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筆とまなざし#150「鳳来・高難度ルートひしめく‟ハイカラ岩”へ ~前編~」

先シーズンから取り組んでいた「ガンジャエクステンション」(5.14a)というルートを登りました。愛知県の鳳来という岩場にあるルートです。鳳来は国内でも有数の前傾壁で知られる岩場で、なかでもいちばん奥に位置するハイカラ岩はその親分のような存在です。およそ140度に大きく前傾した「どっ被り」で、高難度ルートがひしめく日本でも屈指の岩のひとつ。「ガンジャエクステンション」はその真ん中の、ちょうど船の舳先のように被ったカンテを登るすばらしいラインです。

春のシーズンは体調を崩したりトレーニングがなかなかできなかったりと思うように登れず、トライするたびに高度が落ちるというとても辛いシーズンでした。梅雨入りしたところで見切りをつけて、夏の間は笠置山でひたすらボルダー開拓をしていました。開拓の場合、実際に「登る」という行為は全体の2割程度で、大半は汗だらけ、泥だらけ、蚊やブヨの攻撃に耐えながら岩の苔や土を落とし、周囲の間伐をするという毎日。これが案外ダイエットになったのか体重が落ち(ぼくは開拓を「アクティブダイエット」と呼んでいた)、開拓で腰を痛めたのをきっかけに身体のケアを念入りに行なうようになると、以前よりも身体がよく動くようになっていました。

8月下旬から何度かハイカラ岩に行くと、高温多湿でも途中で修理となる「ガンジャ」(5.13d)は高確率でリピートすることができました(「ガンジャエクステンション」は「ガンジャ」からさらに上に登るロングバージョン)。しかし、ガンジャが終わってからの核心の甘い一手を止めることができず、空気が乾燥するタイミングを待つことにしたのでした。

しばらく蒸し暑い日が続きましたが、天気予報を見ると水曜日に少し気温が下がり、今シーズン初めて湿度が20%台まで下がるようでした。知人に連絡をすると幸いにもクライミングに行くというので、急遽合流させてもらうことにしました。

その日はなぜか3時半に目を覚ましました。けれど頭はスッキリしているし身体も軽い。二度寝する気持ちにはならなかったので、いつもより1時間半も早く出発しました。知人とは岩場で落ち合うことにしていました。ハイカラ岩までは登山道を1時間ほど登ります。ひとりで歩く静かなアプローチ。ふと、昨夜見た夢が思い浮かんできました。「ガンジャエクステンション」が登れた夢を見たのです。正確にいうと、登れたと思ったけれど、それは本当だったのかと曖昧な記憶を思い返すところで夢から覚めたのでした。そんな経験は初めてでした。

だれもいない岩場に到着しました。ハイカラ岩を見上げると前日の雨が嘘のようにカラカラに乾いていました。こんな早い時間に到着したのは初めてで、谷間にある岩にはまだ朝日が届かず、静かで清々しい空気が漂っていました。ストレッチをしていると次第に岩の上部に朝日が当たり始めました。秋晴れの空から降り注ぐ眩しい日差しが木漏れ日を作り、鮮やかに岩肌を照らすさまはなんとも美しいものでした。ストレッチをしてから、早く登りたい気持ちを抑えて近くのボルダーで身体をほぐしました。やがて話し声が聞こえてきたかと思うと知人たちが到着し、岩場はいつもの賑わいを取り戻していきました。

ウォーミングアップを終えてホールドに詰まったチョークをブラシで落としながらヌンチャクをかけました。少し休んでから一便目のトライ。登り始めると、いつもと違うカラリと手に吸い付くような岩の感触。これまでにない身体の軽さ。あまりにもいつもと違うのでスタンスを間違えそうになるほどでした。中間部まで来たところで、一瞬右足の置き方に迷いました。次の瞬間、ねじ込んだはずの右足がすっぽ抜けて、気づくとロープにぶら下がっていました。足の置き方を間違えたのか、気持ちが急いて力みすぎていたのか。せっかくのチャンスをものにできずに拍子抜けしてしまいました。昨夜見た夢を思い出すと不思議な感覚になりました。きっと今日登れる。でももしかして……? いや、とにかく今日のクライミングを楽しもう。緊張感を途切れさせずに次のトライに備えるべく、地上に降りて休むことにしました。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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