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「常念小屋」北アルプスの山小屋完全ガイド

登山者にとって快適な山歩きを楽しむための心強い味方、山小屋。館内施設や食事、成り立ちや売店メニューなど、山小屋の膨大な情報を集約しているので、山行計画に役立つこと間違いなし!

北アルプス屈指の歴史を誇る

常念岳の北、1時間弱下った標高2450mの常念乗越に建つ。常念岳への登山はもちろん、蝶ヶ岳や大天井岳への縦走の拠点ともなっている。

常念岳を中心にした常念山脈は、槍・穂高連峰の抜群の展望を誇る。常念小屋からも食堂や展望室など、西側の部屋から槍・穂高ビューが楽しめ、まるで山岳リゾート地にいる気分に浸れる。

小屋の歴史は北アルプス南部稜線の小屋ではもっとも古く、1919年の設立。初代の山田利一氏が建てた。建設当時は槍ヶ岳へのルートとして利用され、安曇野側から一ノ沢を登り、常念乗越から二ノ俣を経て槍ヶ岳へ向かっていた。かつては一ノ俣にも道があり、一ノ俣出合にあったスイスコテージ風の一ノ俣小屋も経営していた。

今日では日本百名山のひとつとして、常念岳を目的に登りに訪れる登山者が多い。北アルプスのなかでも比較的危険箇所が少ないことから人気は高い。

現在のオーナーは三代目に当たる山田健一郎さん。支配人を務める山崎直人さんとともに小屋を守り続けている。

槍への表玄関だった常念小屋

槍・穂高エリアでいちばん古い山小屋は、1918年に創業した槍沢ロッヂ(当時は槍沢小屋という名称)。その次に古いのが常念小屋だ。槍ヶ岳や穂高の小屋より古いことは、いまとなっては意外なことに思えるかもしれない。しかし100年ほど前は、槍・穂高というとまだまだ山奥の秘境で、里に近い常念山脈のほうが人々には親しまれていた。さらに、上高地に交通機関が通じていない時代だから、槍ヶ岳方面に登るには、常念山脈を越えていくのが最短ルートでもあった。常念乗越は槍ヶ岳への表玄関だったのだ。そう考えると、常念小屋が早い時期に開かれた理由も理解できるだろう。

常念小屋の建設後、山田利一氏は一ノ俣小屋も開業。その小屋は焼失してしまったものの、戦後に場所を変えて横尾小屋(現在の横尾山荘)として生まれ変わる。常念小屋は常念岳、横尾山荘は穂高や槍ヶ岳への重要な拠点になっていることを考えると、山田利一氏がこのエリアの登山に残した功績は非常に大きいといえるだろう。

現在の常念小屋は、1962年に建て替えられたもの。その後、時代に合わせて増改築を繰り返しながら現在に至っている。

創設まもないころの常念小屋

1919年に開業した常念小屋。この写真はそのころのもの。古い写真なので不鮮明だが、上端に槍ヶ岳がうっすらと写っている。今の写真と比べてみると、変わったところと変わっていないところがよくわかる。

1940年(昭和15年)の常念小屋

写真左端が常念小屋創業者の山田利一氏。この6年前には、北アルプスが日本最初の山岳国立公園に指定されている。右端は二代目のオーナー山田恒男氏。当時小学1年生だった恒男氏が初めて常念岳に登ったのがこの年だった。

館内施設

槍・穂が見える展望室

2階の北穂・槍展望室「舞姫」。天気が良いと槍・穂高連峰が窓から目の当たりにできるロビー。混雑時は客室となる。

喫茶室「常念坊」

1階にある喫茶コーナー「常念坊」は、宿泊者以外も利用できる外来食堂も兼ねたスペース。生ビールも飲める。

乾燥室

汗や雨で濡れた服を乾かす乾燥室は山小屋には欠かせない。1階の奥にあり、発電エンジンの余熱を利用する省エネ設計。

水はここで

宿泊者は無料で利用できる飲料水の蛇口。水が貴重な場所のため、宿泊者以外は有料となる(200円/1L)。

食事

朝食

メインはニジマスと卵焼き。サイドメニューは、長イモの煮物と漬物2種が添えられる。別に海苔もあり。味噌汁の具はキャベツと油揚げ。

夕食

写真はローストポークだが、ハンバーグとなることが多い。生野菜とポテトのサラダが添えられ、レモンとオレンジがのり、見た目もきれいだ。

お土産・売店

小屋の受付を兼ねている売店では、常念岳などをモチーフにしたタイルアートも販売されている。価格は4,000円(送料込み)と少々値が張るが、山行の記念として家に飾ってみては?

部屋

各部屋とも畳部屋になっている。空いているときは部屋ごとに個室として使えるが、夏のハイシーズンはほかのグループとの相部屋となることがほとんど。おたがいに快適に過ごせるよう、譲り合って使おう。

掛け布団は、ベルグ(ミズノ)のシュラフが使われている。通常の綿のものより軽くて暖かいのが特徴。

洗面所・トイレ

1階にある。個室は全室洋式。水は下の沢からポンプアップしている。

テント場

小屋の東側すぐの場所にある、槍ヶ岳方面の眺めがよいテント場。簡易トイレも設置されている。

DATA
設営数:40張
利用料:1,000円/人(トイレ利用料込み)
水場:200円/L
小屋からの時間:すぐ
地面:ガレた土
トイレ:あり

「常念小屋(じょうねんごや)」の基本情報

設備

テント場:あり
水場:あり
個室:なし
自炊室:あり
乾燥室:あり
お風呂:なし
生ビール:あり

営業期間

4月29日〜11月上旬

電話・電波

ドコモ:良好
au:不安定
ソフトバンク:通話困難な場合が多い
公衆電話:なし

収容人数

200人

標高

2,450m

宿泊料金

1泊2食:9,800円
素泊まり:6,800円

連絡先

090-1430-3328
www.mt-jonen.com

※2018年2月現在の情報です。営業時間や定休日などは変更となる場合がございますので、お出かけ前にご確認ください。

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PROFILE

PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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