【宮内謙至】運命に導かれた本物のサーフボードとの出合いとは?
FUNQ NALU 編集部
- 2021年06月14日
日本のロングボード界のカリスマといえば、ショーロクこと宮内謙至だろう。そんなカリスマが手放せないマジックボードがあった。『マジックボード』。それは、外見上のアウトラインやロッカー、さらにデータ上の数値といったものでは計り知れないような、特別なフィーリングを伴ったサーファーとサーフボードとの一期一会の出合いなのだ。
全部のラインがスムーズにつながる。乗っていて気持ちがいい。
確かに「ボッコボコ」である。ショーロクがマジックボードと言って持ち出してきたロングボードがだ。
「気に入ってしまって、もう10年以上乗っているから、ボッコボコ。俺、これだけボトムがベッコベコになってるのは本当は嫌いなのよ」
言わずもがなプロサーファーにとってサーフボードはもっとも大切なクイーバーだ。その扱いには慎重を極め、寸分の傷もよしとしないのがプロだ。しかも、6年連続グランドチャンピオンという前人未踏の記録を打ち立てたショーロクである。いかなるマジックボードが登場するか期待をしていただけに、少々拍子抜けした。
だが、よくよくボードを見てみると仔細な所までまでリペアが施されて、隅々まで丁寧にメインテナンスされていることがうかがえる。そして、ショーロクのボードに接する態度。レールに触れる手つき、傷跡を見る目つき、長い付き合いの相棒に対するように信頼感と愛情にあふれている。
ロングボードの原点を教えてくれた。今もインスピレーションがほしい時に乗る
「まあ、簡単に言ってしまえば、調子がいい。とにかく乗っていて気持ちいいんだよね」
モデル名は「MT2」。今は亡き名匠ドナルド・タカヤマが生み出したラインナップの一つだ。傑作として知られる「モデルT」のDNAを受け継いだ次世代のモデルである。「モデルT」は1960年代のクラシック・ノーズライダーにさかのぼる。フラットロッカー、ワイドテール、ワイドノーズという完璧なノーズライダーだ。それをベースにロッカーを強め、レイクしたフィンをセッティングすることで、レールを使ったターン、そしてノーズも攻めることができるハイブリッドなクラシックボードに仕上がっている。そこに自分好みにスペシャルチューニングをしたところ、見事にハマったのだ。
「初めて乗ったのは鵠沼か鎌倉のどっちかだったな。だけど、その時の印象はよく覚えている。とにかくテイクオフがめちゃめちゃ早いんだ。だから、次の動きを考える余裕がすごくある。『どうやっていこうかな……。ちょっとフェードかな』な感じで一度振りながら『よし、スタート!』みたいな」
自分が思った通りのラインを描けるボードがベスト
35年近く波乗りをしてきたショーロク。これまで何本のサーフボードと出合ってきたことだろう。その中でも鮮烈なファーストインプレッションを与えたのだから、スペシャルな一本には間違いない。だが、それはこの「MT2」の性能の片鱗にすぎなかった。その実力に驚くのに時間はかからなかった。
「全部のラインがスムーズにつながる。自分が思った通りのラインを描けるんだ。一番好きなボードだと確信した」
マジックボードが誕生した瞬間だった。以後、どんな波でも頼れる一本として、日本はもとより海外へのサーフトリップへ連れて行った。時には不本意ながら、ボードを流してしまいクラッシュさせてしまったことも。
「気分的に下がる。テンションがね……」
誰のせいでもない。自分の責任。そんな時は、しばらくボードを寝かせて休ませる。自分の気持ちが、前向きになるまで……。つまり、「ボッコボコ」は、ショーロクとボードにとっての、絆の証と言っていいのだろう。
そして、ショーロクには、サーフィン人生で欠かせないサーフボードがもう一本ある・・・。
特別なフィーリングを伴ったサーファーとサーフボードとの一期一会の出合い。それは時に、自分や自分の周りの者達の人生までをも一変させてしまうような、強烈な体験となるのだ。「NALU7月号」では、宮内謙至さんほか、著名なサーファー達が経験した『マジックボード』との出合いやストーリーが盛りだくさん。宮内さんのもうひとつのマジックボード体験の続きもこちらから!
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FUNQ NALU 編集部
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
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