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気象予報士森朗さんに教わる!自然を読み解く観天望気

登山力のステップアップには、気象の知識も重要なピース。でも、天気予報を当てろといわれても、それは難しいのが本音のところ。そこで、いまから役立つ気象の知識をピックアップしよう。ヒントは身近な自然にあるかもしれない。

まずは身近にある自然を読み解いてみよう

観望天気でなければ、観天気望でもない。「観天望気」とは、その土地ならではの自然現象、あるいは生物の行動といった事柄などから天気を予想することである。ことわざのような伝承を含んでおり、暮らしのなかの天気予想といわれることもある。

こんな言葉を聞いたことはないだろうか。「夕焼けの次の日は晴れる」、「台風の翌日には晴れる」、「朝、クモの巣に露がかかっているとその日は晴れる」、「カエルが鳴くと雨が降る」、「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」。

これらは決して古くからの迷信というわけではない。日々の生活をとおして培われてきた、知恵の詰まった立派な予想術なのだ。

難しい専門用語を理解できるようになろう。天気図を読めるようになろう。そう意気込んではみるものの、そう簡単にマスターできないのが気象の奥深さ。まずは身近にある自然を読み解くことにチャレンジしてみるのもいいかもしれない。そうすれば安全登山に近づくのはもちろんのこと、自然を眺めるのがもっと楽しくなるかもしれない。

冬の終わり、春のはじまりなどに天候と季節の変化を告げていた雪形。

雪が積もった富士山の斜面。ここを見ることで、太平洋側における気温や降水量が推量可能。南側にたくさん積もっているならば、降水量が多く、気温も低いだろう。

残雪期に入ると、雪解けが進むにつれて山肌が見えるようになってくる。あるいは、取り残された雪が特徴的な形を見せることがある。動物や人、紋章のような形にも見えるそれを「雪形」と呼ぶ。

遠く麓からも視認できる雪形は、長期予報はおろか今日の天気予報すらなかった時代から、農民に農作業のタイミングを告げる役割を担ってきた。「代かき馬」に「農鳥」、「種まきうさぎ」。これらの名前を聞いたことがある人は、由来に持つ山名を頭に浮かべているのではないだろうか。

代かき馬が由来になった白馬岳は代表的。ほかにも常念岳は常念坊(徳利を持ったお坊さんの形)から、五竜岳の武田菱は武田家の家紋からというのがよく知られている。

春先、山肌が姿を現しはじめた残雪期の山々を上空から見下ろす。尾根や谷、斜面の向きによっても雪の残り方が違い、麓の人々はそれを動物や人間に見立ててきた。

よほどのことがなければ、山の地形は何年経っても変わらないもの。だから、雪形は毎年同じように出現してもいいはずだ。しかし、実際はいつまで経っても現れなかったり、早々に出現してしまったり。季節の進み、気温の変化によって影響されるものだから、雪形はいい目安になるというわけだ。

たとえば雪形の出現が遅いということは、例年と比べて気温の上昇も遅いということ。そこで、例年よりも農作業を遅めて、雪形が現れるのを待とうということになる。現代の最新技術がなくとも、人々は“自然の振る舞い”から気象を読んできたのだ。

「西高東低の冬型の気圧配置」ってなに?

夏山にも増して天気予報を気にするのが、冬山登山というもの。テレビやスマートフォンで天気予報をチェックしているうちに、「西高東低の冬型の気圧配置」という言葉が繰り返し気に止まるはずだ。

冬になると、ロシアのシベリアから、極めて冷たい空気が日本列島に流れ込んでくる。冷たい空気は暖かい空気より重いので、地上に溜まることで大きなシベリア高気圧を形成。それがある程度まで高気圧が強まると、周囲に向かって寒気が吹きだすようになる。

反対に、暖かい太平洋上では低気圧が発達し、シベリアの寒気を低気圧の中心に向かって引き込もうとする。これが西高東低の冬型の気圧配置と呼ばれている。

20世紀に生まれた飛行機雲は、上空の水蒸気の量を教えてくれる。

空を区切るように2本の飛行機雲が伸びている。上が現れたばかりのもので、下がその前にできたもの。雲がにじんで太くなっているのは、天候が悪化する前兆だ。

雪や雨、風なども予報に役立つが、とくに雲から予測する方法はたくさんある。飛行機によって空に筋のように描かれる「飛行機雲」もそのひとつだ。

上空の空気は、飛行する飛行機の翼によって切り裂かれる。そして翼の上下で気圧差が生じることで、空気中の水蒸気が水滴や氷の粒に変化。これが雲になり、飛行機の航跡に沿って筋を引くのだ。

エンジンから排出される水蒸気と微粒子も雲になる。高空の気温は夏でも氷点下だから、煤を核にして水蒸気が凍りつく。飛行機雲ができやすいほど上空は冷えていて、できにくいほど気温が高いのだ。

上空の寒気が強まっているならば、それはやがて地上にも影響を及ぼす。厳しい寒さの日が訪れることになるだろう。また、その飛行機雲がなかなか消えないときには、雲がにじんで、太くなるかもしれない。上空が湿り、天気が下り坂になる証。寒気が強くなって空気が湿ってくるとなれば、地上の気温はいっそう下がり、雪が降ることだって考えられる。

いくつもの飛行機雲が同時に空に伸びている。中央に2本、それより少し前にできたもう2本も左でにじんでいる。上空の水蒸気が豊富なのだろうと推量できる。

また、「消滅飛行機雲」という現象も飛行機雲には見られる。曇っているときに飛行機が通過すると、ライン状に雲が消えることがあるのだ。エンジンから出た熱によって雲が蒸発したり、乾燥した空気が混ざったりして現れる。飛行機が空を飛ぶまでは存在しなかった飛行機雲。そこから気象を読むことも、ある意味で現代的なのだ。

羽毛状かつ同じ方向の巻雲を見上げたら、台風や積乱雲の危険あり。

羽毛のようになった巻雲。遠くの1点を目指すかのように、雲が放射状に広がっている。この先では台風や活発な積乱雲などの存在が予想される。

海では、波が台風の可能性を知らせてくれる。低気圧が近づいていないのに、風も吹いていないのに、波だけが高くなっているとき。この場合、遠くの台風によるうねりによって、波が高くなっていると考えられる。

だが、山の場合はどうだろうか。長期縦走なら気になるものだが、台風の接近を知らせてくれるものは山にほとんどない。

そこでひとつのヒントとなるのが雲である。刷毛で書いたような、羽毛状の巻雲が南の空から放射状に広がっているとき。台風の存在、方向、およその距離を示唆してくれる。巻雲は6,000m以上の高い空に現れるので、見通しのよくない山間部でも、苦労せずに目にすることができる。

外側へと吹き出された風の末端が羽毛状になり、台風の可能性を遠くに知らせる。ただ、それはある程度の離れた距離になるので、まだ風などの影響は出ていないことが多い。

そして、台風が存在していると知っているときに限れば、台風の中心までの距離は500㎞以内だと思っていい。500㎞といえば、東京から京都までに等しい。そう聞くとかなり離れているように思えるかもしれないが、じつはこの距離、半日もあれば暴風雨に巻き込まれてもおかしくないのである。

地上の風が台風に吹き込み、それが上昇気流となり、やがて上空の風として台風から吹き出される。しかし、実際には風は複雑に吹いているので、単純な渦巻き構造というわけではない。

また、巻雲の先には台風に限らず、積乱雲があることも多い。山では嵐が早まることもあるので、すみやかな下山を心がけたい。

しかし厄介なのが、巻雲はしょっちゅう現れる雲であるということ。形や大きさもさまざまに変化するものなので、どれが台風や積乱雲の前兆なのか、判断することが難しい。判断するに十二分な知識と経験がなければ、早とちりして途中下山になりかねない。

気温と連動して変化する雨の降り方。

春はもともと春雷の時期。しかし、最近はよりいっそう雷雨が激しくなっているように感じる人もいるだろう。ときには下水が逆流するほどに。

春を予感させる自然の変化はいくつもある。雪解けが進んで、さまざまな花が咲きはじめ、顔をのぞかせる若い緑。気温の上昇に限らず、こうした景観の変化が私たちに春を実感させる。だが、気温の変化に連動するようにして、雨の降り方も変化することを覚えておきたい。

1月から5月にかけて、降水量、降水日数ともに増えていくのが東京だ。反対に、新潟では雨や雪が半減していく。3月以降は東京も新潟も大差がない。つまり太平洋側と日本海側で大きく異なっていた降水分布が揃ってきて、地域差がなくなってくるのだ。

関東では5月ごろになると咲く藤の花。雨が多くなってくる時期ということで、同じころに降る雨は「藤の雨」ともいわれている。

東京の人にとっては雨の到来が春らしくても、新潟の人にとっては雨の減少こそ春ということになる。太平洋側と日本海側で降水量に差がなくなってくるのは、西からやってくる低気圧の雨雲が要因。本州を縦貫する脊梁山脈に西からぶつかることで、どちらも分け隔てなく降るのである。

春の雨はバリエーションが豊富なのも特徴的。長雨というと梅雨が代表的だが、春にも、雨が何日も降り続くことがある。低気圧が東海上に抜けたあとに全線が日本付近に残って、まるで梅雨のような気圧配置になるためだ。

季節が進むと雨量の差がなくなる

冬から春にかけての雨量を示したグラフ。折れ線が月降水量で、棒グラフが1㎜以上の降水日数。1月には大きな差があった東京と新潟が、どんどん接近していくのが読み取れる。

冬から春へ季節の変化を風が告げる。

季節の進行とともにめまぐるしく変化するのが春の自然。低気圧と高気圧が交互に通過するため、花や新緑の香りを風が運ぶ。多彩な風の名前は、かすかな自然の変化を表現するものだ。

「春一番」といえば、立春をすぎてから最初に吹く強い南風。気温の急上昇とともに大荒れの天気をもたらし、直後には反対に強い北風に変化して、気温も急降下してしまう。

同じ早春のころには、季節風である北風や北西風に混じって、ときおり東風が吹く。どちらも要因は低気圧だ。冬の風は西高東低の気圧配置が続き、北西の風が吹き続くのが一般的。

しかし、春になると移動性高気圧と低気圧が次々と日本付近を通過する。低気圧が近づくときには東風が吹き、それが日本海に進むと南風に代わって、ときには春一番のような暴風となる。

低気圧が太平洋側を通ると、冬の風と同じように冷たい北風が吹くが、太平洋側では冬型の気圧配置のときのようなカラカラの空っ風ではなく、雲が広がり、雨や雪を伴うことが多い。温度の変化、雨の降り方の変化だけでなく、風向きの変化でも春の訪れを十分に感じることができるのだ。

低気圧と高気圧が交互に通過する春にはさまざまな風が吹く。古くから日本人は、そんな春の風に多彩で奥ゆかしい名前をつけてきた。花の時期には、さまざまな花の香りを運んで開花を知らせる「花信風」。「花風」や「花散らし」は桜が咲くころ、低気圧の発達とともに。恵みの風である「惠風」、「木の芽風」とともに木々が芽吹いて若葉のころに差しかかると、「薫風」が新緑の香りを運んでくる。

春の風は名前が多彩

春の心地よい香りを伝えるような風から、新緑の香りを運ぶ風へと徐々に変わっていく。暴風や嵐の呼び名も時期によりけり。風ひとつとっても、さまざまな名前がある。

森 朗さん

ウェザーマップ所属の気象予報士。TBSテレビ「ひるおび!」に出演中。著書には『風と波を知る101のコツ』、『海の気象がよくわかる本』ともに小社刊)などがある。

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PEAKS 編集部

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