iPhone 歴代名鑑「世界を変えたデバイスのすべて」初代~最新まで
flick! 編集部
- 2020年12月29日
INDEX
2007年以降、それぞれの年に、どんなiPhoneが登場して、デジタルデバイスとウェブの世界にどんなことが起こり、世間では何が起こったのか。たったひとつのデバイスがもたらした影響の大きさにきっと驚くはずだ。
初代 iPhone(2007)
すべてを変えたジョブズの乾坤一擲
唐突に登場したiPhoneは、10年の間であらゆることを変えてしまった。しかし、最初は誰もそのことに気がついていなかった。最初は気付かず。次に否定し、抵抗し、最後には熱狂した。
最初に登場したiPhoneは今から見ると驚くほど小さなデバイスだった。通信はGSMで遅く、ストレージは小さく、画面も小さくて、今の尺度では高精細ではなかった。電池の持ちも良くなかったし。動きはたびたび引っ掛かった。しかし、それでも10年前としては驚くべきデバイスだった。初代iPhoneの画面は320×480ピクセル。ピクセル数だけでいえば、今のAppleWatchと大差ないほどだった。
まだApp Storeも存在しておらず、1年間はプリインストールされていた12個のアプリで過ごすしかなかった。
日本では、販売すらされなかったから、ほとんどの人はアメリカで起こっていることだと思い、気にしなかった。極一部のマニアが、日本では使えないというのにアメリカから輸入して愛でていた(通信は繋がらない)。初代iPhoneを入手した人だけのミーティングなどが開催され、数十人が集まったという。
初代iPhoneの特長
・日本未発売(日本ではiPod Touchのみ)
・スマホアプリ登場(ただしストアなし)
・3GではなくGSM通信のみ
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iPhone 3G(2008)
日本における初代iPhone
初代iPhoneは日本で販売されなかった。
そして次のモデルも、日本で発売される期待はあまり持てないと思われていた。iPhoneを活用するには、定額のパケット通信が必要だったが、日本の通信キャリアが、そんな無制限のデータ通信を許すとは思えなかったためだ。
しかし、予想は良い方に裏切られた。2008年6月9日のWWDCでiPhone 3Gは発表された。最初に発売される国は22カ国。その22カ国に日本が入っていたのだ。
キャリアはソフトバンク。当時、ドコモ、auに大きく水をあけられていた3番手のキャリアのソフトバンクだったのだ。代表の孫正義氏は、モバイルインターネットの重要性とiPhoneの価値を正確に理解し、ジョブズを口説き落としていたのだ。大勝負に出ていた。
発表から7月11日までの約1カ月間。例によって情報がほとんどないまま発売日は着々と近づいていた。
孫社長はもうひとつ大勝負に出ていた。iPhoneの性能を活かすために、ソフトバンクはiPhone専用のパケット使い放題のプランを用意していたのだ。今考えると不思議はないが、パナソニック、富士通などの国内メーカーをすっ飛ばして、携帯電話メーカーとしては未知数だったアップルにこんな好条件を提供するなんて、他のキャリアでは考えられなかった。しかし、次のモバイルインターネットの世界を実現するには使い放題は必須の条件だった。孫氏は正しかった。
iPhone 3Gの特長
・日本で初めて発売されたiPhone
・App Storeスタート
・GSPを搭載し位置情報取得
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iPhone 3Gs(2009)
飛躍的に処理能力が向上
日本でのiPhone発売は衝撃的だったし、iPhone 3Gもすばらしかったが、そうはいってもまだまだパフォーマンスにもの足りなさを感じるものだった。
ひとつはiPhone 3G自体の処理速度が遅く、操作してもひっかかることが多かったし、通信速度ももの足りないものだった。そのため、処理速度が向上した『3Gs』が発売されるとなると、誰もがすぐに買い替えざるを得ない状態だった。
ちなみに当初は『3G S』と半角空いた大文字表記だったが、途中で『3GS』に改められた。ジョブズが、この表記を気に入っていなかったという噂だ。その後、5s/5c発売時に、アップルは末尾の英文字を小文字に揃えることに決めたため、正しくは『3Gs』となった。本誌では、この最後の決定に合わせて表記している。
事前の情報どおり、3Gsはとても軽快に動き、ブラウジングしたり、アプリを使ったり、地図を見たりという日常的なアクションを実に快適にこなせるようになっていた。
また、初代でグーグルマップの表示、3GでGPSによる自位置表示ができるようになったが、3Gsでは地磁気センサーを採用したことで、どちらの方角を向いているかも把握できるようになった。
カメラは200万画素のパンフォーカスという前時代的なものから、300万画素のAF付きに大きく進化した。まだ画素数はもの足りないが、見やすく親しみやすい画質だったので、写真を活用する人が増えた。
iPhone 3Gsの特長
・カメラにオートフォーカス搭載
・カメラでビデオ撮影が可能に
・地磁気センサー搭載
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iPhone 4(2010)
ガラスとステンレスの記念碑的存在
当初、異端児と考えられ、やがて変わり者のトレンドリーダーになったiPhoneユーザーは、4が出る頃には『勝者』になりつつあった。
2010年1月には初代iPadが発表され、6月にはiPhone 4という決定的な新端末が登場し、アップルの優位は確かなものになっていく。反面、壇上に立つスティーブ・ジョブズは年々痩せ衰えており、「問題ない」「ホルモン異常のため」というリリースを出してはいたが、実はこの頃はすい臓ガンが重篤化の一途をたどっており、いよいよ隠しきれない状態になっていた。
初の自社設計チップセットApple A4を搭載し、驚くほど高精細なRetinaディスプレイを採用、ステンレスのフレームに、表裏ともガラスという構成で登場したiPhone 4は、圧倒的に高い支持を得た。アウトカメラはLEDフラッシュライト付き500万画素になり、インカメラはFaceTime通話用として30万画素のものが搭載された。この小さなカメラが発展して後に自撮り文化を産むことになる。
ちなみにiPhoneビジネス自体が急成長したためかトラブルも多かった。外側のフレームの持ち方による電波状況の悪化が問題になったり、当初から発表されていたブラック/ホワイト2色のうち、ホワイトの方が歩留まりの問題で約10カ月も出荷されないとか、そもそも発表前のプロトタイプをエンジニアがサンノゼのバーに置き忘れ、それがUSギズモードの記者の手に渡り、大問題になるなどの出来事があった。
iPhone 4の特長
・Apple A4プロセッサー搭載
・Retinaディスプレイ初搭載
・ステンレスフレーム、背面ガラス
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iPhone 4s(2011)
ジョブズ生前に発表された最後の1台
例年6月末頃に発売されてきたiPhoneだが、2011年は10月4日に発表、10月14日に発売されている。
当時、スティーブ・ジョブズの健康状態の影響を受けたように思えたが、4sの開発が順調でなかったのかもしれないし、以降、クリスマスシーズン前にラインナップすることにしたのかもしれない。
この年以降、新型iPhoneは9月に発表されているので、6月に新OSを発表し、デベロッパーが新OSに対応したアプリを準備してから端末を発売するように、シーズンを調整したのかもしれない。もしくは、それらの事情が組み合わさったのか。いずれにしても、iPhone 4の欠点をカバーした4sが発表、発売された。発表翌日にジョブズが亡くなったと報じられたので、おそらくはこの端末がジョブズ自身が大きく意見を言えた最後の端末だったに違いない。
アンテナ問題に対策が施され、Siriが搭載され、iCloudに対応した。そしてauからも発売されたことも日本では大きなニュースだった。これ以降、日本では複数キャリア体制で販売が行われる。
熟成された端末であり、ユーザーの評判も高かった。
iPhone 4sの特長
・Siri初搭載
・クラウドサービスiCloud対応
・auからも発売
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iPhone 5(2012)
アルミユニボディの工業製品の傑作
ジョブズ不在が不安視された中、アルミユニボディのiPhone 5が登場。製造に時間がかかるアルミ切削という製造方法のデメリットを、CNC加工機を大量に導入したことで解決。フレームと内部構造のマウント、外装の3つをアルミユニボディで兼ねることにより高剛性、軽量、精密という相反する要素を完全に満足させる製品となった。
ディスプレイは長辺を伸ばした4インチのRetinaディスプレイ、LTE通信に対応、接続コネクターはiPod以来の30ピンからLightningに。アウトカメラは800万画素のままだが、インカメラは30万画素から120万画素へ。このインカメラの高画素化が、自撮りやInstagramのブームに繋がっていく。
これらの新要素の中で、その後に対して最も影響が大きかったのはLTEの採用だろう。高速データ通信は結果としてクラウドサービス、SNS、ウェブブラウジング、動画観賞、中継……など、あらゆる活動を促進させ、我々の生活におけるiPhoneの重要度をさらに大きなものとした。
実際、この端末は2012年に登場して以来、iPhone 5s、SEとマイナーチェンジを続けて、結果として5年半も経った現在でも販売されているのだから驚いてしまう。量産することにより、結果として部品の調達コストも減るし、iPhoneケースなどの周辺機器マーケットの隆盛にも繋がる。現在のアップル人気の礎を築いた端末だといえる。
iPhone 5の特長
・アルミユニボディを初採用
・Lightningコネクター初採用
・LTE通信対応
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iPhone 5s(2013)
初の64bitとTouch IDを搭載
2年ごとに本体を刷新するとともに、間となる年はそれ以外の部分に集中して性能アップすることで、継続的な成長を続けてきたiPhone。2013年は、ボディデザインは変わらず、メカニズム的な熟成が進む年だった。
ボディは2012年iPhone 5で実現したスリムな4インチのアルミユニボディ。これを元に大きく性能アップしたのがiPhone 5s。次の6/6 Plusが発売された後も併売され、その後、格安携帯電話ブランドのY!モバイルや、UQモバイルからも販売されるなど、息が長いモデルになった。
ボディはほぼ5と同様のアルミユニボディ。指紋認証システムのTouch IDが導入された点が外見上の大きな違いとなる。いちいちパスコードを入れなくてもいいという利便性の高さは大きなメリットだ。
SoCはApple A7を搭載。スマートフォンでは初となる64ビットアーキテクチャということでさすがに処理速度が高かった。さらにA7とは別にモーション処理専用のコプロセッサApple M7を搭載。加速度センサー、ジャイロセンサーなどの信号を継続的に処理し、A7の消費電力を節約することに貢献している。アウトカメラは800万画素のままだが、レンズのF値が2.2に。センサーサイズを大型化して、光が十分でないより日常的なシーンでの撮影に強くなっている。
本体色にはゴールドを追加。搭載するiOS 7では、スキューモフィズムを廃し、フラットデザインに移行した。
iPhone 5sの特長
・Touch ID採用
・64bitのA7搭載で高速処理
・iOS 7でフラットデザインに
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iPhone 6/6 Plus(2014)
4.7インチと5.5インチに大画面化
大画面化を求める声は、以前からあったし、Androidスマホにおけるディスプレイ大型化の勢いは留まるところを知らなかったため、いずれはiPhoneも大型化されると予想されていた。
iPhoneが大画面化を避ける理由のひとつに手で持ちづらくなることもあるだろうし、画面サイズの多様化が、アプリ開発を複雑にするのを避けたい、という意図もあると思われていた。Androidの場合、多種多様な大きさ、縦横比の画面が使われており、そのフラグメンテーションが開発上のネックになっている。
アップルの提案は2種類の画面を追加することだった。
ひとつは5より全体的にひとまわり大きな4.7インチ。もうひとつはだいぶ大きくて、RetinaだがフルHD解像度の1,920×1,080の5.5インチ。結果として2種類増え、6s/6s Plus、7/7 Plus、8/8 Plusと4世代に渡ってこのサイズを運用できているのだから、よい選択だったのだと思う。
iPhone 6/6 Plusの特長
・ひとつは1,334×750の4.7インチ
・もうひとつは1,920×1,080の5.5インチ
・Apple Pay対応(日本仕様非対応)
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iPhone 6s/6s Plus(2015)
3D Touchと1,200万画素カメラを搭載
iPhoneの操作系といえばマルチタッチ。複数の指を使って、簡単に複雑な操作ができる。この新しい操作方法に新たな可能性をもたらしたのが、3D Touchだ。
アイコンをタップするのと違って、強く押すと、そこにサブメニューが現れたりする。使い慣れると便利な機能だ。文字入力時にカーソルを微妙に動かしたい時などにも、キーボード部分を強く押し込むと、キーボードがトラックパッドになって、カーソルを微妙に動かすことができる。知らないと従来どおり、知っていると別のショートカットが可能……というところが便利。ディスプレイの裏に感圧用のパッドを入れているので、だいぶ厚く重くなるハズだが、ほぼ変わらないレベルに抑えている。
アウトカメラは4s以来800万画素だったのが、ようやく1,200万画素に。4K動画も撮影可能に。またLive Photosという『少し動く写真』機能も追加された。インカメラも500万画素になり、セルフィーの時代に美しい写真を撮ることを可能とした。
iPhone 6s/6s Plusの特長
・3D Touchを搭載
・カメラ……IN 1,200万画素/OUT 500万画素に
・Apple A9、本体は7000番台アルミに
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iPhone 7/7 Plus(2016)
耐水。Plusはデュアルレンズ化
iPhone 7/7 Plus世代で、ようやくiPhoneは耐水性能を獲得するに至った。仕様はIP67等級で、30分ほど常温、真水の静止した水に浸けても有害な影響が出ない……という程度。アクティブな使い方や、海水、温かい風呂などでの使用がサポートされるわけではない。
これにともないホームボタンはTapticエンジンで擬似的な振動が与えられる感圧式のものになり、ヘッドフォンジャックも廃止された。
Plusの背面のカメラにはふたつのレンズが装備され、広角側と望遠(というより標準)側で切り替わるようになっている。これらのレンズはズーム操作の途中でシームレスに切り替わるため、どちらを使っているかを意識することはない。
また、7/7 Plusとも、日本のFeliCaに対応し、日本でApple Payを使えるようになった。対応しているのはSuica、iD、QUICPayなど。同時にApple Watch Serise 2でも支払えるようになっている。
iPhone 7/7 Plusの特長
・耐水に。仕様はIP67
・7 Plusの背面カメラがデュアルに
・Apple Payが日本のFeliCaに対応
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iPhone 8/8 Plus/X(2017)
非接触充電。新構成のXも登場
2017年は、6/6 Plus以来の4.7、5.5インチの2モデルに加えて、新しい設計のOLED5.8インチの全画面ディスプレイを持つiPhone Xが登場した。
共通仕様なのは超ハイパフォーマンスのA11 Bionicの搭載と、非接触充電の搭載。この2ポイントは8/8 Plus/Xの3モデルでまったく同じ仕様となっている。
iPhone Xが特別なのは、ボディのほぼ全体を覆うOLEDと、そのために廃止されたホームボタンのTouch IDの代わりに設けられた顔認証システムFace IDだ。これにより、iPhoneに顔を見せるだけで、瞬時に顔を識別してロック解除される。
本体はXのみステンレスフレーム。非接触充電のために背面を含め両面がガラスとなっている。カメラは1,200万画素を広角と望遠の両方で使うが、望遠側にも手ブレ補正が付いているのがうれしい。
iPhone 8/8 Plus/Xの特長
・大小の2モデルに加えてXの3モデル
・5.8インチマルチタッチOLED
・Xは顔認証のTrue Depth
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