
サロモンの“本気”を注入した ハイキングシューズとバックパックをガチレビュー

PEAKS 編集部
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ヨーロッパを代表する山岳系の総合ブランドといえば、だれがなんといおうとサロモンだ。
トレイルまわりのアパレル、シューズ、バックパックはもちろんのこと、雪山を舞台とするアルペンスキーやノルディック、スノーボードなどハードな一面も持ち合わせ、「四季を通して山を知る」経験値と開発力は、世界トップクラスである。
そんな開発力を具現化している2025春夏シーズンのプロダクトをふたつ、紹介しよう。 INDEX
ハイクの新作パック&定番シューズの5代目をフィールドテスト
ライトでスピーディなサロモンカラーを継承しつつ、3シーズンを通して快適に装備を持ち運べるハイクモデルのマスターピースとして開発されたバックパック、エアロトレックシリーズ。
サイズは3つ(20L、30L、40L)展開され、今回はミニマムなテント泊縦走や避難小屋泊などにマッチする容量40Lの中型モデル(写真左)をテストする。
もうひとつは、2012年の誕生以来、アップデートを重ね、今季5代目として生まれ変わったハイキングシューズの定番「Xウルトラ5」だ(写真右)。
それでは、実際に山を歩いて、気に入ったポイントをピックアップしていこう。
テスターは国内外のロングトレイルを歩いてきたアウトドアライター・森山伸也
1978年、新潟県生まれのアウトドアライター。衣食住を背負ってトレイルで「暮らす」ように長く歩く山行スタイルを好む。北欧のロングトレイルに精通し、著書に「北緯66.6° ラップランド歩き旅」(本の雑誌社)がある。テレマークスキーの雑誌『FREE HEEL BOOK』の発行人であり編集長。
満を持してサロモンが世に送り出したエアロトレックの実力やいかに
エアロトレックのフォルムは、ボトムを幅、高さともにシュッとスリムにデザイン。上部に重いものを入れるというパッキングセオリーが自然と成り立つカタチである。ただ、自立しないのはなにかと不便という意見もある。
エアロトレック最大の特徴は、背面の構造にあった! どれだけ快適に背負えるか? 荷重分散はどんか感じか? ポケット類の使い勝手は? 実際にテント泊装備を背負って、歩き、停滞し、さまざまなポイントを探ってみた。
Point1 背負い心地
エアロ=AEROとは、「空気」や「空気力学的な」という意味。
名前の通り、背面にはかなりの空間が空いている。背中の汗冷えや体のオーバーヒートを防ぐための構造なのだが、湾曲した分だけ内容量が小さくなるため、こんなに開けなくてもいいんじゃないの?と最初は思った。
しかし、この激しい湾曲が荷重分散にいい役割を担っていた。
写真の赤線が3Dアルミフレーム「アドバンスドエアシャーシ」を真横から可視化したもの。「く」の字になったフレームが上部の荷重を青線のように受け止める。
立体的なアルミフレームはあらゆる方向に曲がってしなるので、荷重をいなしながらひとつにまとめて、骨へと伝える。
正面から見るとアルミフレームは砂時計のカタチをしている(赤色の破線)。この3D「アドバンスドエアシャーシ」が、空気の流れを作り、荷重をひとつにまとめ、肩甲骨と骨盤へ分散してくれるのだ。水2Lを含んだテント泊フル装備を背負って1日歩いたが、不思議と重さを感じさせない背負い心地が印象的だった。
ウエストベルトは大胆に中抜きをされ、各部パッドにはメッシュ素材を用いて、とことん通気性を追求している。
メンズ、ウィメンズのふたつのモデルが用意され、それぞれの身体にフィットするように背面は男女別設計になっている。背面長のサイズもそれぞれふたつ展開し、万人の体にフィットする仕様だ。
ショルダーハーネスは、広く、薄く、しなやか。広い面で肩周りを捉える安定感が好印象だった。それゆえポケットも大きく設計され、フラスクなどを入れられる。
トレイルランやアドベンチャーレースで培ったサロモンらしいスペックと言える。
上半身の前屈や後屈、横揺れ、捻り……あらゆる動きを妨げないしなやかさというか、順応力がすばらしいパックだ。
テント泊装備を入れているのに驚くほど軽やかな背負い心地は、長年のレースで培ったサロモンだからなせる技なのだろう。「アドバンスドエアシャーシ」やトランポリンのようなハリのあるメッシュ地、グリップがいいパッドなどのハイテク素材がそれぞれいい働きをしている。
ただ、あらゆる素材には経年劣化とともにヘタリがつきもの。さらに新素材となれば耐久性は未知だ。長い期間使っても同じ機能を維持できるか? という疑問は残る
Point2 収納システムの使い勝手
ショルダーハーネスにはフラスクを入れられる縦長のメッシュポケットがふたつ付く。スマホや行動食を入れることはできるが、深すぎて取り出しにくい。片一方は浅いポケットにした方が個人的には好みである。
フロントパネルには、メッシュポケットが備わる。内部はサロモンのロゴが入ったグレーの部分まで広がる大容量。
エントランスはフルオープンではなく、センターが縫い付けられ左右から出し入れが可能だ。これは収納物を歩行中に落とさない気配りである。逆にいえば、収納物が飛び跳ねるくらい軽快なハイクが可能ということ!
右のウエストベルトにはファスナーポケットが付く。深いマチ付きで、スマートフォンや行動食などをまとめて収納できる。大きめだけれど腕振りのじゃまにはならない。
両サイドには深めのメッシュポケットを配置。ふたつのコンプレッションストラップを使って、テントポールやトレッキングポールを固定して持ち運べる。欲を言えば、片側は浅くして、ボトルなどを入れられる仕様にしたらもっと使い勝手がアップしそう。
Point3 パッキングや荷物の出し入れのしやすさ
下部のファスナーからボトムへアクセスできる。
メインコンパートメントは、パネルで区分けする2気室構造。濡れたテントなどをボトムに入れておけば、他の装備が濡れることがない。仕切りのパネルはトグルボタンで簡単に取り外しできるので、1気室での使用も可能だ(写真のテントはアライテント/エアライズ1)。
もちろんハイドレーションシステムにも対応している。メインコンパートメント上部には、容器を固定する面ファスナーが付き、円滑なセッティングを可能に。
スムーズな水分補給は、通気性とともに猛暑に負けないエアロトレックが重視する機能である。
ライトでファーストなイメージのエアロトレックは、バックルやコードロック、ストラップも小さめに設計されている。だが、ちゃんと扱いやすく、万人におすすめできる仕上がりだ。
ウエアの機能を最大限に引き出すバックパックだった!
直近の3カ月予報によれば、今年の夏もかなり暑いらしい。アルプスへと高度を上げれば涼しいけれど、登山口へ行くまでが核心となる酷暑が例年続いている。しかし、このエアロならば! と猛暑登山に光が差した。
体とパックとの接触面積が極端に少ないため、背中を風が通り抜ける。テスト日は5月上旬。標高1,600mで風に吹かれると、背中がスースーして寒いほど。いかにこれまで背負ってきたバックパックが背中に密着して、外気から背中を守ってきたことを痛感できた。
エアロトレックは、レインウエアをはじめとするジャケットやシャツの機能を最大限に引き出してくれるパックだ。たとえば、レインウエア。パックが背中に密着していたら、背中の透湿性は限りなくゼロに近くなる。一方、エアロトレックはハーネス部しか体に接触していないので、レインウエアの防水透湿性を最大限に引きだし、これまでにない抜けを感じられた。雨が背中とパックの間に流れ込んで、不快になることもない。
ベースレイヤーでも同じようなことがいえる。ベースレイヤーの速乾性は空気の流れに当てることではじめて機能するもの。速乾素材なのに背中が汗冷えするのは、パッドが生地を肌へ押し付けて乾燥をじゃましているからである。つまり、従来のバックパックはウエアの背面部分の性能を殺してきたというわけだ。
そういう意味で、エアロトレックはさまざまなウエアとの相性が良く、レイヤリングの効果をストレートに体感させてくれるだろう。
体との接触面積が少ないから背負い心地はイマイチ? と思いきや、悪くない。いや、むしろいい。不思議だ。体との接触面積とフィット感は、かならずしも正比例しないというのは新しい発見だった。
体に追従するという定番セオリーとは違う。追従ではなくむしろ離反、独立だ。事実、ボトム部をウエストベルトに引きつけるスタビライザーストラップは存在しない。立体的なアルミフレームが荷物をカラダから切り離す。だから体が自由に動く。一方で、しなやかな立体アルミフレームがバネのように荷重をいなしながら肩と肩甲骨と骨盤、3点へ分散する。
容量50、60Lと装備が重くなったら破綻する背面システムかもしれない。40Lまでならギリギリ持ち堪えられる。コンフォートとスピードのバランスを見極めるサロモンの目は、流石である。
サロモン/エアロトレック 40
- 価格:¥24,200
- 容量:40ℓ
- サイズ:S/M、M/L
- カラー:全1色
- 重量:1,118g(M/L)
ブラッシュアップされた定番ハイキングシューズ
サロモンが誇るハイキングシューズの代表作「Xウルトラ」が4年ぶりにアップデートされ「Xウルトラ 5」として新登場。今回の改良ポイントは、耐久性と通気性の向上だ。
テント泊装備を背負って、広葉樹のトレイルからガレ場、岩場、アスファルトまでアップテンポで歩き、定番たるゆえんを探ってみた。
Point1 歩きやすさ
コの字型の「アドバンスドシャーシ」がかかとと土踏まずの間を下から支える。着地時のブレやねじれを防ぎ、捻挫などのトラブルを抑制する。
さらに、この延長線上にあるアッパー補強材(白いパーツ)がシューレースと連動しフィッティングを高めてくれる。
ラスト(足型)は、細すぎず、太すぎず、だれもが足入れしやすいと感じる広さ。足の甲は高めに設計され、厚手のタンとシューレースで誰もがお気に入りのフィット感を得られるデザインだ。
整備されたトレイルを軽快に歩くために開発されたモデルゆえ、岩場は少々の突き上げを感じるが、しっかりグリップしてくれた。
ソールはしなやかでソフト。まさにつま先で大地を蹴り上げて、トレイルを歩くために生まれたシューズである。登山入門者でも歩きやすさを感じる一足である。
一方で、狭いステップにつま先で立ち込むような岩稜歩きは不向きと言える。
履き口とタンには、ボリューミーなクッションを採用。シューレースは高い位置まで締められるデザインに。ややキツめに締めあげることで、クッションが適度な緩衝材となり、高いフィット感を得られる。また、メッシュ素材により通気性が向上している。
個人的には、よりダイレクトにフィット感を調整できる薄手のタンが好みだが、そうなると各人のラストへの要求が高まり、万人にマッチする定番シューズというポジションが崩れてしまうのだろう。
Point2 アウトソール
アウトソールはひとつずつのラグを大きくしてリデザイン。接地面を広く、摩擦力を大きくすることで、グリップ力が向上している。
また、大きいラグは摩擦の強度を抑え、結果的にアウトソールは角を保ったまま長持ちする。
力が入る小指の付け根(小趾球)のアウトソール(濃いグリーン)をより深いラグにデザインすることで、部分的にグリップ力と泥はけを高めて、歩行時の安定性を向上している。
湿原のぬかるみから湿った岩場まで、あらゆる環境下で安心感のあるグリップ力を発揮してくれた。急な下りでは、クッション性の高いタンと伸縮性のあるシューレースが甲を優しく抑えて、内側で足が滑ることなく、快適な歩行を提供。
Point3 アッパー
アッパー素材は、トレランシューズなどで採用されている「マトリックス」。
ケブラーやポリアミドを混紡した素材で、軽量ながら摩耗や引き裂きに高い耐性を備えている。さらに通気性にも優れ、ゴアテックスの透湿性をプッシュする。前モデルよりも摩耗への耐性が約33%、通気性が約30%アップしている。
アッパーとともにトウプロテクションも耐衝撃、耐摩耗性に優れる。このようなタイトな岩場にも躊躇なく足を置いて、引き上げることができた。
防水透湿素材ゴアテックスが足を覆う全天候型モデルだから、雨や草露を気にすることなくガシガシ歩ける。ミドルカットだから浅い沢の渡渉もなんのその。
5代目はサロモンの情熱が詰まった集大成
フランスのロングトレイル「ツール・ド・モンブラン」 を歩くためのシューズとして2012年に誕生したXウルトラ。13年間でアップデートを計4回重ねて、このモデルが5代目となる。
焼き鳥屋の5代目といえば、先代からの継ぎ足しタレが燻し銀の香りを放つ老舗中の老舗。それはつまり、だれからも愛され、素材の特性をうまく活かし、機能を極めた完成形ということを意味している。
汗や雨による濡れは、足にマメをつくる元凶だ。だから通気性と防水性、このふたつは決しておろそかにしてはいけない。そんなトレイルランやアドベンチャーレースで磨き上げてきたサロモンの思想が、随所に見受けられる。
また靴というものは、一定の期間履き続けることで自分の足型に育て、ようやくカタチになるモノである。山行の思い出をともに紡ぎ、やっとのことで自分の足になじんできた靴を、素材の摩耗や劣化で手放すことは、痛恨の極み。せっかく仲良くなったのに、お別れして、また一から育てないといけないのか……。
そんなユーザーの気持ちをサロモンは知っている。ひとりでも多くのハイカー、とくにエントリー層に届けたいと願う。だから価格を抑えて、カラバリも豊富に揃え、ローカットも用意した。山歩き文化の裾野を広げたいという作り手の気概が伝わってくる一足である。
サロモン/Xウルトラ5 ミッド ゴアテックス
- 価格:¥25,300
- サイズ:メンズ25.0 ~ 31.0cm(29cmから1cm刻み)、ウィメンズ22.0 ~ 25.5cm
- カラー:メンズ全5色、ウィメンズ全3色
- 重量:メンズ440g(27.0cm /片足)、ウィメンズ390g(24.0cm /片足)
サロモン/Xウルトラ5 ミッド ゴアテックスはこちらでチェック
企画協力◉アメア スポーツ ジャパン
TEL.050-1720-4849(サロモンコールセンター)
https://salomon.jp/
- BRAND :
- PEAKS
- CREDIT :
-
文◉森山伸也
写真◉矢島慎一
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PROFILE

PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。