激変の新型iPad Air(第4世代)、iPad Pro 11インチと何が違うの?
- 2020年09月17日
INDEX
iPad AirがiPad Pro 11に肉薄
iPad Airが新型になった。
iPadは、これまで一番安いフチがカーブしたスタンダードモデル(一番安いモデルは3万4800円〜)と、フチがスクエアなiPad Pro(一番高価なモデルは17万6800円)と、その中間モデルであるフチがカーブしたiPad Air(5万4800円〜8万6800円)をラインナップしていた(あとiPad miniもある)。
つまり、Airはボディが安い方のラインに、性能の高い中身が入ってたということ。
その中間モデルであるiPad Airが、今度は高い方のProと同じスクエアな形状のラインナップになったというのが、今回のモデルチェンジの一番大きなポイントだ。
Proに近い性能を、格安で
アップルはできる限りいろんな周辺機器を共用にしようとするの。たとえば、スマートキーボードとApple Pencilについては、iPad Airは一番安価なiPad(スタンダード、第7世代)と共用だった。
上記変更にともなって、周辺機器もiPad Proの11インチ側と、共用になった。
Apple PencilはあのLightningコネクターで充電するあまりスタイリッシュではない第1世代から、サイドにペタリと磁石でくっつくスマートな第2世代にアップデートされた。
スマートキーボードもiPad Pro 11インチと共用。あの本体が浮いているように見えるカッコいいMagic Keyboardも使えるようになった。iPad Air自体の値段は6万2800円〜9万4800円(税別)と、8000円ほど上がったが、グレードアップの大きさを考えると、まだ破格値といえるだろう。
Apple Pencil 2やMagic Keyboardが使えるようになって、ミドルクラスのiPad Airのグレードがグッと上がった気がする。
絶妙の線を突いてきた10.9インチディスプレイ
ディスプレイは、従来の10.5インチから、10.9インチへと少し大きくなっているが、iPad Proの11インチには0.1インチだけ足りない。
画面は同じ264ppなので、10.9インチの新iPad Airは2,360×1,640ピクセルとなっており、11インチのiPad Proは2,388×1,668ピクセルとなっており、それぞれタテ、ヨコ28ピクセル短い。
外側の高さと幅は、スマートキーボードを共用するためだと思われるが、まったく同じ寸法なのに、画面が少しだけ小さいので、周りのフチが少しだけ太い。技術的理由でそうなったということだが、アップルの真の意図は、iPad Pro 11インチより少しだけ野暮ったく……いい言い方をすれば親しみやすくするところにあるのではないだろうか?
本体の厚さも5.9mmから、6.1mmへとほんのわずかに厚くなっており、野暮ったさ……もとい、親しみやすさを演出するのに役立っている。
まさに、iPad Airが存在する絶妙な立ち位置がそこにある。
ちなみに、これは余談だが、歴代のiPadは、12.9インチのProも含めて、すべて3:4の画面の縦横比を持っている。これが少し幅広で、iPadならではのスタイルを作り出しているのだが、iPad Proの11インチモデルだけが、1:√2、つまり1.1414という比率を持っていた。これはいわゆるA4の紙などと同じ白銀比なのだが、このディスプレイの採用により、iPad Airも白銀比ディスプレイの仲間入りとなる。
ちなみに、iPad Air第3世代のディスプレイは10.5インチ2,224×1,668ピクセルで、実は幅はiPad Proと同じだった。つまり、iPad Air第4世代のディスプレイは、iPad Air第3世代と比べるとタテは長くなったが幅は狭くなったのである。厳密に言うと。
ちょっとマニアックになり過ぎたが、このiPad Pro 11とiPad Air(第4世代)だけ白銀比問題は、いつか究明したいテーマではある。
A14 BIonic 対 A12Z Bionic どっちが速いか?
搭載されたチップセットは、なんと驚きのA14 Bionic(2世代ごとにペットネームが変わるのかと思ったが、今回は変わらなかった)。
A14 Bionicは、近々発売されるはずのiPhone 12(的なもの)に搭載されるはずのチップで、ついに5nmプロセスで生産される革命的なチップセットなのだ。iPhoneより先に、新型のチップセットがiPadに搭載されるのは初だと思う。
しかも、この5nmプロセスのチップセットは、今後登場するApple Siliconを搭載したMacでも使われるベースとなるもので、iPhone、iPad、Mac……の心臓部をすべて受け持つ、アップルにとっての大戦略物資だ。これがこのiPad Airに搭載されて出てくるとは思わなかった。どんな性能を叩き出すのかは非常に興味深い。
では、このA14 Bioincと、iPad Proに搭載されているA12Z Bionicはどちらが速いのか? これは複雑な問題だ。答えによっては、iPad Proの立場がなくなる。
設計のプロセスでいえばA14 Bioincの方が先進的だし、ニューラルエンジンなどの機能の多さでも新しいA14Bioincの方が勝る。ただ、iPad Proに搭載されているのは、A12 BionicではなくA12Z Bionicなので、チップの数の差がある。
iPad Air 4のA14 BionicはCPU6コア、GPU4コアだが、iPad ProのA12Z BionicはCPU8コア、GPU8コア。トータルの性能では、iPad Proの方が上回る。処理によってはA14 Bionicのメリットが出る場合もある(たとえば写真の暗所部分のノイズ処理とかではA14 Bionicの方が勝るらしい)が、全体でいえばA12Z Bionicを積んだiPad Proの方がやはり優位ということで良さそうだ。
プロの絵描きにとっては、やはりiPad Proか
さて、絵を描く人にとって、iPad AirはiPad Proの代わりになるのだろうか?
ガラス面がProほど薄いかどうかは現物を見るまで分からないがフルラミネーションディスプレイは同じで、P3や、Liquid Retinaというところも同じなのでかなり肉薄していると考えて良さそう。
ただし、ちょっと違うのが、最大輝度が600ニト→500ニトなのと、ProMotion対応ではないところ。
最大120Hzで描画するProMotionは、ハッチングのように、細かい線をシャッシャッシャッと描いていくシーンで、違いが顕著だと思われる。まぁ、普通に絵を描くという意味では、Airのディスプレイで十分大丈夫なのだが、やっぱりプロはProを買わざるを得ないと思う。
コロナの影響で、トップボタンにTouch ID
あと、もうひとつデッカイ注目ポイントが、トップボタンに装備されたTouch IDだ。
コロナの流行にともないマスクをするようになって、Face IDはさっぱり面倒な仕組みになった。それを受けて緊急開発したのか、このiPad Airにはトップボタンに指紋認証が付いている。
この仕組みは、おそらく次のiPhoneや、iPad Proにも採用されるのではないかと思うのだが、赤外線照射で深度情報を取る仕組みは、利用しているアプリもあるので、Face IDが廃止されるかどうかは分からない。併用するのも手かとは思うが、アップルが採用する「スマートな一手」ではないように思う。
結論:多くの人にお買い得なお勧め高性能マシン、ただ最後の1割の人には……
トータルで言うと非常に高性能、お買い得で、カラーバリエーションも豊かで親しみやすい一台だといえる。iPad Pro 11か、本機かでいえば、9割の人にとっては、このiPad Airで十分だと思う。
だが、残りの1割。高度な処理が必要な人、プロレベルで絵を描く人にとっては、やはりiPad Airでは、iPad Proの代わりにはならないと思う。
前回、3月にモデルチェンジしていることを考えると、Proのモデルチェンジサイクルはもう少し先かとは思っていたが、これだけAirの性能がProに肉薄されると、Proが割高に感じてしまうことは確かだ。そう考えると、年内ぐらいに本機を大きく引き離すiPad Proのアップデートがあっても不思議ではないと思う。
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。