レアなお宝がどっさり!ファッションジャーナリストの【捨てられない】コレクションとは?

なぜ人は収集するのか。物欲なのか、独占欲なのか。「貴重な文化を後世に遺すためだ」という人もいる。だから彼らのポケットの中を覗くことで、趣味を人生の中心に据えるに至った価値観をあきらかにしよう。

上の画像に写っているものにはまったく脈略がないようだが、ひとつだけ共通していることがある。ファッションデザイナーから届いたコレクションの招待状や、会場に用意されたギフトなのだ。パリコレなどに招かれるファッションジャーナリストが、長年受け取ってきた秀作の数々。招待された関係者だけが手にできる、非売品で、希少価値が高いお宝を公開する。
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ファッションジャーナリストである藤岡篤子さんは、 世界4都市で開催されるコレクションを20年以上取材してきた。招待状や会場で貰ったギフトの中には現地で処分したものも多いが、時代背景、個性、ユーモアに溢れたものだけを持ち帰ってきた。

結果的に収集品はカオスのような様相に。その貴重な収集品を、代官山蔦屋書店2階にあるAnjinで見せてもらった。

デザイナーの世界を凝縮した招待状

パリのファッションデザイナーが 新作を発表するパリ・コレクション。通称「パリコレ」には、世界中のメディア関係者やアパレル業界関係者、セレブなどが招待される。けれど、どんな招待状が、ファッションデザイナーから届くのかは知る由もない。

「インビテーション収集家がいるんだけど、興味ない?」と知人に紹介された。(結婚式の招待状じゃなあ)と思いつつ、収集家の住むマンションへ向かった。待っていたのが、パリコレをはじめとするロンドン・コ レクション、ミラノ・コレクションの招待状であった。
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招待状はこういうものだという概念を誰もが持っていると思う。ところが、ファッションジャーナリスト、藤岡篤子さんが集めてきた招待状は常識外、まさにカオスだった。

「このハイヒールは、なぜか左足だけなんですが(笑)、マローン・スリアーズの招待状です。インソールにコレクション会場や日程が刻まれています。オルゴールだったり、拡声器だったり、ステラ・マッカートニーは、いつもユニークな招待状を送ってくれます」
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ルイ・ヴィトンの2000年春夏 コレクションは、招待状がプリントされたスカーフだった。グッチからは、LPレコードやロウソクが入った黒魔術セットのようなインビテーションが届いたシーズンもある。
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カード類も多い。といっても結婚式の招待状のような定形的なものではなく、創意工夫を凝らした、思わず見とれてしまうアーティスティックなカードが送られてくる。
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「ドルチェ&ガッバーナのインビテーションは、ふたりの世界観がつまった、ドラマチックなデザインのカードが多いですね。シンデレラ城のような絵が表紙に描かれた絵本だった季節もあります。開くとディズニーの音楽が流れてくる仕掛けでした。オモシロイと思いません?」

藤岡さんがファッションジャーナリストになったのは20数年前。ファッションディレクターを退職した藤岡さんに、イタリアの女性ファッション誌の日本版編集部から声がかかった。

ロンドン、ミラノ、パリのコレクションを見て原稿を書き、講演もしてほしいという依頼だった。4週間かけてコレクションを視察した。その後、他誌や新聞社の依頼、あるいは欧州各国の大使館の招待を受け、コレクションの取材を長年続けてきた。

招待状とギフトでトランクがあふれる

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一般的に招待状は自宅や会社に送られてくる。ところが、コレクションのインビテーションはそうではない。コレクション会場がある各都市には、ファッションデザイナーをたばねる事務局がある。その事務局に各メディアのジャーナリストとして登録する際、現地での宿泊先も申請しなければならない。なぜなら、そのホテルにインビテーションが届くからだ。国内で受理するなら、かさばるものは持たずに出国できる。ところが、コレクションのインビテーションの送り先は、現地ホテル。別途プリントされた招待状も同封されているので、バッグに入りきらないインビテーションは当日持参しなくてもいいように配慮されている。
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とはいえ、インビテーションを送ってくるファッションデザイナーの数は、ロンドンで40社、ミラノで60 社、パリで100社。

会場の席に着くとロゴ入りのクッションやブランケット、バッグなどのギフトが用意されていることも多い。「コレクションは、効率よく回れるようニューヨークで始まり、ロンドン、ミラノ、パリで終わる日程が組まれています。

私はこれを〈コレクションサーキット〉と呼ぶのですが、春夏と秋冬のコレクションで年に二度、それぞれ4週間世界中を飛び回っています」

つまり、4 週間分の服や靴を用意しなければならない。加えて、先々で受け取るインビテーション、コレクション会場に用意されたギフト、プレスリリースも持ち帰ることになる。デザイナーのコレクションを取材するのなら、そのブランド服を着ていくのが望ましいが、物理的に不可能。そのためブランド名がわからない黒かグレーの、いろいろなバージョンのニットを選び、毎日異なる装いに見えるように着こなしている。
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「不要なものは現地に置いてきます。でも、デザイナーの世界観を凝縮していたり、その年のコレクションコンセプトを表したインビテーションやギフトは、時代を体現した、可愛 くて素敵なものばかり。しかもコレクション用に作ったオリジナル品が多いんです。おかげで自然と集まってしまいました」

ニューヨーク・コレクションも取材しているが、彼の地にはヨーロッパのような凝ったインビテーションが少ないと藤岡さんは指摘する。「ニューヨークの招待状は、ほとんどがメールです。そのメールをスマホで見せてチェックイン。合理的すぎて、ニューヨーク・コレクションは味わいが薄れてきました」

9 月には、コレクションサーキットが始まる。今年はどんなお宝が収集品に加わるのだろうか。

(出典:『Lightning 2018年9月号 vol.293』)
(ライター:千葉泰江)

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