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サーフィンを止めるな/サーファーからのメッセージ(ジェリー・ロペス編)

今、世界は未曾有の変革期を迎えている。Covid-19という未知なるウイルスによって誰もが 経験したことのない自粛生活を強いられ、経済は停滞し、海に入ることさえ煙たがれるこの世の中を、誰が一体予測できたことだろう。これからのサーフシーンはどうなって行くのか。
この大きく時代が変わるその瞬間に、サーファー達は何を想い何を願ったのか。
その断片を切り取り、後世に残すためにこの特集は企画された。
『THE VOICE-サーフィンをとめるな。』
リアルなサーファー達の声をここに贈りたい。

◎出典: NALU(ナルー)no.117_2020年7月号

初めて経験する未知の世界

Covid-19(コロナウイルス)のようなものは今まで経験したことがなかった。私だけではなく、 誰もこのような経験はしたことがないだろう。思い出せる限り昔から、毎年いろんなタイプのインフルエンザが流行する。私の妻はいつもインフルエンザの予防接種を受けているが、私は幸運なことにかなり頑丈で健康な体に恵まれてきたので、予防接種は受けずとも何回か軽いインフルエンザの症状が出たことがある程度でこれまで済んできた。しかし、今回は突然、全くもって全世界で私達みんながこの非常に伝染しやすい、実際まだ誰も詳しいことがわからないが命に関わる可能性もあるvirulentなウイルスの脅威に脅かされた。
私達は全く新しい世界に突入してしまった。そしてもしかしたら全てが今から永遠に変わるのかもしれない。今はこの先どうなるかはっきりしていることは何もない。ソーシャルディスタンスは良いアイデアではあるけれど、誰もが実践しているわけではないように見える。もしかしたらその人は世界や自分の周りでどんなことが起こっているのか、ちゃんと聞いたり考えたりしていないのかもしれない。

地元オレゴン州の暮らしと友人たち

私の住むオレゴン州の知事、ケイト・ブラウン氏は3月半ばに州全体、オレゴン州民全てにロックダウンの宣言を出した。生活していくのに絶対的に必要であるビジネス以外のほとんどが閉鎖され、レストラン、学校、教会、とにかくほとんどのものが扉を閉め営業をストップすることとなった。道には人影はなく、スキー場も閉鎖、予定されていたイベントも全てキャンセル、人々はとにかく家から出られなかった。どの場所もシーンと静まり返っていた。病院とスーパーは営業していたけれど、必ずマスクと手袋を着用することを義務付けられた。今までのどんな時より手洗いが重要視された。
私の友人も何人かが、アイダホのサンバレーで行われたパーティーに行ったあと、Covid-19に感染した。そのパーティーにいた全員が検査の結果陽性だった。ワシントン州から来たスキーヤーからうつされたのだろうと言う調査結果だった。また友人であり有名なミュージシャンでもあるジャクソン・ブラウンも、3月半ばにクラスター発生地であったニューヨークでのライブの後検査で陽性と診断されたが、幸運なことに彼の症状はひどいものではなかった。一方サンバレーの友人、ミキュエルは10日間ほどの高熱や寒気とひどい倦怠感、節々の痛み、頭痛、そして喉、耳、鼻などがカピカピに乾く症状、さらには食欲不振、匂い や味が感じられない、目の弱りなどかなりの重症となり、一方彼のガールフレンドであるジェリアンはジャクソンと同様に軽い症状だけで済んだ。最終的にはみんな回復し、今では元気になっている。私の知人の中では彼らが唯一の感染者だった。
しかし、最も重要な問題は、自覚症状がないにもかかわらずウイルスを保有する人がいて、伝染力の強さからその人がコンタクトした人みんなが感染するということのようだった。未知なるウイルスであるだけに、正確な情報を得ることが難しく、それこそがかなり恐怖心を煽る一番の要因だったように感じる。

アメリカの対応とサーファーの暮らし

アメリカでは州によってそれぞれロックダウンのやり方やシビアさに差があったが、どの州も少なからずロックダウンの期間があった。そしてそれは賢明なやり方だったと私は感じている。このウイルスについてあまりに未知なことが多すぎて、それは今でもあまり変わらない。理解するまでに他人とのコンタクトを避けることは唯一の方法だとしたら、そうするしかない。まるでフィクションのような変な感じではあるが、今はとにかくウイルスのありそうなところへは行かない、ウイルスの触手が届かないところにいること、以外解決方法はないように私は見えた。
ハワイでは州政府はビーチを閉鎖しながらも、サーフィンすることは健康のための運動として許されていた。一方の西海岸では、ビーチが閉鎖されるだけでなくサーフィンは完全に禁止され、SUPサーファーが波のいい日のマリブに、誰もいないラインナップに一人でパドルアウトしたところ、海上警察とライフガードがボートを出し、SUPサーファーを逮捕して1,000ドルの罰金を支払わせた。このルールを真面目に守らないと大金を支払わされるという見せしめとしてニュースでも大々的に取り上げられた。
バハのカボではアメリカより一ヶ月ほど遅れてロックダウンがやってきた。が、そのロックダウンはアメリカ以上に厳格なものだった。私の友人はいいうねりが入った日にサーフィンしようとパドルアウトした。何本かいい波に乗ったあと海岸に何人かの人がいて、自分に向かって戻ってくるようにと手を振っていることに気がついた。その日はサーフィン禁止になった初日だったので警察のスワットチームが見回っていたのだ。彼らはとても丁寧で礼儀正しく「No mas surfing…! (もうサーフィンをしてはいけない)」と伝えてその場は収まった。それからしばらく経ってから、波がすごく良くなった日があり、我慢できずにサー ファー達がパドルアウトしたところ、彼らが岸に戻ってきたとき、警察はそこで待ち構えていて彼らのサーフボードを取り上げ、3日間のコミュニティーサービス(罰としての労働)のペナルティーを彼らに与えた。すでにルールを破って海に出たサーファー達から合計150本以上のサーフボードが没収されたと言われている。最終的にサーフィン禁止が解除された時点で、警察に自分のボードを回収しに行ってもきっとなかなか自分の板が見つからないだろう。
サーファーは昔からルールを守らないことで悪評高い。「通行禁止、KEEP OUT」と書いてある看板は、「サーファーようこそ」という意味なんだというジョークがあるほどだが、今回はさすがにジョークでは済まされない。政府は真剣であり、規制はしっかり施行され、厳格に実行されている。

人々の優しい気持ちが目覚めてきた

先週私は南カリフォルニアにシェイピングの仕事で行ったのだが、その時やっと海岸が解放された。美しい南うねりが届いていて、息子のアレックス、彼のガールフレンドであるリア・ドーソンと3人でサーフィンに行き、コットンポイントで素晴らしい時間を過ごした。やっとサーフィンすることが許され、誰もがとっても嬉しそうにしていたし、いつもよりお互いに気を配って優しい雰囲気で波乗りをしているように感じられた。もっとも人気がありラインナップが混んでいるトラッスルズには私は行かなかったが、聞いたところによるといい波がバンバン立っているコンディションにもかかわらず、いいバイブレーションが流れていたらしい。もしかしたらこのコロナでの状況が私達にいろんなことを考えさせたのかもしれない。この状況が悪化したらかなり深刻なことになる、だからこれ以上悪くならないよう、親切にそして優しい気持ちを忘れないようにしよう、そう人々に思わせたのかもしれない。

この先どんなことになるのかは全く想像もつかないが、日本では私の記憶している限り昔からマスクをしていたように、世界中の人々がマスクをつけたり、手を頻繁に洗うことなどがこれからは日常で必要不可欠なことになっていくのかもしれない。まあ、それは悪くないことだと思う。

波乗りが私たちに教えてくれること

オレゴンに戻ると、いくつかのビジネスはソーシャルディスタンスを考慮した環境の中で再開していた。誰もが真面目にこの状況に取り組みルールを守っているように見えた。多くの人がマスクをつけていたし他の人と距離を置いていた。お店がオープンすることで若者達が仲間と集まったりできると喜ぶことには釘が刺され、人と交わることは差し控えるよう注意しなければならなかった。何しろ感染者が一人、誰かに近づきすぎただけでまた元の木阿弥に戻ってしまうからだ。マスクをつけて、安全に、そして健康でいようではないか。

波乗りは常に私たちにたくさんの素晴らしい学びを与えてくれる。このような智慧を波乗りを通して学ぶけれど、そのうちにそれは波乗りだけでなく海に関わる生き方全てに関わることなのだとわかってくる。

「全てが最悪の状況に見えるような時は、とにかくパドルし続けることが大事かもしれない」

アウトに大きなセットがやってきて私達はインサイドにハマることも多い。こんなときどうしたらいいのか、素早く判断しなくてはならない。一つの方法は何もしないこと、来る波来る波に巻かれ続ける、水を飲む、ビーチまで押し戻され、一からやり直し。パニックすることもあるが、これはなおさら悪い。なぜなら溺れて死ぬかもしれないという恐怖心が膨れ上がるからだ。あるいは自分の置かれた状況を受け入れ、なんとかポジションをキープできるよう問題を解決しようとできる限りの事をし、そしてパドルし続ける。セットの後には必ず来る波が静かになり落ち着いた状態がやってくる。その状態に入ったら、ラインナップの自分のポジションまで戻れるようアクションを起こす。
そう、だからこのような時期、全てが最悪の状況に見えるような時は、とにかくパドルし続けることが大事かもしれない。
Just Keep Paddling.

出典

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FUNQ NALU 編集部

FUNQ NALU 編集部

テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

FUNQ NALU 編集部の記事一覧

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