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J-WAVEの台本共有にiPadが大活躍! 提案者のサッシャさんに、その理由を聞いた

「絶対にミスできないから『紙』」という意見は強かった

ミスの許されない現場では『昔ながらのやり方』が好まれる。

絶対にミスの許されないラジオの生放送の現場はその典型だといえるだろう。昔から変わらず紙の台本が使われてきた。なにしろ、ラジオ番組は一瞬の空白もなく遅滞なく進行しなければならない。デジタル機器を使ってフリーズしたり、操作に手間取ったりしては困るのだ。

しかも、年齢も背景もさまざまな多くの人が関わるから、誰もが間違いなく扱える紙の台本を変えることはできない。そう思われてきた。

その既成概念を覆し、台本をiPadで共有することを提案したのは、J-WAVEの看板番組のひとつともいえる、月曜日から木曜日の朝9:00〜13:00の帯番組『STEP ONE』のナビゲーターを務めるサッシャさんだった。

業界の常識を覆したサッシャさんの提案

このラジオ業界の常識を大きく変えるきっかけとなったのは、やはりコロナ禍だった。

感染症対策として、収録ブースに入る人数を制限しなければならなかったのだ。従来は、ナビゲーターの方々の他に、構成スタッフがスタジオに入って追加情報などを提供していたりしていた。しかし、コロナ禍以降、ブースに入るのはナビゲーターだけということになったのだ。

そうなると、追加情報や修正指示を伝える方法が制限される。

この問題を解決するために『台本をiPadに取り込もう』という提案をしたのがサッシャさんだった。

「従来は修正があるたびに台本をスタッフの人数分コピーしてたんですよ。台本には、セリフはもちろん、紹介する曲名やアーティスト名、スポンサーに関する紹介などがすべて書き込まれています。誰かが違うバージョンの台本を持っていたりすると、事故の元。だから、かならず全員に配る。台本には裏紙も使えません。間違えて読んでしまったら困りますからね。だから、台本のデジタル化は、紙の消費量の削減という意義も大きかったのです」と語るのは、J-WAVEのコンテンツプロデュース部長の渡邊岳史さん。

「新型コロナウィルス感染症が日本でも流行し始めて、2020年の4月には緊急事態宣言も発令され、ラジオ局としても働き方を変えなければなりませんでした。可能な限り在宅勤務で対応し、ミーティングはオンラインにし、番組に中継で参加してもらったりと工夫をしましたが、エンジニアなど最低限のスタッフはスタジオにいなければなりません。収録ブースの中に入る人数も削減する必要がありました。ナビゲーターはアクリル板で仕切って入ってもらうにしても、構成作家さんが入らなくても済む方法を考える必要がありました」

構成作家は、番組進行中にも台本に手を加える。たとえば時間が足りなくなったらコンテンツを省略するなど、番組の進行に応じて、台本を修正する必要があるのだ。ナビゲーターが話しやすいように追加情報を提供することもある。以前なら収録ブース内に入って、書き加えたメモを渡したりしていた。それに替わる方法が必要だった。

台本に対する手書きの書き込みもiCloudで共有される

サッシャさんは、新しいデジタルガジェットを使うのが好きで、以前から利用していたiPadに台本を取り込むことができないかと考えていた。

最初に試してみたのは、2019年の元日の特番だった。遠隔地との中継があったのだが、その台本にiPadを使ったのだという。

「J-WAVEに2台用意してもらって、僕も1台持っていたから3台で使いました。非常に上手くいったので、その後も折りを見て活用するようになりました。Google Docsとか、ウィンドウズのオフィス365とか、いろいろ試してみましたが、結局のところiCloudを使うのが一番便利でした」とサッシャさん。

「iPadだけでなく、MacやiPhoneでも閲覧したり、書き込んだりできるのも便利です。プロデューサーさんが在宅勤務で家にいてもチェックを続けてもらうことができます」

ナビゲーターは常に台本にいろいろと書き込むのだそうだ。追加情報、忘れちゃいけないこと、時間があれば付け加えたい情報、自分で調べたことなど。iPadなら、Apple Pencilを使って手書きで書き込むことができる。どこにでも自由な文字サイズですばやく書き込めるのがiPadのメリットだ。パソコンではこうはいかない。

「台本はPagesで共有しているので、構成さんの書き込みを我々も見ることができます。また、私の書き込みを他のスタッフも見ることもできます。収録ブースの外にいるサウンドエンジニアにも、感染症予防のために在宅で仕事をしている構成さんも、同じ台本の書き込みを見ることができるのです。書き込みの色を人によって変えることで、誰が書いたか分かるようにしました。私は青で、萌菜さんは赤、構成さんは緑……という具合になっていますので、他の人の書き込みを確認したり、誰かに質問に答えてもらったりすることもできます」

サッシャさんと一緒にSTEP ONEのナビゲーターを務めるノイハウス萌菜さんもこう語る。「紙の台本だと、ページをめくるときのペーパーノイズにとても気を遣ったのですが、iPad ならそんな心配もありません。また、ページを跨いだコンテンツをスムーズに読むのが難しいというような問題もありません。ずっと縦にスクロールしていけますから」

災害時の放送継続性も向上し、紙の無駄も減る

導入してみるとiPadの台本はメリットばかりだったということで、J-WAVEではiPadを多数購入して他の番組でも導入することになった。

オリンピックの特番で、他の場所から収録に参加することもできたし、構成作家さんが体調が良くなかった時に在宅で対応してもらうということも容易になった。大雪で出社できないなどの自然災害の時も、多くのスタッフは在宅で対応できる。

台本を紙から、クラウド上のPagesのデータにすることで、コミュニケーションロスも減ったし、災害リスクに対するコンティニュイティ(継続性)も確保できるし、紙の無駄も減りサステナビリティも向上したということだ。いい事づくめである。

目の前の課題をデジタルのソリューションを活用して再構築することによって数多くのメリットが得られてるのだから、まさに身近なDXだと言えるだろう。平日お昼のJ-WAVEでサッシャさんや萌菜さんの声を聞いたら「今、iPadの台本を見て話してらっしゃるんだな」と思っていただきたい。

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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