとなんか楽しい。

虎ノ門に残る江戸城外濠跡

遺構って『部分』だけが残っても今ひとつピンとこない。全体像が見えると我然面白くなってくる。

実は日比谷公園の近くに、もう一カ所同じような石垣遺構がある。それは虎ノ門。日比谷公園の霞ヶ関口から出るとけっこうすぐだ。

そういえば虎ノ門も謎だよね。そんな門はいったいどこにあったのか。

もちろん痕跡も残ってないのだが、さきほどの『大江戸今昔めぐり』で地図を重ね合わせてみると場所がわかった。

『大江戸今昔めぐり』アプリで虎ノ門あたりの江戸時代と現代を重ねてみた。文科省の前、桜田通りの上に虎ノ門があったのだ。

ガン見すると『虎御門』の場所や、銀座線はお堀を斜めに横切っていたのだなってことがわかる。

これだけだとわかりづらいので『東京時層地図 for iPad』も参照してみたい。

左が明治前期。まだお堀も虎ノ門も残っている。昭和戦前期になるとお堀の名残はあるものの道路は今戸変わらない。文部省の建物は道路に面した一部だけ今でも残っている。これがミソだ。

で、これらからわかったことを現代地図にざっくりと書き加えてみたのが下の図。

外堀と虎ノ門の跡。AからDの赤丸が遺構が残る箇所である。

こうしてみると外堀の形や江戸時代の道をけっこう無視して道路作られてしまったので漫然と歩いても何もなさげだんだが、実はA~Dの4箇所だけ外濠の石垣遺構が保存され、公開されているのだ。

現地で感じる時の流れ

休日のこのあたりは『三密』の真逆、いわば『三疎』な感じなので、今だからこそ行ってみるべし。

Aはなんと文科省の中である。昭和戦前期に建てられた旧文部省が一部だけ残されてて、その裏側にあるのだ。建物を迂回して勝手に入っちゃって大丈夫。

Aの場所。左手の赤レンガの建物が旧文部省。中庭に石垣が残っており、反対側に解説がある。見ての通り『三密』にはほど遠いのでじっくり江戸時代の石垣の石を楽しみたい。

するとこんな空間が隠れているのだ。

実はここ、地下鉄への階段を降りると展示スペースがあり(エスカレーターではだめ)、地下からも眺めることができる。江戸城と現存する石垣について細かい解説もよし。

Bは江戸城当時の高さがそのまま残っている場所。虎ノ門駅から霞ヶ関ビルへ行く途中に何気なく顔を出している。

Cの場所は道路沿い。言われないと気づかないよね、ってくらい何気ない。

Dは外濠の角っこで『櫓(やぐら)台』。要するに見張り台。『隅櫓』といって、文字通り隅っこに櫓が置かれていたのだが、江戸城の外堀で隅櫓が置かれたのは3箇所で、石垣が現存するのはここのみらしい。 

Dの櫓台跡。といっても微妙に石が残っているなので想像力が必要だけど、江戸時代はここに櫓(高い建物で防御や見張りに使った)があった。

ここに櫓が置かれたのは、虎ノ門を通る街道(今の国道一号)が江戸時代初期の主要街道だったから。東海道が整備される前はこちらが使われており、櫓も必要だったのである。

こちらもDの櫓台跡。近くでみても地味なのであとは想像してください。こうやって残っているだけ貴重な存在だ。

こんな風に点在する遺構もiPhoneで古地図を見ながら歩けば点と点がつながって線になり、よりリアルに感じられるし、ああ、江戸城をこう崩して道路やビルを作り現代の東京にしていったのだなあとじわじわくるのだ。

今回紹介した地図アプリは?

東京はじめ都市散歩の必携アプリ「東京時層地図 for iPad」

明治から現代までの時間を軸に都市の変遷を知ることができるiPad専用アプリ。東京、川崎、横浜の、明治から平成の時間を切り換えられる。
「東京時層地図 for iPad」
販売元:Japan Map Center, Inc.
取材時のバージョン:1.2.1
価格:2580円

■App Storeで「東京時層地図 for iPad」をダウンロード
■Google Playで「東京時層地図」をダウンロード

江戸末期の地図を書き起こして反映「大江戸今昔めぐり」

座標が正確ではない江戸時代末期の地図を、現代地図に合わせて書き起こし重ねられるようにした。時代劇などに出てくる地名や大名屋敷などが分かる。
販売元:BeMap, Inc.
取材時のバージョン:2.1.1
価格:無料

■App Storeで「大江戸今昔めぐり」をダウンロード
■Google Playで「大江戸今昔めぐり」をダウンロード

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(この記事は『flick! 2020年7月』に掲載された「荻窪 圭のマップアプリ放浪」を再編集したものです)

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PROFILE

荻窪圭 

flick! / ライター

荻窪圭 

老舗のIT系ライター、デジカメライターなるも、趣味が高じて『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社知恵の森文庫)など歴史散歩本執筆や新潮社の野外講座『東京古道散歩』講師なども手がける。 https://ogikubokei.blogspot.com/

荻窪圭 の記事一覧

老舗のIT系ライター、デジカメライターなるも、趣味が高じて『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社知恵の森文庫)など歴史散歩本執筆や新潮社の野外講座『東京古道散歩』講師なども手がける。 https://ogikubokei.blogspot.com/

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