
民間衣料に多大なる影響を与えた【N-3B】という防寒服。

ADちゃん
- 2020年04月14日
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ミリタリージャケットのなかでフライトジャケットは防寒性に優れていることから、ファッションアイテムとしても人気を集めている。特にヘビーゾーンジャケット、その中でも完成度の高い「N-3B」は、今もなお民間衣料に多大な影響を与え続けている。
【TYPE N-3B】とはどんなフライトジャケットなのか?
フライトジャケットは、昔も今も着用する環境によって選ぶべきモデルが分別されている。その目安のひとつが温度帯だ。分類は主に5つ。ベリーライトゾーン(30〜50度)、ライトゾーン(10〜30度)、インターミディエイトゾーン(10度〜マイナス10度)、ヘビーゾーン(マイナス10〜30度)、ベリーヘビーゾーン(マイナス30〜50度)だ。
第二次大戦中など、航空技術が未発達だったころは、飛行する高度や、その地域の気候などの影響をダイレクトに受けるため、機内の環境はかなり劣悪だった。そんな中で開発された米軍のジャケットは、様々なシチュエーションに対応できるように、ゾーンごとに仕様の異なるジャケットが開発された。
その中でもヘビーゾーン以上の極寒モデルは、選定する素材、縫製の仕方、デザインの規定まで、幾度となく開発とやり直しが繰り返され、最終的に“ミルスペック(軍がクリアした仕様)”というパッケージを生み出すまでに至る。
米軍の制式なコントラクターだった「AVIREX(アビレックス)」の【N-3B】

米軍の制式なコントラクターだったという背景を持つ「AVIREX」では、こうしたミルスペックをベースにしたタウンユースモデルを40年間にわたり生み出してきた。歴史的背景をベースにしながら、普段着にも適応する能力、そしてデザインの魅力が詰まっているのが特徴。
写真は、極寒仕様のヘリ用フライトジャケットとして誕生したN-3Bが、「ARCTIC CIRCLE」をモチーフにモディファイされたモデル。同系色のカモフラージュを用いたボディが特徴的で、ファスナーはメタリックメッキを使用。随所にD.E.W.のワッペンが配される。
「BUZZ RICKSON’S(バズリクソンズ)」のスレンダータイプ【N-3B】

【N-3B】は飛行服の中でも最も材料やパーツをふんだんに使い、1着のジャケットを構成している。その理由は寒冷地での機能性を追求した結果であり、多くの研究と改良が重ねられたことに他ならない。当時、軍の正式納入メーカーはその機能美溢れる飛行服を正規品とは別に民間用としても流通させていた史実がある。
このN-3Bは、コントラクター(正式納入業者)のバズリクソンズが民間向けにオリジナルスペックでリリースしたという幻のモデルである。正規品と同様の材料とパーツを使い、型はよりフィット感のあるスレンダータイプに落とし込んでいる。
「MORGAN MEMPHIS BELLE(モーガン メンフィスベル)」の「コンフォマックス」採用【N-3B】
第二次世界大戦中の欧州戦線に従軍し、最初に25回のミッションを達成したことで有名となったB-17爆撃機「メンフィスベル」。その機長を務めたロバートK・モーガン氏の名を冠した、良質なミリタリーウェアをリリースするブランドだ。
N-3Bフライトジャケットの意匠を元に、高機能素材で再構築したのがこちら。中綿にデュポン社が開発した「コンフォマックス」という、中綿として世界で初めて保温性、防風性、防水性、透湿性を併せ持った断熱素材を採用。ボリュームのあるコヨーテファーと相まって、非常に優れた着心地を体験できる。
コントラクターとしての実力を持つ「ALPHA IN DUSTRIES(アルファインダストリーズ)」の【N-3B】

1959年、テネシー州はノックスビルに拠点を置いていたアルファ社は、米国防省から軍用ジャケットの見直しを依頼された。以来、今日まで米国軍の優良な供給会社として、ミリタリーはもちろん、その技術をフィードバックしたタウン着も手掛けている。
写真は、N-3Bを日本人サイズにリサイズして、様々なインナーやボトムに合わせやすく改良したモデル。ブラックのほか、ヴィンテージグリーン、ベージュ、ブルー、グレーなどバリエーションが豊富なのが魅力。
オキシジェンタブが胸に付いた、希少なファーストモデル!古着の【N-3B】

極寒地仕様フライトジャケットの元祖とも言えるN-3、その後に採用されたN-3Aの後継としてN-3Bがアメリカ空軍に採用されたのは1950年代半ばのこと。素材はナイロン素材を使い、ライニングには分厚いウールパイルを採用。寒冷地での着用を目的とするため、防寒、保温のために二重にしつらえられた前合せが特徴だ。またファスナーとボタンで留める仕様で、ボタンも手袋をしたまま着脱しやすい。
手袋をしたままでポケットに物を出し入れしやすいように大き目な作りとなっている。またしっかりとスナップボタンで留められる仕様だ。
保温効果も高く、吹雪の中でも視界を遮らないよう工夫されたコヨーテファー付きのフード。
冷気の流入を防ぐようにインナーリブ仕様となっている。この保温効果はグローブをはめると良くわかる。
ライニング側にデザインされたドローコード。保温性能をしっかりと高めてくれるディテールである。
このように、フライトジャケットの中でも、ヘビーゾーンに対応できる意匠をこらした【N-3B】は、現在においても、バイク乗りやアウトドアにも最適なミリタリージャケットだ。ディテールにもこだわって選んでみてはいかがだろうか。
▼フライトジャケットをはじめミリタリージャケットについてはこちらの記事をチェック!
※情報は取材時のものであり、現在販売されていない場合があります。
(出典/「Lightning 2016年12月号 Vol.272」「Lightning 2019年2月号 Vol.298」)
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Text/A.Shirasawa 白澤亜動 Photo/J.Arata アラタジュン
Styling/T.Kaneda 金田太郎
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PROFILE

Lightning / 編集者
ADちゃん
スケートカルチャーシーンでは実は名の知れた存在で、社内に隠れファンが多数いるほど。だが普段はそんな雰囲気はまったく醸し出していないため、ただの笑顔のステキなお兄さんと思われている。ミリタリーについても、モヒカン小川に並ぶ知識の持ち主
スケートカルチャーシーンでは実は名の知れた存在で、社内に隠れファンが多数いるほど。だが普段はそんな雰囲気はまったく醸し出していないため、ただの笑顔のステキなお兄さんと思われている。ミリタリーについても、モヒカン小川に並ぶ知識の持ち主