白馬堂 Rokko 浅野晴良さん（兵庫／神戸）｜良い山道具選びは、良いお店選びから。

PEAKS 編集部

2019年12月18日

なんでもネットでも買えるけれど、やっぱり山道具はお店で手にとってから買ってなんぼでしょ。今月は、信頼できる個性的なスタッフがいるお店や、遠くてもぜひ行ってみたい名店、記憶に残る迷店を全国から集めてみました。足を運べば、ただのお買い物にとどまらない出会いがあなたを待っていることをお約束します。

六甲山登山に必要な最低限のアイテムが揃う店づくり

六甲山の麓に店舗を構え、今年の7月で6周年を迎える『白馬堂Rokko』。オーナーの浅野さんがお店をオープンするまでには数々の不思議な縁があったという。

浅野さんと六甲山の出会いは幼少期にまで遡る。母方の祖父が大阪で登山とスキーの専門店を経営しており、浅野さんやお客さんたちを連れて、よく山へ出かけていたそうだ。最初は楽しかった浅野さんだが、何度も同じ場所に出かけているうちに退屈するようになり、次第に六甲山から足が遠のいていったという。

そんな浅野さんが山への興味を取り戻したのは、体育の専門学校に通っていた頃だった。野外活動の授業でアウトドアの素晴らしさを再認識した浅野さんは、卒業後、環境教育の道へと進み、子どもの野外活動に携わる仕事を始めた。仕事柄、六甲山に行くことも増え、その度に「ここ来たことがある」という原体験が蘇ったという。次第に「もっと多くの人に六甲山を楽しいでほしい」という気持ちが芽生えていった。

同じ頃、祖父の友人で六甲山地図の踏査をしていた方から、地図作りの話が舞い込んできた。すでに祖父の店はなかったが、それを機に他の常連さんとも知り合うように。なかには、当時一緒に登山へ行っていた人もおり「お前、あのときのチビか！」と話しかけられることもあったそうだ。

祖父の店の常連客から思い出話や、山に対する変わらぬ想いを聞いているうちに、浅野さんの気持ちは固まった。より多くの人に六甲山を楽しんでもらうための店を作ることにしたのだ。店名は祖父の店と同じ『白馬堂』に決めた。

老舗ブランド『神戸ザック』とのコラボで作られた白馬堂のオリジナルバックパック。大小2種類のサイズ展開。

「まさか、自分が祖父の店と同じ名前のアウトドアショップをやるとは思ってなかったですね」と話す浅野さん。しかし、そこには幼い頃山に連れて行ってもらった原体験の影響があるに違いない。その証拠に、浅野さんは、先代がそうしていたように、お客さんとのハイキング企画を実施している。

理由は「あまり山に登らない人にも六甲山を身近に感じてもらいから」だそうだ。きっと先代も同じ想いだったのだろう。お店に関しても「祖父が山を愛する若い人を育て、今はその人たちが、僕の面倒を見てくれています。なんとも不思議な縁ですね」と嬉しそうに語ってくれた。

生まれ変わった白馬堂は創業当初から「日帰りで六甲山に行くのに最低限の物が揃う店」を目指している。取り揃えるのは、浅野さんが実際に使ってみて、六甲山登山に最適だと感じたアイテムと、お店のオリジナル商品。決してハイスペックなものばかりを並べるのではなく、あくまで地域に密着した店づくりを目指している。

おすすめは最高級の羊毛・メリノウールを使用した『point6』のソックス。抜群のフィット感とクッション性を誇る。

取材中にも、常連のお客さんが、最近の六甲山の状況を聞きにやってきた。地域に根ざした店というのは、こういうお店を指すのだろう。

登山について、浅野さんは「オシャレから山に興味をもつのは良いと思う」としながらも「山に登ること自体がオシャレであってはほしくない」と語る。その言葉からは、登山が流行りの趣味ではなく、生活の一部になってほしいという願いが感じられた。六甲山を愛する人、登る予定がある人は、ぜひ一度立ち寄ることをオススメしたい。