メルセデスベンツ史上最も戦闘的な4ドアセダンを覚えているか?

ツインカムエンジンを搭載し、レースで勝つために生まれたベンツ。

日本でも「小ベンツ」と呼ばれ大ヒットしたメルセデスベンツ190シリーズ(W201型)は、’82年に登場。それまで中〜大型車専門のメルセデスベンツに初めて登場した小型車となった。

この190シリーズは、レースにも積極的に参戦。当時のツーリング選手権に出場すべく、’86年に2.3リッターエンジンをベースに、イギリスのコスワース社がチューニングしたツインカムヘッドを搭載。通常の2.3リッター搭載車と区別すべく、2.3-16(16はバルブ数を表す)と呼ばれるスポーティバージョンをリリースする。このモデルは、当時の規定で12カ月の間に5000台を生産するという、ツーリングカー選手権のグループAホモロゲーション取得を目的に市販されたモデルだった。後にDTMのレギュレーション改定により排気量が拡大され、’88 年に2.5-16となる。日本にもマニュアルシフト車が正規輸入され、スポーティなイメージを一気に広める結果となった。

【Mercedes Benz 190E 2.5-16 Evolution II Ver.】90E 2.5-16をベースに貴重なエボリューションIIを再現した外装を まとったこの車両は、Auto Romanが手がけた精巧なりプロダクションモデル。もちろん機関系もしっかりと手が入れられているため、現代の路上でも普通に走ることができる(オーナー/栄井孝広さん)

この2.5-16をベースにさらなる過激な外装をまとって登場したのが、今回紹介するエボリューションモデルだ。これは当時のグループA規定でホモロゲーションモデルをベースに年間500台生産すればエボリューション(進化型)モデルが公認されるという規定に基づくもの。’89年にまずはエボリューションⅠが、次いで’90年の途中により過激な外装をまとったエボリューションⅡが登場。どちらもホモロゲーション取得のために各500台生産された。日本にもごくわずかに正規輸入されたが、その後の並行輸入された車両を含めて幻といっていい存在だ。

実はここ数年来、このエボリューションモデル人気が再来し、価格も高騰しているという。当時新車で輸入されなかったアメリカ市場では、25年以上経過したため輸入できるようになり、ようやく近年登録が可能となった。そのためアメリカのオークションでも高値で取引されるようになったためだ。今後はアジア圏なども含めた需要拡大によってますます希少価値は高まっていくだろう。

そんなエボリューションモデルを現代に甦らせたのが、群馬県のAuto Roman代表の諸井さんだ。190E2.5-16をベースに、オリジナルのエボリューションⅡよりも片側20㎜拡幅した専用のボディキットを装着し、迫力のボディを再現。もちろんベースとなった190E2.5-16もしっかりとリコンディションされており、現代の路上でも快適なドライブが可能なのだ。

レースで勝つための外装をそのまま市販した、究極の異端児の細部をチェック!

そんな、Auto Roman代表の諸井さんの手によって、現代に蘇った【Mercedes Benz 190E 2.5-16 Evolution II Ver.】の細部を見ていこう。

張り出したフェンダーと巨大なウイングをまとったエボIIの姿は、まるでヤンチャなチューニングカー。この姿のままヤナセで販売されていたんだから、いかに異端な存在だったかがわかる。

派手なリップスポイラーはもちろん、張り出したオーバーフェンダーに合わせて通常モデルより大幅に拡幅されたフロントバンパーもエボIIの専用装備となる。

独特なアーチを描くオーバーフェンダーは、エボIIの大きな特徴のひとつ。この車両はオリジナルのエボIIより片側20㎜拡幅されたフェンダーを装着する。

巨大なリアウイングは決してダテではなく、アッパーとロア共に翼端板の角度を調整可能。コースに合わせたダウンフォースの調整が可能となっている。

続いてエボIIの内臓部を見ていこう。

エンジンはイギリスのコスワース社がチューニングしたツインカムヘッドを搭載した直列4気筒の2.5リッター。取材車両は通常の190E 2.5-16をベースとしているため、最高出力は200馬力となるが、本物のエボⅡは230馬力オーバーを出力した。決してエンジンルームは、広くないため、ツインカムヘッドがかなり窮屈そうに収まる。

当時190Eは日本向けに右ハンドルを製造・販売し人気となったが、エボリューションモデルに関しては左ハンドルのみの販売となった。コスワースエンジン搭載車は、センターコンソールに3連メーターを標準で装備するのが特徴。またスピードメーターは260km/hスケールで、7000rpmからレッドゾーンという高回転型となる。元々のベース車両はオートマチックだったため、2.3-16モデルから5速マニュアルトランスミッションに換装している。シフトパターンは左手前が1速となるレーシングパターンだ。取材車両は純正シートのかわりによりホールド性の良いBRIDEのバケットシートを装着。ヘッドレスト部分にはAMGの文字が入る。

エボリューションモデルは、通常の2.5-16よりも大型のローターと専用キャリパーが備わる。取材車両は後の整備性を考慮して、ポルシェ用のブレンボキャリパーで強化。

30年前の車両とは思えないほど、現代に通用する走りとディテールが備わっている現代に蘇った【Mercedes Benz 190E 2.5-16 Evolution II Ver.】。ベンツらしからぬイカつい外観と、ホモロゲーションという官能的な響きに酔いしれる、40代のお父さん感涙のメルセデスベンツ史上最も戦闘的な4ドアセダンを現代の路上で愉しむ。選ばれし者だけが堪能できる、なんて贅沢な楽しみだろうか。

(出典:『Lightning 2019年10月号』)

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PROFILE

ラーメン小池

Lightning編集部 ディレクター

ラーメン小池

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部を経て、Lightning編集長を務めた後、現ディレクター。アメリカン・カルチャー、特にヴィンテージ・アメリカンをこよなく愛する。クルマから雑貨まで、あらゆるアイテムに食いつくのが悪い癖

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