
ターコイズの色・産地・模様から価値を評価! 正しいターコイズの選び方。

サカサモト
- 2019年10月26日
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かつてのシルバージュエリーのブーム以来“ネイティブ・アメリカンの石” というイメージが根強く残るターコイズ。現在も高い人気を誇りシルバーと共に装着している人も多いが、ターコイズについて詳しく理解している人は決して多くなく、知れば知るほど底が見えない世界だと気付かされる。
そこで、ターコイズを選ぶ際に知っておきたい基礎知識を、ターコイズ界の権威ジョー・ダン・ロウリーが手掛けるターコイズジュエリーブランド「LFC(Lowry Family Collection)」を元に紹介していこう。
市場に流通するものの中で“ナチュラル”と呼べるものは、わずか10%。

「ターコイズは他の宝石にはない魅力に溢れているんだ。仮にダイヤモンドを例に挙げると、ダイヤの品質を決定付けるのは大きさ、色、透明度、カットの4種類と言われているけど、どこの鉱山で採掘されたかを知りたがる人は皆無なんじゃないかな。だけどターコイズは鉱山によって大きく価値が変動するし、色はもちろんマトリックスと呼ばれる柄によっても変わるユニークな判断基準になっているから面白いんだ。しかもアメリカの鉱山に関するなら先住民にまつわるストーリーも豊富だから男心をくすぐるロマンに溢れていると思うよ」
そんな様々な基準の中で価値や品質が決まるターコイズの世界。中でもジョー・ダンが最も魅力的なのは原石から削り出したまま無加工のナチュラル(天然)・ターコイズだと話す。

「宝石は無加工が当たり前の世界と思っている人は多いけれど、実は世の中に流通しているターコ
イズの90%は加工品や模造品などで、残りの10%しかナチュラル・ターコイズは存在しないと言われているんだ。この比率はどういう事かというと、鉱床に生成されるターコイズは宝石として使える硬度に満たない低品質の個体も多く採掘されるんだ。それらは硬度を上げる処理や染色などで人工的に宝石として使える個体に加工されるため、天然モノとは言えないんだよ。
だから原石をそのまま使えるナチュラル・ターコイズは極めて希少で色の深みや模様などは天然にしか出せないオーラがあるんだ。でもね、僕はその90%も10%もひっくるめてターコイズの魅力だと思ってるよ。こんなカルチャーを持つ石はまずないからね」
このように、一般的に見分けが難しいと言われるターコイズ。早速グレードの見方を学んでいこう。
ターコイズは「状態」「産地」「色合い」「模様」で評価する。
宝石のグレードや価値基準の中でも特に複雑と言われているナチュラル・ターコイズ。サイズはもちろん、色合いや模様の入り方など、多くの要素が絡み合いグレードを決定付けていく。そこで、まずはグレーディングの基礎となる部分を解説する。これさえ知っておけばターコイズの見え方がもっと面白くなるはずだ。
1.コンディション(状態)
まずはターコイズをグレーディングする初期段階として知っておきたい要素は天然(ナチュラル)か否か。どんなに美しく処理された加工・人工ターコイズも、ナチュラル・ターコイズの貴重さにはかなわないため、最も重要な要素のひとつであると言える。
2.産地
ブランド鉱山のターコイズとそれに似た特徴を持つ無名鉱山の石で、価値が大きく異なることからも産地(鉱山)は、価値に最も影響力がある要素である。世界的に有名な鉱山は採掘量の少なさや、色合い、美しい模様が人気の理由となっている場合が多い。今回取り上げるのは「LFC」に採用されているアメリカを産地とする石に限定する。
アメリカにおける鉱山の分布がこちら。特に良質のターコイズが手に入ることで有名なのがネバダ州だ。他にもアリゾナ州、ニューメキシコ州、コロナド州といった地域が産地として有名。それぞれの州で、すでに閉山されてしまっている鉱山、現在も採掘がおこなわれている鉱山、時折採掘がされる鉱山がある。人気のナンバーエイトは残念ながら閉山されてしまっている鉱山となる。
3.色合い
ターコイズの色の濃さは、石そのものの密度や硬度と比例しているため、濃い色の方が高いグレードに位置付けられる。ただし色の濃さは産地によって異なるため、異なる鉱山の石では判断できず、同じ鉱山で採掘されたターコイズでしか比較できない。
また、色の濃いターコイズは密度が高いため、皮脂汚れなどの異物浸透を防いで変色もしにくいといった性質を持っている。また色の濃い個体ほど採掘量が少ないため希少性も高く高価とされるのが特徴である。
4.透明度
ターコイズは岩の中に形成されるため、透明度が高いとされる石はターコイズ質以外の不純物をすべて排除するため、余分に削り出さなければならない。色ムラがなく純度が高いほどグレードは上になり、色も濃い方が希少とされている。
5.マトリックス(模様)
ターコイズの特徴のひとつであるマトリックス(模様)は構造の一部であり、酸化鉄などの内包物によって形成され、点や線など様々な表情を生み出す。ターコイズの魅力でありつつも、芸術的意味合いも含まれるため判断基準が曖昧だ。とはいえ均等かつ美しいマトリックスを持つ石は高く評価される傾向にある。また写真の上段4つのようなスパイダーウェブ(蜘蛛の巣のような網状の柄)は高く評価され、細かく入っている方が人気も高く、価値も高い。
6.マトリックス(模様)の色
鉱山に含まれる成分によってターコイズにもブルーやグリーンなどが生まれるように、マトリックスも同様に様々な色が作られる。グレーディングに関しては大きな影響力はないが、自然がもつ色とりどりの表情を楽しみたい。
- RED・・・赤みのある茶色が特徴的なレッド・マトリックス。ワイルドな印象を受けるため男らしいジュエリーに似合いそう。
- WHITE・・・まるで空に浮かぶ雲のような雰囲気を持つ白いマトリックス。やさしいコントラストのため女性にも人気が高い。
- BLACK・・・男女を問わず人気が高く、王道のブラック・マトリックス。パワーストーンらしい妖艶な佇まいを見せる。
- BROWN・・・レッドとゴールドの中間に位置するブラウンのマトリックス。薄い青との色合いもマッチしている。
- GOLD・・・ゴールド色のマトリックスは、ターコイズのブルーと相性抜群。縁起の良さそうなコンビネーションだ。
- WATER WEB・・・薄い色のターコイズに対して、マトリックスが濃い色のターコイズで作られる模様をウォーターウェブと呼ぶ。
聖地・ネバダの3大ターコイズを例にグレードを見てみよう。
世界中にあるターコイズの産の地の中で、アメリカにおける聖地といえばネバダ州であるが、中でも3大ターコイズと呼ぶにふさわしいのが、「Number 8(ナンバーエイト)」「Lone Mountain(ローンマウンテン)」「Lander Blue(ランダーブルー)」。
先に述べたように、ターコイズは鉱山によって色の濃さが変わるため、他の鉱山と比べることのできない。そこで3大ターコイズのそれぞれの鉱山で産出されたターコイズのグレードを見比べてみよう。左上から右下へとグレード順に並んでいるので、鉱山ごとに持つ色や柄の傾向も一目瞭然。同じものはひとつとない個性豊かな表情を堪能していただきたい。
Number 8(ナンバーエイト)

1925年に発見されたが、当時の地権者2人の意向により、1929年より採掘が始められた。1930年にテッド・ジョンソンが地権者の1人であるアール・バフィントンから採掘権を買ったことを機に、その権利が何人もの手に渡った鉱山でもある。最終的には、1976年にドウェル・ウォードが採掘したのを最後に閉山されてしまった。グレードが上がるほどに深いブルーになり、黒のマトリックスが入るが、市場にあるもののほとんどは淡い青で茶系のマトリックスだ。
Lone Mountain(ローンマウンテン)

3大ターコイズに数えられるローンマウンテンは、1920年にリー・ハンドが採掘権を取得し、ブルージェイ鉱脈と名付けた鉱山がルーツになっている。そしてドク・ウィルソンに売却し、数世代にわたりターコイズの採掘が行われ、1970年代に最盛期を迎えた。危険な採掘作業を繰り返した結果、鉱床が破壊されたと言われ、現在は採掘エンジニアと密接な連携を取り、採掘が行われている。最上級グレードのものは、真っ青な石にブラックや茶、黄茶のマトリックスが入る。
Lander Blue(ランダーブルー)
3大ターコイズとして名を馳せ、多くのコレクターが存在するランダーブルーは、1973年に発見されたので、そこまで歴史はない。それだけ石に個性があり、マーケティング的にも成功したと言える。リタ・ハップグッドが姉妹と息子を連れて、ターコイズを探しにピクニックしていたところ、小さな青い鉱石が付いた石を見つけた。そのほとんどに黒いマトリックスがあることが特徴で、その採掘量は極めて少ない。ジェムグレードに近くなるほど、美しいスパイダーウェブに。現在は閉山している。
▼ターコイズが宝石に変わる工程はこちら!
模様の少ないターコイズなら「スリーピングビューティー」を選べ。
この露天掘り鉱山地区のある山脈が、遠くから見ると寝ている女性に見えることから、スリーピングビューティとネーミングされた。ここから産出されるターコイズは、白亜色から透明感のあるスカイブルーまで幅広く、他の鉱山のように黒いマトリックスやスパイダーウェブが掛かるようなものは見掛けない。世界的に人気の高い鉱山のひとつであり、アメリカの先住民であるズニ族のアーティストからも昔から支持されている。ヨーロッパでも有名な石である。単色の美しい石を探すなら、スリーピングビューティがおすすめだ。
ターコイズと相性のいいシルバーアクセサリー。デザイン&値段を 「LFC」を参考にチェック!
ターコイズの魅力を知れば知るほど、アクセサリーにも興味が湧いてくるはず。世界的なターコイズの権威であるロウリー・ジョー・ダン氏が監修する極上のナチュラル・ターコイズを使った「LFC(ロウリー・ファミリー・コレクション)」のジュエリーのラインナップの中から厳選したアイテムをお届けする。シルバーと併せてこそ輝くLFCのターコイズをとくとご覧あれ。
1.バングル
ターコイズを男らしくアピールするならバングルは外せない。存在感のある幅を1点づけするもよし、細身のバングルを重ねづけするもよしと、着こなしにも幅が生まれるのだ。
BISBEE

ホピ族が得意とするインレイワークを用いた大振りなバングル。アロー部分にはスタンプワークを施すなど、きめ細かい作り込み。シンプルなデザインだけにビズビーが際立っている。
TURQUOISE MOUNTAIN

透き通るような青さのターコイズマウンテンをセット。ナバホ族の伝統的なスタンプワークに加えて、シェルをロウ付けするなど、かなり手の込んだ仕上がりになっている。
TURQUOISE MOUNTAIN

ターコイズの大きさを考慮して細身に仕上げたバングル。トラディショナルなスタンプワークに加えて、両サイドにロウ付けで枠を付けたユニークなアイデアが光っている作品。
MORENCI

モレンシーらしい青味とマトリックスのバランスが絶妙な石を、ワイヤーを組み合わせたオーセンティックなバングルにセット。シンプルなスタンプワークもバランスがいい。
TURQUOISE MOUNTAIN

スカイブルーのトーンで合わせた3 つのターコイズをセットしたデザイン。両サイドに付いたシェルは裏から打ち出すのではなく、ロウ付けでより立体的に仕上げている。
2.ネックレス
男女を問わず人気が高いネックレスは、着こなしに最もアクセントをつけてくれるアイテム。さりげないワンポイントや個性的なナジャなど、自分のスタイルに合わせて選びたい。
CHINESE MOUNTAIN

中国産のターコイズは、色やマトリックスを厳選し、ハイグレードのものだけを展開。石を止めているパーツにもさり気なくスタンプワークが打っているのがポイントである。
TURQUOISE MOUNTAIN

1970 年代のザッカリースタイルのナジャ、バングル、リング、ピアスのセット。クオリティの高いターコイズマウンテンのクラスターで、おそらく同時期に採掘されたものであろう。
SLEEPING BEAUTY

一見、ホピ族が得意とするインレイワークだが、製作を手掛けたのはナバホ族のアーティスト。あえてスタンプワークは使わず、厚みのあるクロスに仕上げているのが好印象。
MORENCI

1970年代頃のヴィンテージと思われるペンダントトップ。現代的にコーディネイトできるように特徴的なバチカンを追加している。モレンシーのクオリティは素晴らしい。
SLEEPING BEAUTY

シルバービーズにスリーピングビューティーのビーズをワンポイントで使ったネックレス。シンプルなデザインな
ので汎用性が高く、エントリーモデルとしてもオススメである。
3.リング
リングは小ぶりながらも、しっかりとターコイズを楽しめるアクセサリー。石の迫力に負けない凝った装飾を施したシルバーは男性的なデザインが多いが、女性にも人気が高い。
BISBEE

ファーストアローズのアイコンのひとつとなっているフェザーに、人気ターコイズであるビズビーをセット。小振りな石であるが、全体のバランスとマッチしていて、これが正解。
TURQUOISE MOUNTAIN

ファンの多いターコイズマウンテンをセットしたリングは、石のボリューム感を活かしたワイヤーとタマの使い方が絶妙。ボディとなるリングは細身なので、指に馴染みやすい。
KINGMAN

ナチュラルターコイズ特有の凹凸をうまく活かしたリング。直線的で男らしいスタンプワークと石の荒々しい雰囲気がよく似合っている。これひとつで手元の印象がかなり変わる。
PERSIAN

ターコイズは世界各地で採掘される鉱物。イラン産のものを使うネイティブアメリカンジュエリーも時折見かける。まるで石を包み込むようなデザインは1970年代頃に流行した。
NUMBER 8
ターコイズうartist_ Albert Jake price_ ¥49,500+TAXナバホ族のアーティストであるアルバート・ジェイクが得意とするリーフモチーフのアップリケが付いたリング。センターには淡い色味のナンバー8 が置かれたグッドデザインだ。
ターコイズの石の評価の仕方から、シルバーアクセサリーへと落とし込まれたターコイズまで、ターコイズの魅力と選び方がおわかりいただけただろうか。ここで取り上げた産地やアクセサリーのデザインもごく一部。ここを入門として、ターコイズの世界に足を踏み入れてみていただけると幸いだ。
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※情報はすべて取材時のものになります。
(出典:「別冊Lightning アメリカン・ターコイズ」)
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- Lightning
- CREDIT :
- Text/S.Sato 佐藤周平 Photo/S.Tsuji 辻茂樹 S.Kai 甲斐俊一郎 取材協力/ LFC JAPAN TEL0120-976-394 http://www.lfc-japan.jp
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PROFILE

Lightning / 編集者
サカサモト
編集部のなんでも屋。CLUB HARLEY→Lightning→2nd、そして再びLightning編集部へ移籍。結果クルマ、バイク、古着などオールラウンダー編集者に。ニックネームは、スキンヘッドにヒゲ面をいう「逆さ絵」のような顔に由来する
編集部のなんでも屋。CLUB HARLEY→Lightning→2nd、そして再びLightning編集部へ移籍。結果クルマ、バイク、古着などオールラウンダー編集者に。ニックネームは、スキンヘッドにヒゲ面をいう「逆さ絵」のような顔に由来する