お役所が、爆速ITに目覚めたら? Zoom、Slackが三鷹市と協定を締結
- 2021年11月29日
お役所仕事vsシリコンバレー流スピード感
『お役所仕事』という言葉があり、地方自治体の仕事は、形式的で時間がかかり、効率が上がらないものだと思っている人が多い。
しかし、実際に地方自治体で働く人に話を聞くと、楽な仕事ではない。処理する仕事のひとつひとつが、誰かの人生そのものなのだから税金を取り間違えたとか、投票用紙を配り忘れたなんていうことは絶対に許されない。たとえ、300万人の市民がいようとも、1件のミスも許されないのが役所の仕事だ。
また、年金課に勤めていた知人によると、年金の未納の督促の連絡がつかず、自宅に行ってみると首を吊っていた……ということもあったという。すべての人を対象とする仕事だけに、一番困窮している人、一番特殊な事例にも役所が対応する。
その正反対が、シリコンバレー、スタートアップの仕事スタイルだ。とにかく、効率とスピードが大切。間違っていれば、あとで修正すればいい。早くたくさんのトライをするから、大きなゴールにたどりつける。
SlackやZoomはすでに『スタートアップ』や『ベンチャー』でもないけれど、彼らのワークスタイルを象徴するツールではある。『お役所』が、Slackや、Zoomを活用して、サクサクと仕事を進めてくれれば、何かが変わるような気がする。
三鷹市とSlack、Zoomの提携
そんな夢のある提携が、三鷹市とSlack、Zoomの間で結ばれた。
提携内容は、『市民参加と協働のまちづくりの推進に関すること』『地域コミュニティ創生に関すること』『職員の働き方改革の推進に関すること』『オンラインを活用した市民相談に関すること』の4点。
調印式、発表会は、オンラインで行われ、ZoomのZVC JAPAN社長の佐賀文宣氏は「対話を重視する自治体で、Zoomを活用いただくことで市民の声に寄り添った行政サービスが展開されることを期待している。すでにZoomだけでいえば使っていただいている自治体もあるが、こうした知見を活かしながら三鷹市とさまざまな取り組みを行いたい」と述べた。
セールスフォース傘下となり、セールスフォース・ドットコム Slack 日本韓国リージョン事業統括 カントリーマネージャーとなった佐々木聖治氏は、「街の声を聞いたり、対話することでまちづくりのコミュニティ形成を実現する基盤のひとつとして採用してもらえたことは喜ばしい」と述べた。
SlackやZoomそれぞれを利用している地方自治外はあるが、こうして両方のサービスを、調印式まで行って公式に導入を発表した自治体は他にない。そういう意味でも非常に新しい取り組みだといえるだろう。
現在のところは、上記のように市民とのやりとりなどに関して導入されるということなので、市役所の運営の中枢で使われるというわけではなさそうだが、導入した経験をお持つことでより積極的な導入が行われることを期待したい。
オンラインの発表会を取材した限りでも、導入はまだまだこれからという風情もある。
手慣れた発表会であれば、発表と同時に詳細を解説したプレスリリースを打ったり(登壇者の肩書きや、そもそも何を目的にした提携なのかなどの情報は、口頭ではなく正確なテキストでいただいた方がスムーズ)、それぞれの高解像度画像を提供していただけたりするものだが、そのあたりまだ不慣れな感じがした。メディアがあまりワガママを言うものではないと思うが、リモートの取材しかできないので、十分な画質のデータをご提供いただけるかどうかは、情報のクオリティ感をかなり左右するのだ。
どのように活用されていくのか、今後の経過も含めて見守っていきたい。
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。