筆とまなざし#132「灼熱の中尾根バットレス。“デスバレー”への挑戦」
PEAKS 編集部
- 2019年06月04日
週末は2年ぶりに御在所岳へ行ってきました。三重県、四日市市の西に位置する御在所岳は古くからクライマーに愛されてきた山です。良質な花崗岩の岩壁が並ぶ藤内沢には前尾根、中尾根と初心者〜中級者向きのマルチピッチルートがあり、一ノ壁はマルチの練習ゲレンデとして知られています。岩尾根の側面にはクラックやフェイスのショートルートが築かれています。岩壁に垂れる滑滝が凍り、冬場はアルパインクライミングの道場と化すのも御在所の特徴でしょう。
今回登ったのは、中尾根バットレスにあるマルチピッチルート「カリフォルニア・ドリーミング(6P、5.12a/b)」。すっきりとした滑り台のようなスラブから核心ピッチのフェイス、さらにクラックを繋げて登るおよそ100mの高度差のルートです。核心ピッチはグレード以上に難しいと聞いていて、コンディションにもかなり左右されそう。全ピッチフリーで登れなくても、とにかく行ってみようと、「ママス・パパス」のCDをかけながら出かけました。
出かけた日は名古屋で33℃予報。前泊の車中泊は暑くて寝苦しく、眠たい目を擦りながら出発。冬にこの辺りに来たときは日が当たらず風も強くて寒かった覚えがあるのですが、あれ?予想に反し、藤内小屋から見上げた中尾根バットレスはカンカン照りでした。軽い熱中症になりながらのアプローチ。途中、知人に出会うと「今日はバットレスで目玉焼きが焼けるよ!」とか。
汗だくになって取り付きに到着し、しばらく休んでから登り始めました。下部3ピッチは滑り台のような広大なスラブを登る5.10前半のルート。少々ランナウトしているし暑いしで、グレードよりも若干難しく感じました。
そして4ピッチ目。件の核心ピッチです。ここはエイドでも登れるようにボルトが近い間隔で打たれています。オブザベーションをするもののホールドらしきものは小さく、ムーブもうまく読めません。すでに暑さで参り気味ですが緊張感をなんとか維持し、小休止のあと登り始めたものの、案の定、1本目のクリップをしたあとで行き詰まりテンション。何度か試みるものの、手が滑るしムーブも解読できず。エイドで核心を抜けてこのピッチの終了点まで行き、一旦ロワーダウンして再度トライ。しかし結果は変わらず、先に進むことにしました。続く2ピッチはクラックが続き、最後の短いけれど変な体勢を強いられるクラックを登りきると岩塔のてっぺんにたどり着きました。
灼熱の「カリフォルニア・ドリーミング」。日本にフリークライミングが持ち込まれた黎明期の1978年から8年の歳月をかけて完成させられたルートで、核心ピッチがフリーで登られたのは85年。このピッチには「デスバレー」というルート名が付けられています。帰宅後もしばらく気だるさが抜けないけれど、ふと、核心ピッチの情景が蘇ってきます。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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