最新型ベントレーでクラシックカーイベントに参加【by 九島辰也】
FUNQ
- 2022年04月26日
これも「大人の遊び」なんですよ。
人生を楽しく過ごす上で“遊び”は欠かせない。息抜きの時間にどれだけ興味あるものに没頭できるかが、けっこう大事だったりする。ただ、歳を重ねるにつれ趣味趣向は変わる。というか、そのステージが上がっていくのは不思議なことではない。「大人買い」なんて言葉がまさにそれだろう。子供の時より使えるお金があるのだから当然だ。
クルマを趣味とする人もまさにそんな過程を通る。中古車をファーストカーに買うところから始まって、カスタムしたり、高級車に買い替えたりとライフスタイルの変化によって、ステージを変える。ここで紹介するクラシックカーラリーはその最たるものだろう。最新モデルに行き着いたら、今度はオールドスクールな世界に足を踏み入れる、てな感じだ。
参加したのは4月上旬に行われた「スプレンドーレ東京」。その世界では知られる「スプレンドーレ伊香保」の兄弟ラリーである。ただラリーと言っても、最近トヨタがチカラを入れているWRCみたいなものではなく、走るのは公道。コマ図に従ってゴールするゲーム感覚な走行会だ。途中買い物ゲームやスタンプポイント、PC競技などが行われる。
やっかいなのはPC競技で、これが難しい。30mとか50mとかを予め決められた5秒とか8秒といったタイムぴったりで走るというもの。なんと100分の1秒単位で計測される。なので、偶然はほぼなく、慣れた参加者はラリーコンピューターや専用のタイムキーパーを駆使する。言うなれば、本当の競技だ。
参加車両は1920年代から1980年代まで幅広い。まるで動く博物館である。日常生活の中ではめったに拝めない車両ばかり。多いのは英国車やイタリア車だろう。ただ年式やモデルの規定は主催に委ねられる。なので、今回はクラシックミニやモーガン、AE86は年式を問わず参加可能となった。
そんなラリーでボクが参加したのはゼッケン1番のベントレー・コンチネンタルGT V8。スポンサーであるベントレージャパンが用意したリードカーのドライバーである。先頭車でもあるし、クラシックカーに混じって現代車は相当目立つ。助手席はベントレージャパンの横倉さん。旧知の中の彼がコマ図を読んだりタイムキーパーを操作してくれる。
不思議なのはコンチネンタルGT V8がミュージアムに飾られそうなクラシックカーに混ざってもまったく引けを取らないこと。1950年代のRタイプコンチネンタルをデザインモチーフにしているからなのだろうか、モダンクラシックともいえるボディがいい感じに馴染んでいる。2019年にブランド設立100周年を迎えた歴史は伊達じゃない。
さらにいうと、久しぶりにステアリングを握ったコンチネンタルGT V8の走りはハンパじゃない。550psを発揮するエンジンパワーは弩級で、アクセルを深く踏み込めば身体がシートに押し付けられるほどの加速を得る。また、それでいて乗り心地がいいのも美点。エアサスペンションで減衰圧を変えられるが、ドライブモードを“SPORT”にしても快適さは担保される。路面の段差での当たリは柔らかく、ゴツゴツとお尻を突き上げる振動は皆無だ。
インテリアの仕上がりの良さもベントレーの醍醐味だろう。高級家具のようなレザーを使ったシートやトリム、天然木材の表皮を使ったウッドパネルはうっとりしてしまう。「本物」とはまさにこういうのを指すに違いない。運転していると優雅な気分になる。煽り運転なんてする気にもならなければ、されることもない。まさに大人のための一台だ。
イベントは東京プリンスホテルをスタートして、ホテル日航成田で無事ゴール。スタートもそうだったけど、ゴール地点で整然と並ぶクラシックカーは見応えたっぷりである。その後表彰式でちょっとだけ賞をいただいてすべての行程を終了し解散。いつもはクラシックカーで参加しているがたまにはこんな感じでのエントリーもわるくない。これが大人の遊びかな。趣味の世界は永遠に続く。
九島辰也
モータージャーナリスト兼コラムニスト/日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員/2019-2020日本カーオブザイヤー選考委員/日本ボートオブザイヤー選考委員/(社)日本葉巻協会会員
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV/ヨーロピアンSUV&WAGON(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長、フリーペーパー「go! gol.(ゴーゴル;パーゴルフ刊)」編集長、アリタリア航空機内誌日本語版「PASSIONE(パッショーネ)」編集長、メンズ誌MADURO(マデュロ)発行人・編集長などを経験する。2021年7月よりロングボード専門誌「NALU(ナルー)」編集長に就任。
モータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、ゴルフ、葉巻、ボートといった分野のコラムなどを執筆。クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。
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