筆とまなざし#167「5年の歳月を経て成長した、アトリエ小屋のハンノキ」
成瀬洋平
- 2020年02月28日
岐阜に戻ってきて10年目。いつのまにか成長した、アトリエ小屋に生えるハンノキ
アトリエ小屋の入り口には高さ50cmほどのデッキがあり、そのデッキのほぼ真ん中に一本のハンノキが生えています。小屋を建てるときに周りに生えていたハンノキは伐ったのですがいちばん太くて屋根と干渉しない一本だけ伐らずに残しておいたのです。南に向かって少しだけ傾いて生えたハンノキには親しみが湧き、ある人からは「なんだかお前みたいだな」とお褒めの言葉をもらった思い出もあります。そんなハンノキのために、幹の部分を取り囲むようにしてデッキを作ったのでした。
デッキが完成してから5年くらい経つでしょうか?いつごろからか、ハンノキが成長して幹が太くなり、デッキに食い込んでいることに気がつきました。5年でこんなにも太くなるのには驚きです。食い込んでいる部分にはコブができてしまっています。しかし、幹を取り囲むスペースを広げることなく、申し訳ない状態のまましばらく時間が経ってしまっていました。
北風が少し冷たいけれど気持ちよく晴れた今日、絵を描きに小屋に行ったついでに幹の周りのデッキを切ってスペースを広くすることにしました。チェンソーじゃないと切りにくいかなと思っていたのですが、小屋にあった手ノコでも小刻みに使うことで隙間から切ることができました。コブがデッキ材を包み込むようになっていてなかなか取り除くことができない部分もありました。またすぐに大きくなるだろうとスペースを広めにし、無事にハンノキをのびのびと解放してあげることに成功しました。これであと5年以上は大丈夫でしょう。これから成長することでその傷が癒えていってくれることを願います。
それにしても、このハンノキはこれからどのくらい太くなるのでしょう。そしてそのころぼくはどんな暮らしをしているのでしょうか。岐阜に戻ってきて今年で10年。10年ひと昔とはよく言ったもので、この年月のなかでぼくの生活も随分と変化しました。これからの10年も、このハンノキといっしょにときを重ねていくことになりそうです。
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