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カナダへのクライミングトリップに向けて旅の準備を行なう|筆とまなざし#426

スコーミッシュとバガブーでのクライミングに向けて

カナダへのクライミングトリップ出発二日前の夕方になって、ようやく荷造りを始めた。出発前に終わらせなければいけない仕事にようやく目処がつけられたからである。もっとも、ドタバタと準備して出かけるのはいつも同じ。昨年はうっかり忘れ物をしてしまったので、今年は教訓を活かそうと思う。

スコーミッシュとバガブーという少しタイプの違うクライミングをするため、今回の旅はギアが多い。シングルロープ2本とハーフロープ2本。ワイド用の大きなカムも数セット用意して、さらにはピッケルにアイゼン。もちろんキャンプ道具も一式必要だ。重量オーバーにならないかはいつも悩みの種である。

スコーミッシュは世界的に知られた花崗岩の岩場である。ザ・チーフと呼ばれる大岩壁を中心にして、マルチピッチ、シングルピッチ、ボルダーの課題が数多くあり、内容もクラック、スラブ、前傾壁のスポートルートまであらゆるタイプのクライミングが楽しめる。コブラクラックやドリームキャッチャーなど、世界最難クラスのルートも目白押し。ボルトルートよりクラックのほうが少し数が多く、今回もクラックメインで登るつもりである。

いまでこそクラックが好きになったのだが、クラッククライミングを始めたのはせいぜい十年と少し前である。僕がフリークライミングを始めた90年代後半は被ったスポートルート全盛期で、花崗岩のクラックはどちらかというとオールドスクール的な印象だった。その後、世界的なボルダリングブームの到来により若者はこぞってボルダリングに興じるようになる。ルートメインで登るクライマーさえずっと少なく、かくいう自分もボルダリングのほうが行く頻度は高かった。

どっぷりハマってしまったジャミングの魅力

アルパインルートに行きたいと思って始めたクラッククライミング。しかしいつの間にかその魅力、とくにジャミングのおもしろさに魅せられるようになった。「フリークライミングは岩を自分に近づけるのではなく、岩に自分が近づいていくものだ」とはよくいわれる話である。確かにそれはそうなのだけれど、観念だけでなく具体的に実践できるのがクラッククライミング、というかジャミングテクニックなのだと思う。

岩の形状をじっくりと観察し、触覚で確認しながら自分の体の一部をクラックの中に入れ込んでいく。固くしてはいけない。クラックが手を受け入れてくれるように、優しく形状に馴染ませていく。ここだという場所が見つかったら、心の臓をひと突き! 刺客のごとくジャミングを決める。手や指、あるいは身体全体の入れ方、馴染ませ方、ジャミングの決め方。そのひとつひとつの所作によって、それまでどうにも使えなかったクラックが、ガバに近い保持感に変わることだって少なくない。なんという不思議だろう。フェイスのカチだって効かせ方やポジションによって保持感は変わるけれど、ガバになるまで劇的に変化することはない。ジャミングは工夫の余地が大きいのである。

そんな職人技的なジャミングがおもしろくてすっかりクラックにハマってしまったのである。指の弱い自分だってテクニックを磨けば登れるようになると思えたし、年齢によってフィジカルが衰えてもテクニックは向上するはずだ。よく観察して馴染ませるというのは、絵を描くことにも通じる。描く対象と向かい合い、じっくりと観察することでその対象との距離を縮めていく。それは絵を描くときにとても大切なプロセスである。

さて、彼の地ではどんなクラックが待っていてくれるのだろう。そんなことを思いながらパッキングをするのが、また楽しいひとときである。

著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。

https://www.naruseyohei.com

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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