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サーフィンを止めるな/サーファーからのメッセージ(タイラー・ウォーレン×NAKI編)

今、世界は未曾有の変革期を迎えている。Covid-19という未知なるウイルスによって誰もが 経験したことのない自粛生活を強いられ、経済は停滞し、海に入ることさえ煙たがれるこの世の中を、誰が一体予測できたことだろう。これからのサーフシーンはどうなって行くのか。
この大きく時代が変わるその瞬間に、サーファー達は何を想い何を願ったのか。
その断片を切り取り、後世に残すためにこの特集は企画された。
『THE VOICE-サーフィンをとめるな。』
リアルなサーファー達の声をここに贈りたい。
◎出典: NALU(ナルー)no.117_2020年7月号

写真家NAKIによる本誌独占記事

今回の特集記事は、タイラー・ウォーレンとアフター・コロナ(COVID-19)について話すのだが、まずは、私たち日本のサーフ界のバック・グラウンドを書かねばならないだろう。そのくらいの衝撃だった。
「新型コロナウイルス」という文字を見るのは、すでに食傷気味だ。サーフ業界は、社会のやり玉、スケープゴートに挙げられた。パチンコ愛好家と同列同系として、サーフ依存症だと、愚かな行為だと広く世間に紹介された。
サーフ依存症と書いたのは、世間に説明をあきらめたからであり、私たちはサーフィン世界の住人である。サーフィンは極めれば極めるほど、清く尊い行為となる。自らを鍛え続けると、宇宙レベルまで意識を拡げ、心を整えてくれるものだ。同類として自粛を迫った人たちは、この高き世界を知らないのだろう。
私がハッピーサーフィンという言葉を掲げて久しいが、人口が増えてくると、言葉尻だけ捕まえて、ファッション感覚で「ハッピーサーフィン」となる。それでも良い。マウントを取り合うサーフィンは懲り懲りだ。ただし、絶えず鍛錬をしなくては、こちら側の世界や魂は感じられない。自分が想像したよりもはるかに大きな波はやってくるものだ。波に叩きつけられて、どんなに沈められても、四肢でボードにしがみつき、大量の泡の上に浮き上がるたび、沖に向かってパドリングしていく。武術であり、体術の修行だ。この苦行を通過したものだけが、極上の波に乗れる権利を得るという原則もある。
だが、ふにゃふにゃとパドリングして、工夫もなく、鍛錬もなくハッピーサーフィンをすることもできる。サーフィンによって享受できるものが、修行者たちのそれと違うのは明らかだ。
体幹を絞り上げてパドリングする。へこたれない根性を持つサーファーと、波情報で波の高さを選び、人の後に付いてパドリングしているサーファーの違いを分けるものはない。よって、世間がサーファーというものを見るときは玉石混淆となる。

コロナ騒動による不条理

今回は「コロナ騒動」というほどなので、ありとあらゆる事がおき、不条理も多かった。
なぜサーフィンはいけないのだろうか?「(海岸に)人がやってくることがいけなかった」。海沿いの市町村長はそう回想するだろう。感染拡大を防ぐ一心で、あらゆることが「自粛」された(法がないので禁止とは言えない)。国民が秘めていた 強制力。良いか悪いかは、2進法の物理のようだった。「ご理解ください」という言葉は、新型コロナ以前から日本中に書いてあったが、理解というのは、押しつけるものではない。説明がなく、理解はできない。だが、流行し聞き慣れてくると、理解した方が楽だとなり、敵の手に落ちてしまうのだ。
地方にいると、集落放送を聞くことになる。これは朝8時半に大音量の鐘から始まり、昼には正午だと教えられて、午後は5時ですとファンファーレが鳴る。その中で暮らしていくと、自然に働きアリの集団心理となる。洗脳の一種だ。
さて、同調圧力というのがある。同じ考えを他人に求める国民は、「他者に評価される教育」に由来しているのだろうか。現にランドセル、体操着、上履きと揃える時期にその種子は蒔かれる。 幼児が小児となり、そして反抗期になった際に世 間の真意をわかりかけるが、社会という大海が目の前にあり、全体的な(同調)圧力により、自然とあきらめ、それぞれの個性は削がれていく仕組みとなっている。証拠としては、子どもに「同じもの」「同じこと」「人気」等の宗教的ポピュラリズムという圧力をかけない国の人たちは、より自由な思想が芽生えている。

盲目的にならず、冷静に考えること

このことは、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の『パブリック・プレッシャー/公的抑圧(1980)』のアンサンブルが、それを見事に表現している。坂本龍一のシンセサイザーは、民として「従うこと」の悲しく美しい音色を彩ってミックスダウンされた。
重要なのは、盲目的にならず、冷静に考えることだ。最初はわからなくとも、サーフィンと同じで、目を開けば開くほどわかるようになる。正義を後ろ盾に投石(中傷や書き込み等)してはならない。
不朽の名作『ビッグ・ウェンズデー(1978)』がそうだったが、当時のサーファーの骨格は、正義とカウンター・カルチャーが支えていた。忠誠心と反骨心の揺らぎや選択があり、世間からはみ出したものが主人公でありつつ、それを取り巻く社会というのがテーマだった。そのアウトロー精神がマスト・アイデンティティだったサーフィンは、ビッグ・ウェンズデーから42年後、コロナ騒動を機にサーフ界に公的抑圧が起きた。
具体的には、サーフブレイク各地で『自粛警察』が現れ、サーファーがサーファーを抑圧するという事態となった。おわかりだろうが、ここ数十年の経緯を見ると、それは突然現れたわけではなく、コロナ騒動を背に顕在化したのだ。自粛警察は、精神真理の怪物「ファシズム」であり、「正義暴力」という深層心理であり、国家社会主義を後ろ盾に(水戸黄門のインロウがこれに値する)全県地域同政策に博愛思考なく従った結果だった。
スペインの海岸では、新型コロナにおののき、砂浜に塩素をまいてしまったという。識者はこれを「元々、砂浜には滅菌効果がある。塩素は一切必要としない。むしろこれは生態系への悪い結果となる」と指摘していた。海は清潔なものである。あれもこれもと、さまざまな騒動があり、多くの国の海岸は閉鎖されていった。
サーフィンをして良い国があり、または禁止となった国もあった。わが国は先に書いたが「サーファー自粛」となった。それは湘南のような混雑する海岸でも、1年中だれも来ない海岸も一様に「自粛」とあり、それを守れないものは、こちらも前出したが、『自粛警察』という名の市民に言葉や暴力で懲らしめられた。
本題に戻る。興奮して失礼してしまった。(笑)

タイラー・ウォーレンとの対談

タイラー・ウォーレンも私たちと同様にコロナ騒動でサーフィンできずに苦しかったと吐露した。
タイラーは七つの顔を持つ男だ。「ある時は片目の運転手、ある時はカネモチの紳士、またある時は…」というのは昭和の多羅尾伴内であるが、タイラーは、バックドアでバレルに入り、ミニ・シモンズを岬波に持ち出してカービング祭を催し たと思えば、ソルトクリークの岩場で、ピンテイルのミッドレングスを宮廷の晩餐会演目のごとく優雅に乗り、重たいログをパワフルな波に持ち出し、クリティカル・セクションを高速滑走させる。
名実共に卓越したシェイパーであり、歴史を尊び、ジョージ・グリーノウを崇拝するサーフボードのデザイナー。
さらには油彩を得意とするプロの近代画家でありつつ、メキシコの辺境にある極波を求めて聖人トム・カレンと生活し、それを糧とする。

“知的に海岸に行くことはグッドサーファーならできます”

「COVID-19は世界を震撼させました」
タイラーから話が始まった。
「サーファーが必要としていたのは、サーフィンによる精神的な救いでした」
「具体的にはどんな救いですか?」
「真のサーファーは、サーフすることで、『将来への不安』というストレスを解放させることができます」
「はい」
「行政は、海の持つ、人に与える重要な役割を取り去ってしまいました。そして、多くの人がこの事実を知っています」
「各ビーチの閉鎖ですね」
「初期段階はサーフ可能なブレイクも多くありました。しかし州と群(日本の県にあたる)は、海岸や駐車場を極度に規制しました」
「海に行けなくなりましたね」
「そうです。精神的に辛いときに、そして最も必要とするときに海からの恩恵やインスピレーション、波からの直感を受けることが不可能となってしまいました」
「——」
「思うに、僕たち市民は、お互いの距離を保ちながらビーチを歩いたり、走ったり、サーフィンすべきでした。もちろん、それらの行為を求めて知的に海岸付近に行くことがグッドサーファーならできるはずです。また砂浜に集まって、集団を形成すべきではないとは、きちんとした人なら知っています」

“サーフィンは犯罪ではありません。健康的な娯楽であり、生きる場所、心を寄せるものです”

「そうですよね」
「サーフィンは犯罪ではありません。ある人には娯楽であり、ある人には生きる場所、心を寄せるところ、そして人生そのものです!」
「本当にそう思います」
「サーフィンをするということは、とても重要なことで、体と心を健やかに整えてくれるものです。なので、次にこういう隔離(quarantine )の機会があったのなら、政策として市民の健康も考えなくてはなりません。市民は知的な行動をすることで、その政策を助けるのです」
「タイラー、そのときに波に乗れるように、乗ることができるように考えました」
「どんなものですか?」
「いくつかあるけど、例えば予約制はどうでしょうか。実行するのは、知的なサーファーたちということは重要ですが、定期的に個々(家族単位)で、 それぞれのフィールドに向かえることを可能とするように行政で整えたら良いと思います」
「感染レベルに合わせた制定で実行するパターンの設定は大切でしょうね」
「そうです。ウイルスの場合は、人口密度、滞在密度によるエリア分けも重要でしょう」
「そういうことだよね。サーファーはそれぞれのアイディアを持ち寄って、行政はそれに耳を傾けて、今回を機会として海岸を整えておけば、もう2度とあんな愚業は起きないはずさ」
「私たちはそれを目指しましょう!」
「それでは、日本のみなさんの健康を祈りまして、それぞれのすばらしいサーフ世界が続くことを願います」
「ありがとうタイラー!」
「ドゥ・イタシマシテ!」

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FUNQ NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

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