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ドッグファイト|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #52

遅ればせながら、先日映画のトップガン・マーヴェリックを観た。子どものころに地上波の◯◯劇場などで放送していた前作の無印トップガンをVHSに録画して、テープが擦り切れるほど見ていたのがなつかしい。今でこそわかりやすいアクションものはあまり見なくなってきたのだが、季節柄、ライチョウの世界で似たようなシチュエーションを見てきているので、今回はそれを紹介しようと思う。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

ドッグファイト

5月はライチョウにとって俗にいう恋の季節だ。もっとも彼らの場合は一度つがいになればどちらかが欠けるまでは添い遂げることが多いので、実質的にはヨコ槍を入れてくる独り身のオス、通称アブレオスとの攻防と、縄張りが被る近隣世帯とのイザコザの対応の季節と言い換えることができる。生息環境において食物連鎖の底辺に属するライチョウには大した戦闘能力はないのだが、それでもオスたちは男の意地をかけてその都度闘いに身を投じる。

日常においては地上での行動が主だが、闘い方もある程度のパターンがある。遠距離からの鳴き合いでの威嚇、それで退かなければ武力行使に移行し、クチバシでの突き合い、翼での殴り合い、丈夫な脚での蹴り合いなど、愛らしい見た目には似つかわしくないなかなかの闘い方を披露する。基本的には退かせれば勝ちとなるため、命を奪うレベルの闘いをすることはないが、日本以外の生息地では致命傷を伴う抗争をする種も存在するらしい。

5月といえば下界では桜も散り、連休明けには新しくなった年度の動きも本格化したり新緑も萌えて暖かくなるいっぽうで、高山帯はまだまだ残雪が張り付き、まれに雪も降る。さらにその雪が昼の温かさでぐさぐさに腐り、夜間に冷えた朝方にはガリガリで凸凹のツルツルという凶悪な地面へと変貌を遂げる。いわゆる春山における事故が多いのは1日の寒暖差の激しさも要因のひとつではと思う。知っていれば対処も対策もできることではあるが、山は少しの油断が大きな被害をもたらすことがあることを、いまもこれからも忘れないようにしていきたい。

北アルプスの多くの稜線は、西側は強い風で早くに植生がむき出しになる。対して東側と北側は風下と日照時間の関係もあり遅くまで雪が解けずに残っている。オス同士が己の存在をかけて戦いを繰り広げる繁殖期。この勇姿を写真に収めるために私も残雪の稜線に駆けつけた。

ライチョウの縄張り範囲は一羽につき直径数百メートル。生息域によりまちまちだが、隣接するオス同士が小競り合いをはじめた。セオリーどおりに遠間からの鳴き合いにはじまり徐々に距離を詰めていく。闘いは次第にヒートアップし、一方がたまらずその場を飛び経った。勝負はそれで決したかと思いきや、勝ちを収めたと思われれるオスのほうが追撃を開始した。

今回の一枚は、縄張り争いがヒートアップして発生した延長戦のようす。ライチョウは基本的には地上戦が主だが、ボルテージが上がると空中戦をすることもある。飛ぶことが他の鳥類ほど巧みではないものの飛翔能力はそれなりにあり、滑空をしながらドッグファイトを繰り広げることもある。このときは残雪の稜線の上を低空飛行で延々と追いかけっこをしていた。愛らしいフォルムのライチョウがこのような勇ましい姿を見せるというのも魅力のひとつであると思う。

今週のアザーカット

おかげさまでなにやら妙に忙しいです。ライチョウを定期的に観測する都合上、当然山にもいかなければならないのでアワアワしています。詳細は追ってになりますが、7月と8月に実施が決定しているイベントの日程だけでも先にお知らせしたいと思います。
・講演会→7月12日(土) 実施地域:長野県松本市
・写真展→8月下旬から会期約1週間 実施地域:長野県松本市
いずれも地元での開催になります。最近は県外のイベントが多かったので逆に新鮮な感じです。詳細情報解禁後にあらためて自身のSNSなどでも発信していきますので、よろしくお願いいたします。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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