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HHKBを愛するLINEのエンジニアが集結! 開催された社内イベントで語られた話

LINE社内チャットに、120人が参加するHHKBのチャンネルがある

「村上さん! こんどLINEの中のHHKB愛好家たちとPFUさんでイベントをやるのですが、参加します?」とお誘いいただいた。

LINEの櫛井優介さん。今は、エンジニアが働く環境を向上させたり技術広報などの仕事をされているという。

イベントのきっかけは、LINEが採用関連の広告で社員の業務風景の様子をバナーで使用しており、その中に社員がHHKBを使っている様子にフォーカスしている素材があった。それにHHKBの公式アカウントがツッコミを入れたことをキッカケに「何かしら一緒に企画ができないか」という話が進み、まずはHHKBが好き・または興味ある人集まって!とLINE社内のSlackにz_hhkbというチャンネルが作られ、100名を超える社員が参加しているのだそう。

そこで、話が盛り上がり、「では、PFUの人に開発の裏側を聞いてみよう!」ということになったらしい。そして、私がその取材にお声掛けいただいたというワケ。


イベントの趣旨は、『モノづくり』『エンジニア』という共通の職業の中で、『こだわったモノづくりと市場性をどうやって作るか』ということなのだそうだ。すごく限られたユーザーにフォーカスして作られたHHKBが結果として多くの人に受け入れられたということや、今や国民的インフラになったLINEのモノづくりに共通点はあるのだろうか?

参加されたのは約60人。イベントは第1部と2部に分かれており、1部はPFU松本さんのプレゼンテーション、2部はトークセッションとなっている。

PFU松本さんが語るHHKBの黎明期の伝説

まずは、PFU広報戦略室長の松本さんのトークから。

松本さんは、ScanSnapを大人気プロダクトにするのに尽力された方であると同時に、HHKBも途中からバトンを受け取り、非常に多くの人に受け入れられるプロダクトに成長させた方だ。

話は、非常に昔、松本さんがPFUに入社した時からスタートした。その時はビジネス用のパソコンというのが登場し始めた時代で、松本さんは富士通と松下(Panasonic)の間で、さまざまな経験を積まれたという。

ScanSnapとHHKBという大成功プロダクトを持つPFUだが、この時代にはさまざまな試行錯誤をして、途中で断念しなくてはならないプロダクトも多数あったのだという。

これら数々のチャレンジと挫折があって、ScanSnapやHHKBに到達したということだ。

HHKBは初登場前から、確固たるコンセプトを持っていた

1995年、東京大学名誉教授、和田英一先生が提案した『Alephキーボード』というコンセプトと、PFUが出会い、HHKBというプロダクトが胎動を始める。

このあたりは、HHKBのエンジニアである八幡さんが執筆されたNoteが詳しいのでご参照のこと。

HappyHacking keyboardはじまりの話
https://note.com/tt_yawata/n/n5b750f8efc51

そして生まれたのが下の原形試作キーボードだ。
和田先生のコンセプトは、ひたすらシンプルに……を追求されているが、それに対して、このコンセプトモデルは実用上の問題からAltキーとFnキーを設けてある。

UNIXだけでなく、WindowsやMacに対応するや否やも含めて、『キーをいかに削りシンプルにするか』と『多数の人の要望にいかに応えるか』は、この後も連綿と続くHHKBの葛藤で、現行のキーボードについているカーソルキーや、Windowsキー、⌘キーなどの採用の際にも同様のやりとりがあったのだろうと思うと興味深い。

最終的にとりまとめられた、HHKBの基本要件は以下の通り。

キーボードという、どのパソコンにも付属している一般的な製品を、しっかりと定義しなおすために、いかにこの『基本要件』を研ぎ澄ますことが大切だったかがよく分かる。

1996年発売。

かくして、初代のHHKBが登場するのは1996年の年末。価格は2万9800円。

初年度は12月20日発売だったので出荷されたのは700台だった。

そのコンセプトと打鍵感の素晴らしさは、すぐに一部の話題となり、翌年には5000台を販売。さらにMacに対応したモデルも発売された。

その後は、みなさんもご存知のことも多いので、ここでは割愛するが(知りたい方は、PFUさんに要望を出していただきたい。どこかでイベントが開催されたりするかも)、1999年には普及機であるHHKB Lite、2001年にはLite2が登場。
さらに2002年にはパームレストなど、アクセサリーが発売され、アフターマーケットが充実してくる。2003年には第2世代となる静電容量無接点方式のHHKB Professionalが登場、さらにかな無刻印モデルや、墨モデルなど、ファンの要望に応えた製品が増えてくる。

そして2006年、10周年を記念して、今や伝説となっているアルミ削り出しシャシーを採用したHG、それに漆塗りのキーボードを搭載したHG JAPANという52万5000円もするモデルを発売する。このモデルはその高価さでギネスに認定されている。

2008年にはProfessionalモデルに日本語JIS配列を追加。SNSもHHKB独自に始める。

そして、最高傑作である最新モデルに

そして、2019年、現行機種である最高傑作、HHKB Professional ハイブリッドシリーズが登場。HHKBの人気を不動のものとする。

ここへ至るHHKBの開発の歴史は、以下の通り。やはり、最初のコンセプトとデザインが非常に大事ということ。そして、市場の意見を求めて作るマーケットインではなく、徹底したプロダクトアウトが肝要とのこと。

また、現行機種においては、マニアックな商品だけにウェブ直販だけにする……とうビジネスモデルの変更も重要だったという。これにより、HHKBは家電量販店などで触って買うことはできないが、パートナー企業と連携しタッチ&トライポイントを主要都市に設置。ユーザーとの直販体制を構築することにより、よりユーザーとのダイレクトな関係性を構築することに成功している。

対談の中に、HHKBの将来の秘密が!?

第2部は、LINEからコアなHHKBユーザーの方が3人、PFUから開発に携わった方など数名が出席して語る対談形式で行われた。

 

まずはLINEのKaibazawaさんからの質問。
『HHKBはちゃんと利益は出ているでしょうか? ファンとしてビジネスになっているのか心配です』
これにはPFU松本さんが回答。「儲かってないとやらせてもらえないと思います(笑)価値のあるものは、ちゃんとビジネスを継続できて、サポートもちゃんとできるという、比較的高い値段で売らせてもらっているので、ちゃんと利益は出ています。最新のモデルでウェブ直販のみとして、流通コストを下げたのも大きいと思います」とのこと。

続いて同じくKaibazawaさんから。
『自分の好きな色のキートップを使いたいのですが、公式でいろんなキートップを出して欲しい』
これについても松本さんが回答。「チェリー軸のキーというカルチャーとしてはいろんな色に変えたいという要望があるのも重々承知しています。静電容量専用のスイッチなんで、純正のものというところに限られてしまっているのですが、PFUとしてもブルーエスケープキーだとか、レッドコントロールキーだとか、そういうのも出してます。この手のアクセサリービジネスに関しては、メーカー純正のみではなくサードパーティの方にお任せしてエコシステムを構築したい。また、ブランディングとしては、白と墨の純正色を基調にで硬派にやりたいと思ってます。」

次はUmamiさんから。
『左右の分離タイプのキーボードが欲しいです。HHKBの他というと自作キーボードという文化があるのですが、そこでは分離タイプが人気です』
これも松本さんが回答。「この要望は多いですね。検討の余地は十分にあると思って、最近は開発の方にも『検討しろよ』と伝えてあります。ただ、和田先生は『なんでそんなものが要るんだ』とおっしゃっているというのもあります。和田先生はシンメトリックでコンパクトなHHKBのオリジナルレイアウトが美しいと考えてらっしゃって、このレイアウトこそがプログラマーズキーボードのデファクトスタンダードになって欲しいと考えられています。非常に美意識と普遍性を意識されています。F1のコクピットは狭くても、気合い入れてドライビングするわけじゃないですか。HHKBも、FとJに指を置いて『さぁ、打て!』っていうような部分もあって、そういうところは少し違うと。でも、正直、アリだと思ってますよ。HHKBのオートマチック車があってもいいじゃないですか……というような部分はあります」

逆に、PFU側からLINEに対して質問。
『LINEってどんな会社なんですか?』
これにはLINEの櫛井さんが回答。「10年ぐらい前にLINEというプロダクトを出したんですけど、元々はNHNジャパン、NAVER、ライブドアという3つの会社が一緒になった会社ですね。僕なんかはライブドアに所属していたんですけど、買収されてNHNジャパンに合流しました。もともと違う会社が合流して、LINEというサービスを生み出して、今LINEという会社になっています。ミッションは『CLOSING THE DISTANCE』ということで、『人や人、人やサービスの間の距離を縮めたいね』というのがミッションになってます。使いにくいサービスを使いやすくして、距離を縮めたいと考えています」

『いろんな会社が統合したことで、特徴とかありますか?』
こちらも櫛井さんが回答。「もともと、いろんなところから来た人がいるので、多様性を認める文化があります。いろんな働き方があるよねって、みんなが互いに認められていると思います」
続いて、Umamiさんが回答。「僕はLINE Fukuokaにいるんですが、LINE Fukuokaは外国籍のエンジニアが6割強とけっこう多いんです。なので、みんなの考え方も全然違う。多様性がありますし、それをみんなが受け入れて、良いものを作っていこうという文化があります。コミュニケーションも英語が中心です。僕も入社した時は英語がしゃべれなかったんですが、外国の優秀なエンジニアを連れてこようということになった時に、みんなでチャレンジして、みんなで英語を勉強しました」

この他にもたくさんの話がやりとりされて非常に楽しい会合だった。

取材していて思ったのだが、LINEとHHKBの人脈ができたということで、LINEからHHKB用のなにかアプリが出るとか、HHKBからLINEに特化したモデルが出るとか、そういうコラボが、こんな関係性から生れたりしないだろうか? 筆者の思いつきでしかないが、HHKBのLINEスタンプなんていうのも楽しそうだ。「無刻印ですから!」とか、「馬の鞍!」とか、そういうスタンプがあると面白そうなのだが。

(村上タクタ)

(最新刊)

flick! digital 2021年8月号 Vol.118
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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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