WWDC21最大のニュースは、Swift Playgroundsでアプリ開発可能になったこと。なぜ?
- 2021年06月09日
iPadのSwift Playgroundsでアプリを開発できる!
WWDC21のiPadのセクションで、クレイグ・フェデリギは、Swift Playgroundsでアプリをビルドできるようになると言った。ここには深い意味が隠されていると思う。
ご存知のように、Swift Playgroundsはプログラミングを勉強するための最良の手段で、iPad用アプリとしてリリースされている。3D空間に浮かぶ島にいる奇妙な生物にジェムを取らせるように、コードを書いているうちに、いつの間にかプログラミングを理解してしまうという仕組みのアプリケーションだ。
小学生でも、大人でもプログラミングを理解できる素晴らしい仕組みだったのだが、ひとつ問題があった。
iPadのSwift Playgroundsを使ってプログラミングを習得して、いざ「実際にアプリを作ろう」と思ったら、Macを購入しなければならなかったのだ。3万円台で買えるiPadで技術を習得して、「いざ」と思ったら、10万円ぐらいするMacを買わなければならない。これは学生さん(の親)にはつらい。
しかし、iPadでSwift UIを使ってアプリを開発できるとなったら話は別だ。これは素晴らしいソリューションだ。これが秋にローンチされるiPadOS 15で実現すると言う。
最初の数文字を打ったら、そこで使えるコードをサジェストする機能もついている。
さまざまなライブラリも用意されいてるし、書いてるコードをそのままMacのXcodeで開くこともできるのだそうだ。おそらくコードはクラウド上で同期されるのだろう。
そして、iPad上から、App Storeに公開することまでできるようになるのだ。iPadでアプリ開発者になれる。すごい。
iPadとMacの境目はどこにある?
さて、ここで考えてみて欲しい。
今回のWWDCで発表された、FaceTime、Translate、マップ、ライブテキスト、フォーカスなど数々の機能は、ほとんどiPhone、iPad、Macで共通の機能を持っている。これは、Mac Catalystの機能を使って、iPhoneやiPad用に開発して、それをそのままMacで使えるようにしているはずだ。違うアプリを開発はしていない。実はコードはほとんど共通のはずだ。
では、iPadとMacの違いって何だろう? その違いは必要なのだろうか?
現在iPad Proに搭載されているのも、MacBook Airに搭載されているのもM1チップだ。つまりトラックパッドorマウスを使うか、マルチタッチディスプレイを使うかの違いはあれど、ハードウェア的にはほとんど同じなのだ。しかも、上記のように、上で動いてるアプリもかなりの部分共通化されている。
iPadとMacは別に存在している必要があるのだろうか? おそらく機能的には、Magic Keyboardを付けたiPad Proの上でmacOSを走らせて使うことも、MacBook Airの上でiPadOSを走らせることも可能なはずだ。
もちろん、安易にそんなことをするはずはない。しかし、アップル社内では、別個に存在した方がいいのか? すべてがiPadOSになった方がいいのか? macOSになった方がいいのか? は検討されているはずだ。
これまで、Macは高機能なアプリを動作させるために必要だった。でも、PhotoshopはiPad版もあるし、ビデオ編集だってPremiere Rushでできる。もはや境界は薄れている。
唯一にして、最大の違いが「Macはアプリを開発できる」ということにあった。
でも、iPadでSwift Playgroundsを使ってアプリを開発できるようになったら、その違いはなくなってしまう。
すぐにmacOSがなくなってしまうとは言わないが、この『iPad上のSwift Playgroundsでアプリをビルド出来るようになる』という知らせは、macOSとiPadOSの境界線をさらに薄いものにさせてしまう発表であることは確かだろう。
macOSは、永遠に続くのだろうか? それとも?
(村上タクタ)
(最新刊)
flick! digital 2021年6月号 Vol.116
https://funq.jp/flick/magazines/20161/
デジタル超整理術 リモートワーク編
https://funq.jp/flick/magazines/20164/
SHARE
PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。