アメリカ生まれのキャラクターに魅せられた、パン職人の城がスゴかった……

愛くるしいキャラクターグッズで彩られた、三軒茶屋のベーカリー。

なぜ人は収集するのか。物欲なのか、独占欲なのか。「貴重な文化を後世に遺すためだ」という人もいる。そんな彼らのコレクションを覗くと、趣味を人生の中心に据えるという生き方、そこに至るまでの出合いと価値観が垣間見れ、なかなか面白い。

懐かしいキャラ達が 2階のカフェに勢揃い。カウンターには、かつて活躍 したマクドナルドのキャラクタ ー椅子が並んでいる。左から グリマス、ハンバーガー、フラ イガイ、ポテト。もちろん大人が使ってOK

今回取材に訪れたのは、三軒茶屋の人気ベーカリー。1階も2 階もアメリカのキャラクターグッズで埋もれていおり、パン屋なのか、グッズ屋なのか……。その昔ファストフードの店で見かけた、キャラクターをモチーフにした椅子や看板の他、アメコミのキャラクターなど、懐かしくて、心躍るものがあちこちに展示されているのだ。アメリカン・ヴィンテージ・キャラクターに魅せられた、パン職人の職場でお話を伺った。

出自が違うキャラが一堂に会するベーカリー。

2階カフェスペース。見覚えのあるキャラクターたちが、派閥(?)を超えて同じ空間にいる

ここは、アメリカン・ヴィンテージ・キャラクターの聖地。アメリカの漫画キャラクターや、ファストフードなどの様々な企業のアドバタイジング・キャラクターが所狭しと飾ってある。「出処も企業も異なるキャラクターなのに、一緒に飾ってあってもまったく違和感がないんですよ。というよりも、一緒だからこそ感じる魅力もあります」とパン職人であり、アメリカン・ヴィンテージ・キャラクター収集家である与儀高志さんは目尻を下げる。

たとえば、冒頭の写真をご覧いただきたい。与儀さんを囲むキャラは、すべて出自が異なる。右手で抱えているのは、子ども番組に登場する恐竜の「バーニー」。左手は、遊園地キャラの「マジックマウンテン・トロール」。左右の椅子はマクドナルドのキャラだが、一緒に並んでいても不自然ではないどころか、馴染んでいる気さえする。

パン職人とオタクの二刀流

与儀さんはパン職人として、「nukumuku」というベーカリーを三軒茶屋で営んでいる。1階はベーカリー、2階にはカフェを併設。3階の自宅では、親子3人がコレクションに囲まれて暮らしている。なかでもカフェのある2階は圧巻。壁面やカウンターなどにお気に入りのアイテムが、あちこちにディスプレイされているのだ。ヴィンテージ・キャラクターの間と化した2階に、一歩足を踏み入れた瞬間、「可愛い!」と思わずもらす人が多い。まさに今でいうインスタ映えな店なのだ。「自分自身可愛いものが好きなんですよ。パン職人とオタクの二刀流なんで(笑)」と与儀さん。

キャラクターに囲まれた写真を見せたら、「パンに囲まているときよりもいい顔
をしているなあ」とご満悦。もともとアメリカの旧いものや、可愛くてポップなものが大好きだった。幼少の頃から収集癖があったとはいえ、ヴィンテージ・キャラクターを集めはじめたのは、ある骨董店との出会いがきっかけだった。

独立を機に、収集家への道へ。

店内に飾られた、からくり時計。マクドナルド用のからくり時計「セイコー・ファンタジア」の旧モデル。 いまも時を刻むが、からくりは壊れて動かない。昔はどこの店にもあった気がするが、現在は丸型のからくり時計に変更された

20歳でパンの修業を始め、30歳で独立。練馬区に開業したその翌年、都内にユニークな店があることを知った。自分の部屋のような店内で、客に寛いでもらえるベーカリーにしたい。そんなことをおぼろげに考えていた矢先、ポップで、可愛らしいアメリカン・ヴィンテージ・キャラクターで埋めつくされた、まばゆいばかりの骨董店に足を踏み入れたのだ。「あのとき、こんな感じの店にしようと決意しました」。それから間もなく収集を始め、お宝を店に飾ることにした。徐々
に収集品が増えていき、10年後の2016年に現在の場所に移転した。

客の子どもが、貴重なコレクションを壊したり、傷つけることもある。けれど、自分の責任で展示しているので、「仕方がない」と割り切ることにしている。ときにスタッフが、カフェで使っている大切なキャラクター・グラスを割ってしまうこともある。「そんなときは心で泣いて、笑顔で『大丈夫だよ』と諭すように心がけています」

小学生の時の記憶が、キャラクター収集に駆り立てる

2階のカフェだけでなく、 カフェに向かう階段にも要注意! ウェンディーズのウ ェンディーちゃん、マクドナルドのハンバーグラーなどの可愛らしいキャラクター、ダッチボーイなどのアドバタイジング・グッズが出迎えてくれる。映えるスポットだ。

ファストフードのキャラが多いのは、マクドナルドのような企業が、キャラクターグッズを数多排出してきた長年の歴史もある。けれど、与儀さん自身がファストフードのキャラが大好きだからだ。’80年代、小学生の頃、家族でプレイランドがあるマクドナルドへ出かけた。ハンバーガーを食べ終えた後、両親に見守られながら、兄や弟と一緒に、プレイランドで遊び呆けた。そのときの愉しかった記憶が、いまも脳裏にしっかりと刻まれている。

キャラクターが描かれたチャイルドチェア。キャラクターチェア。からくり時計。いまのマクドナルドにはない、懐かしいキャラクターグッズを2階に集めたのは、家族で食べに行った、愉しかった、あの時代のマクドナルドを再現したかったからだ。「キャラクターを探しているときも、店にいる時も、子どもの頃のノスタルジーを感じるし、癒やされています」。

マニア垂涎のスヌーピーグッズは必見

そして、特筆すべきは、スヌーピー・グッズかもしれない。スヌーピーは、チャールズ・モンロー・シュルツが1950年から描き始めた、愛すべきキャラクターだ。誕生以来スヌーピーと仲間達のキャラクターグッズが、数多く製品化されてきた。その中で一番最初に出たフィギュアや、紙製のスヌーピー・グッズが2階に飾ってある。「自宅に飾るだけだったら、ここまで集めなかったかもしれません。コレクションを見てもらえるのは、ある種の快感です」と、収集が自分のためでないと与儀さんは語る。

ソバカスとオーバーオールが愛くるしい「デニス」と、デイリークイーンがコラボしたアメリカのポスター。デニスは、 ’50年代に流行ったアメコミの人気キャラクター。日本では’63年頃、アニメ「わんぱくデニス」がTV放送された

ヴィンテージ・キャラクターに囲まれた部屋で食事をし、癒やされてほしい。家族と一緒に、プレイランドがあるマクドナルドへ出かけるときのワクワク感。与儀少年が感じた、期待に胸を膨らませた、そんな思いも食事と一緒に、「提供できたらいいなあ」と考えて生まれた唯一無二のベーカリー。ワクワクしに訪れてみてはいかがでしょうか?

 

※掲載情報は取材当時のものです。

(出典:『Lightning 2019年9月号』)

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PROFILE

ラーメン小池

Lightning編集部 ディレクター

ラーメン小池

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部を経て、Lightning編集長を務めた後、現ディレクター。アメリカン・カルチャー、特にヴィンテージ・アメリカンをこよなく愛する。クルマから雑貨まで、あらゆるアイテムに食いつくのが悪い癖

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