【小熊海ノ介】この一本が自分を成長させてくれた
FUNQ NALU 編集部
- 2021年09月21日
『マジックボード』。それは、外見上のアウトラインやロッカー、さらにデータ上の数値といったものでは計り知れないような、特別なフィーリングを伴ったサーファーとサーフボードとの一期一会の出合いである。そして時に、自分や自分の周りの者達の人生までをも一変させてしまうような、強烈な体験となるのだ。そこで、著名なサーファー達が経験した『マジックボード』との出合いやストーリーに耳を傾けてみた。
今回、話を聞いたのは、昨年に本誌のカバーを最年少で飾った小熊海ノ介。年齢や世代を超えても、サーファーにとっては、マジックボードは特別な存在だ。弱冠16才のアップカマーにとっての“マジック”とは。
◎出典: NALU(ナルー)no.121_2021年7月号
自分を成長させてくれる一本。それがマジックボード。
――小熊海ノ介。この名前を耳にしたことがある読者はまだまだ少ないはずだ。だが、そう遠くない将来、このサーファーは日本、いや世界のサーフシーンを騒がせているかもしれない。
この冬まで中学生、春から高校生になったばかりの16才。サーフィンを始めたのは、たった4年前。だが、サーファーとしてのポテンシャルは相当なもの。ここ最近、その評判は地元の湘南・鵠沼だけでなく、他のエリアにも届くようになった。そして昨年、本誌のカバーを最年少で飾ったという、いく末恐ろしいサーファーだ。
そんな神童のマジックボードとは。
「今乗っている板です。スケートパーク前で初めて乗ったのですが、板がフレックスして、カットバックの時にグニューンとなったのが、気持ちよかったです。テイクオフも早くて、ノーズもターンもできてという板だったので、すごく感動しました」
果たして、そのボードの正体とは。「僕が削りました」と手を上げるのは、新城譲だ。自身がプロデュースするボード「TRANSISTORBRAND」に海ノ介の両親が乗った関係で、息子も面倒見ることになったのである。
新城曰く、「ショップのメンバー用のレンタルボードとして、女の子も乗れるようなサイズ感をダウンしたボードを削っていたんです。たまたま、海ノ介が来て、この時の体のフォルムと板のサイズ感がリンクして。『これ乗りなよ』って渡したんです」
▲お気に入りのマジックボードとともに自宅にて。海の上とは対照的に、プライベートではまだあどけなさを感じさせる
育ち盛りの海ノ介だが体重は若干48キロ。ボードのボリューム感とウエイトが絶妙にフィットしたのだろう。
「自分はシェイプ歴も浅いし、正直、奇麗なシェイプでもないし『絶対、調子悪いでしょ?』て聞いたら、『調子、いいっす』と。そんなやりとりが結構続いたんです。最初はお世辞時かなと考えていたんですが、『マジに今まで乗った板の中で一番調子いいっす』と」
サーフィン歴は4年ながらも、これまで所有したボードは15本以上と経験値は高い。その中でもベストな一本というのだから、よほど調子がいいのだろう。実際に海ノ介のライディングを目にした新城は「えっ、あの板あんなに走るの!?」と驚いたと言う。「なぜか僕もわからないんです」と苦笑い。
だが、海ノ介は、この一本は自分を成長させてくれたと語る。
「NALUでトリップに行ったりカバーになったりと、このボードのおかげで、いろんな意味で成長してできたと感じています」
▲先輩サーファーである新城からはさまざまなアドバイスをもらっている。年齢を超えてのタイトなリレーションシップを築いている
これからどんどん成長を遂げていく海ノ介。その将来に先輩の新城も大きな期待を抱く。
「すごいですよ。トリックもできるしバックヒール、ハングヒール、とノーズは何でもできますね。すごく上手いし、スタイリッシュです。体ができたら、今活躍しているプロサーファーも『ヤバいな』と思うかもしれないです」
目標とするサーファーやスタイルは特にないと言う海ノ介。
「サーファーとしてもっと世界に出て行けて、トッシュ(注:ジョエル・チューダーの息子)とか同じくらいの年齢のヤツと仲よくサーフィンしたり、時には戦ったりしてみたいですね。みんなに『海ノ介、ヤバいよね』って言われるようになりたいです」
マジックボーとともに海ノ介は未来に向かって成長していく。
Profile
2005年、北海道生まれ。中学生の時に、両親とともに湘南・鵠沼に移住。それまではスノーボード一辺倒だったが、サーファーの両親の影響もあり、海の近くに暮らしたのをきっかけにサーフィンを始める。両親が新城譲がプロデュースする「TRANSISTOR BRAND」のボードに乗ったを機に、海ノ介も新城と交流を持つようになる。プロもうならせる将来が楽しみなアップカマーである。
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PROFILE
FUNQ NALU 編集部
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
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