
筆とまなざし#118「暖かな陽射しに誘われて、地元の山をスケッチしに。」

PEAKS 編集部
- 2019年02月08日
春の陽射しに誘われて
この季節にしては温かい雨が降った翌日の今日は春のような一日でした。気温も10℃を超え、陽射しは麗らか。寒さで縮こまった体や心が解きほぐされてくよう。そういえば一昨日から目が痒くなってきました。今年は花粉の飛散量が多いとか・・・。
昼すぎまで展覧会の絵の額装をしてから、暖かな陽射しに誘われてスケッチに出かけました。雨上がりの今日は空気もスッキリクリアで、雪化粧の中央アルプスもきれいに見られるだろうと思ったけれど、なんだか地元の山を描きたいと思い、絵の具とスケッチブックを持って、家のすぐ近くの橋に向かいました。
ぼくの住む集落の背後には標高1500m前後の山が連なっています。扇状地に広がる集落。裾野には田んぼが広がり、点々と家が建っています。標高が高くなると森になり、こんもりとした尾根がいく筋にもわたって稜線へと続いています。中学生のころは毎年春になるとこの山に友人とキャンプに出かけていました。少年のだれもがそうであるように、スタンド・バイ・ミー気取りのキャンプ行。熊に怯えながら河原で焚き火をしたり、秘密の小屋に潜り込んで薪ストーブを囲んで一夜を過ごしたり。中学校のベランダからはこの山々が良く見渡せ、まだ見ぬヨセミテやアラスカに思いを馳せていました。
座るのにちょうど良い場所がなかったので、橋の途中に立って鉛筆で絵を描き始めました。自然と口ずさむのはジョン・デンバーの『Take Me Home Country Roads』。細かいところはすっ飛ばして、この山里の雰囲気を描き取ろう。山肌の色にも陰にもまだ冷たさが残るけれど、なんて気持ちの良い陽気だろう。後ろをすぎ去る車のスピードがほんの少し遅くなるのを背中で感じながら描いていると、脚立を積んだ軽トラが停まりました。降りてきたのは知人でした。
「まさか、と思ったけどこんなところで絵を描いとるとは(笑)」
再来週に仕事の打ち合わせをすることになっていたものの、今話しちゃおう、ということで青空ミーテング。その後は犬と散歩するおじさんが通りかかり、
「良い趣味やなー」
と言いながら一言二言。絵を描くという行為はわりと高尚な行ないのようで、好意的に受け取ってもらえるのは万国共通。
日が陰ってくるとやっぱり寒くなってきたけれど、かろうじて山はまだ陽に当たっている。急ピッチで絵筆を走らせ、なんとか日暮れまでに描き上げることができました。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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