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“神様のまします山”大山。下山後の温泉は「豪円湯院」へ|山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記 Vol.12

中国地方唯一の日本百名山、大山

温泉大国ニッポン、名岳峰の周辺に名湯あり! 下山後に直行したい“山直温泉”を紹介している小誌の連載、「下山後は湯ったりと」。
『PEAKS 2025年7月号(No.172)』では、大山(だいせん)を訪ね、下山後の“山直温泉”には「豪円湯院」を楽しみました。夏山登山口から弥山までの山行のようすをお伝えします。

“山直温泉”の記事・情報は
『PEAKS 2025年7月号(No.172)』の
「下山後は湯ったりと」にて!

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉山本晃市(DO Mt.BOOK)

山の呼び方、「やま」「さん」「せん」

大山と書く山は、日本に二座ある。ひとつは、丹沢山塊表尾根の東端に位置する神奈川県の大山(標高1,252m)。もうひとつは、中国地方の最高峰、鳥取県の大山(標高1,729m)だ。表記は同じだが、前者は「おおやま」、後者が「だいせん」と読む。

「○○山」の「山」。読み方は山によって異なり、大きくは「やま」「さん」の二通りがある。この「やま」と「さん」、どうして読み方が異なるのだろうか?

一説には、神々のまします山、山岳信仰の対象の山は「さん」と読み、そうではない山を「やま」と読むという。たしかにその度合は高いのだが、例外もある。日本三大霊峰の「富士山」「白山」「立山」は、「ふじさん」「はくさん」「たてやま」と読み、「やま」と「さん」が混在する。どうやら山の呼称に関する規則性には、確固たる説がないようだ。読者でおわかりの方、ぜひご教示ください。

▲日本三大霊峰の立山(左)、富士山(中)、白山(右)。唯一「やま」と読む立山だが、立山という単独の山はない。雄山(おやま)、大汝山(おおなんじやま)、富士の折立(ふじのおりたて)、これら三つの峰々の総称を立山、あるいは立山本峰という。

さらに「山」は「せん」とも読む。鳥取県の大山もそのひとつ。「せん」と読むのは、中国地方、とくに山陰地方特有のものらしい。「○○せん」と呼ぶ山は全国で70ほどあるが、そのほとんどが鳥取・島根・岡山の3県の山だ。大山をはじめ、氷ノ山(ひょうのせん)、蒜山(ひるぜん)、弥山(みせん)、さらには扇ノ山(おうぎのせん)、甲ヶ山(かぶとがせん)、泉山(いずみがせん)など、かなりの数にのぼる。

理由は諸説ある。なかでも説得力が高いと思われるのは、仏教伝来が関わっているという説。

漢字の読みには主に漢音と呉音(その他、唐音)があり、「山」は漢音で「さん」、呉音だと「せん」と読む。

漢音は、遣随使や遣唐使によって奈良から平安時代にかけて日本に伝わった字音。7~8世紀頃の中国六朝時代、呉よりも北の地方で使われていたものとされている。現在、音読みのなかでもっとも多いのが、この漢音読みだ。

一方、呉音は、漢音が伝わるよりも前の時代、奈良時代以前に日本に伝わった呉の字音のこと。仏教経典(いわゆるお経)や日本の古いしきたり・生活に関する言葉が、呉音で読む場合が多い。

たとえば、「礼拝」。キリスト教やイスラム教では「れいはい」(漢音)だが、仏教では「らいはい」(呉音)と読むのが一般的だ。

仏教が朝鮮半島の百済から日本の大和朝廷に伝わった年(仏教公伝)は、西暦538年(または552年)。だが、それ以前に私的な信仰としての仏教は民間レベルで伝わっていた。

▲お釈迦様が初めて教えを説いたサールナートにある「初転法輪象」。仏教文化が山の呼び名にも影響を与えているのは、興味深い。

弥生時代から鉄器の製造がさかんに行なわれていた出雲(主に島根県東部)・伯耆(ほうき/主に鳥取県中・西部)の国は、古来、文化度の進んだエリアだった。古墳時代にはすでに統一王朝としての国家が形成されていたと考えられている。

そんな出雲・伯耆の国は、地理的に朝鮮半島に近いこともあり、かなり早い時期から仏教の影響を受け、同時に呉音文化が普及していたと考えてもおかしくはない。そのため、山陰地方に「せん」と読む山が多数あるのだという。

とはいえ、これも確固たる説ではなく、今後のさらなる歴史的検証を期待したい。

▲大山ナショナルパークセンター。大山にまつわるさまざまな情報を入手できる。大山が後方に聳える。

「神様のまします山」と「一木一石運動」

西南西側から眺めると富士山のような山容であることから「伯耆富士」や「出雲富士」とも呼ばれる独立峰、大山。大山には別称が多々あり、なかでも印象的なのは「火神岳」(ひのかみのたけ)「大神岳」(おおかみのたけ)。西暦733年、奈良時代に編纂された『出雲国風土記』の「国引き神話」に登場する山名だ。どちらも大山を指すのだが、「火」「大」の崩し字が似ていることから「火神岳」「大神岳」と表記に二説があるようだ。

「国引き神話」は、出雲の創造神である八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)が網を引っ張っていろいろな国を縫いつけ、現在の島根半島を造成し出雲国を広げたというお話。その際に引いた綱が現在の弓ヶ浜や出雲の長浜で、綱をかけた杭が火神岳(大山)や佐比売山(三瓶山/さんべさん)だとされている。

▲八束水臣津野命が引いた網のひとつ、弓ヶ浜。弓のように湾曲した美しい海岸線を描く。

古来、大山は、「神様のまします山」として庶民から深く崇敬されてきた。現在も霊山として崇められ、多くの登山者が訪れる。最高標高地点は、標高1,729mの剣ヶ峰。だが、頂上付近の崩落が激しく、剣ヶ峰へと続くルートは残念ながら縦走禁止。そのため今回の山行では、剣ヶ峰の西に位置する弥山(みせん/標高1,709m)を目指すことにした。

▲崩落により、荒々しいむき出しの斜面が広がる大山北壁。西南西側から眺める「伯耆富士」からはまったく想像できない。

大山夏山登山口付近で、まずは石を拾う。大山では「一木一石運動」という活動が続けられている。この運動は、登山者によって失われた山頂にあった石を元に戻し、かつ裸地化した頂上の植生復元、ひいては山の再生を目指すというものだ。

そのルーツは1982年に発足した「大山の美化を推進する会」に遡る。同会は春と秋に大山全域の一斉清掃を実施している。さらに同会を母体として「大山の頂上を保護する会」が1985年に結成され、大山方式とも呼ばれる「一木一石運動」が始まった。

現在、山頂部の植生は植栽によってかなり復元が進んでいる。今後は自然の植生遷移を見据え、人為的な関わりをなくしていくタイミングを模索しているという。大山に登る際は、ひとりひとつ石を山頂まで持っていき、山再生の一助となるべく、ぜひ協力したい。

▲左)大山夏山登山道口。中)一合目手前。国立公園の特別保護地区では石ひとつ動かすのにも許可が必要だが、このあたりは普通地域なので石をひとつピックアップさせていただく。右)弥山頂上手前、避難小屋の前にある石置き場。千里の道も一歩から。一人ひとりの思いが大山を元の姿に戻していく。

標高を上げ、ブナ林から灌木帯へ

夏山登山道口から弥山までの道のりは険しい箇所はないが、常行谷の西側を走る尾根をひたすら登るという直登系ルート。登山口先の阿弥陀堂の脇を通過すると一合目が始まり、その後、合目ごとに現れる標識に励まされ、山頂をめざす。

独立峰ならではの登り続けるルートではあるが、夏の大山は心地よいブナ林のなかを進む。そんな景観がしばらく続くが、六合目をすぎると、徐々に高さ1~2mほどのナナカマドやサワフタギ、ウリハダカエデなどの灌木帯が広がり始める。大山の冬は厳しく、五合目をすぎたあたりから風雪の影響を大きく受けるためだ。さらに七、八合目へと進むと、周囲はダイセンヒョウタンボクやヤマヤナギ、ミヤマイボタといったさらなる低木が周囲をにぎわす。

▲標高1,000m付近から五合目をすぎたあたりまでは、豊かな生態系を育む”森の看護師”と呼ばれるブナの明るい林が続く。
▲避難小屋の建つ六合目。眺望がきき、小屋の前に開けた小スペースがあるので、休憩ポイントとなっている。トイレ、水場はない。
▲左)七合目をすぎると、岩場が増え始め、周囲は灌木に覆われる。右)標高1,500mを超えた八合目周辺。低木ばかりの環境に、冬季の風雪の厳しさを想像する。

日本海を見下ろす展望台、弥山の頂き

八合目をすぎると、これまでの直登修行系とは打って変わって、特別天然記念物のダイセンキャラボクの群生や高山植物を愛でながらの緩やかな散策区間となる。周囲にさえぎるものはなにもない。思わず深呼吸。頂上まであとひと息だ。

▲石室と弥山への分岐点。ここから植生保護のため斜面に敷かれた木段を歩く。
▲先の分岐から頂上へかけて、ダイセンキャラボクの純林が広がる。樹齢600年。キャラボクはイチイの変種の常緑針葉低木で、大山が南西限。

そして、弥山頂上へ。山頂は大天望台。米子の街並み、中海や宍道湖、「国引き神話」の弓ヶ浜、美保湾、日本海が一望だ。爽快そのもの。神様が造成された景観を眺めながら、贅沢なランチタイムを楽しむ。おにぎりがいつもの何倍もおいしい。

そうそう、石置き場に持ってきた石を置いていこう。「神様のまします山」大山に登らせていただいた感謝の思いとともに。

▲頂上避難小屋。トイレ、売店あり。大山入山協力金の募金箱もある。500円より。
▲弥山山頂に建つ「大山頂上 1709m」と書かれた石碑(左)。この脇に休憩スペース(右)がある。
▲火神岳大山山頂から日本海側を見渡す。「国引き神話」に思いを馳せ、眼下の景観にも感謝。

山行&温泉data

コースデータ 大山

コース:南光河原駐車場~大山夏山登山口~六合目避難小屋~頂上避難小屋~大山(弥山)~頂上避難小屋~六合目避難小屋~大山夏山登山口~南光河原駐車場
コースタイム:約6時間
標高:1,729m
距離:約6km

下山後のおすすめの温泉 鳥取県/豪円湯院

 

▲日本屈指の還元力の強さを誇る天然温泉。かがり火が灯された内湯「神の湯」は、神秘的な空間。
▲露天の岩風呂もまた心地よい。
▲目の前には、無料の足湯もある。
  • 大山火の神岳温泉 豪円湯院(ごうえんゆいん)
    鳥取県西伯郡大山町大山25
    TEL.0859-48-6801
    入浴時間:11:00~19:00(最終受付18:20)※時期により変動あり
    定休日:水曜
    入浴料(日帰り):大人¥790/小人¥300
    泉質:低張性弱アルカリ性低温泉
    アクセス:夏山登山口から徒歩約7分、南光河原駐車場より徒歩約4分

 

“山直温泉”の記事・情報は
『PEAKS 2025年7月号(No.172)』の
「下山後は湯ったりと」にて!

▶「山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記」一覧はこちら

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PROFILE

山本 晃市

PEAKS / 編集者・ライター

山本 晃市

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

山本 晃市の記事一覧

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

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