神の導きか、14歳でその存在に衝撃を受け、ビートルズに生涯を尽くす伝道師を訪ねた。

なぜ人は収集するのか。物欲なのか、独占欲なのか。「貴重な文化を後世に遺すためだ」という人もいる。だから彼らのポケットの中を覗くことで、趣味を人生の中心に据えるに至った価値観をあきらかにしよう。

赤穂浪士で有名な兵庫県赤穂にユニオンジャックを掲げた個人博物館がある。その館内にはビートルズ・コレクター、岡本備さんが集めてきた貴重なお宝が展示されている。けれど、彼らが弾いたギターも、彼らが着た服もまったくない。なぜ4人の愛用品がないのか。ビートルズに惚れ込み、「ビートルズ文化博物館」を開設した岡本さんの思いを取材した。

ビートルズを広める伝道師でありたい

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(上写真)ビートルズ・エバンジェリスト/ビートルズ文化博物館 館長 岡本備さん

62年10月5日4人の若者がデビューシングル「ラブ・ミー・ドゥ」をリリース。その後、7年半もの間、彼らの音楽は英国本国はもちろん、世界を席捲し続けた。あれから半世紀余り。いまも衰えない人気と影響力を持つ彼らを、20世紀のキリストにたとえる人がいる。

「ビートルズ文化博物館」(兵庫県赤穂市)の館長、岡本備さんだ。「宗教という意味ではなく、ビートルズは2000年前に現れたキリストと同じだと思います。キリストの出現で世界が変わったように、ビートルズが世界を変えたと言っても過言ではありません」
 
岡本さんは14歳のとき(’65年)、ビートルズと出会った。クラシック好きでロックは門外漢だったが、馴染みのレコード店の薦めで「ア・ハード・デイズ・ナイト」を購入。針を落とした瞬間、衝撃が走った。「最初の一音に、青春の輝き、未来に対する不安やわくわく感が入り混じった複雑な感情が表現されていました。『あ、これや』って(笑)。あのとき、生涯ビートルズで生きていくことになると直感しました」

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(上写真2点)’76年頃、渡英先でジョージファンの英国人女性(20歳)から貰ったスクラップブック(全2冊)。「博物館を作ったら、これを展示して欲しいと頼まれました」

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(上写真)4人のサインが入った赤いレーベルのレコード。通常レーベルは黒。初期盤(1000枚)のみ、赤だった。

28歳のとき、ビートルズイベントを開催する目的もあり、デザイン会社を設立。9年後、吉祥寺でビートルズ展を実施。以来、ビートルズ文化を広める伝道師として年に一度以上、ビートルズイベントを日本各地で開催してきた。

当初、自分が大好きなビートルズを紹介するイベントだった。ところが時代の流れもあり、ジョン・レノンは知っていても、ジョンがビートルズのメンバーだったことを知らない若者が徐々に増えていった。「文化としてのビートルズを人類のために遺すべきだと思い、66 歳のとき(2016年)、ビートルズ文化博物館を故郷、赤穂に開設しました」

ビートルズは愛と音楽と平和の革命家

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(上写真)ハッピ姿のビートルズが写った、日本初公演の海賊版も所有する

ビートルズは無形文化も数多く遺していると岡本さんは説く。ビートルズが世の中を変えたこともそのひとつだ。デビューしたばかりの彼らに日本中の若者が夢中になった。一方、大半の大人がビートルズに批判的だった。「あんな音楽を聴く奴は不良だ、あんなものを聴くと進学や就職に差し支える」とこき下ろした。

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(上写真)「叫喚の中のビートルズ」の見出しで、日刊スポーツは’66年7月1日の1面で、その前夜の日本公演初回の様子を伝えた

「ビートルズに否定的だったのは、英国の大人も同じです」。’65年、ビートルズがMBE(メンバー・オブ・ブリティッシュ・エンパイア)勲章を貰うことが決まった。すると既に叙勲していた軍人が反発。「ロックバンドごときにやるような勲章はいらん」と勲章をバッキンガム宮殿に返上する者が出た。

「そのとき、ジョンはこう言いました。『彼らは戦争で人を殺して勲章を貰ったんだろ。僕達は人々を喜ばせて貰うんだから、僕達のほうが貰う価値がある』って。このようにビートルズは、『価値の転換』という数々の革命を起こしました」

彼らの影響で大人の若者に対する見方が変わった。「ビートルズは’60年代の社会、文化、思想、映像、ファッション、生活スタイルに大きな影響を与えました。その後の世界を変えたという意味で、ビートルズは愛と音楽と平和の革命家でした」

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(上写真2点)ファンの間で有名なブッチャー・カバーも所有している

「ビートルズ世界無形文化遺産国際会議プロジェクト」をスタート

この夏、岡本さんは新プロジェクトをスタートさせた。「ビートルズ世界無形文化遺産国際会議プロジェクト」だ。「ビートルズは僕らと同時代に生まれた誇るべき文化遺産。彼らの偉業を現在、そしてより良き未来のための人類の叡智として遺すことが伝道師としての私の使命」。生涯を尽くしたいというビートルズへの思いが、岡本さんの一番の宝物なのかもしれない。

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【DATA】
ビートルズ文化博物館
住所:兵庫県赤穂市加里屋2059 
営業時間:11時~16時 
休館日:月・木曜曜日
入館料:200円
https://beatles21.jimdo.com/

(出典:『LIGHTNING 2018年11月号 Vol.295』
(エイサイト編集部/千葉泰江)

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